空き家,売却,税金
更新日:  

空き家の売却でかかる税金とは?特別控除についても解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 空き家を売却した場合、譲渡所得税、印紙税、登録免許税、固定資産税がかかる
  • 空き家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度を利用できる場合がある

相続や贈与などで不動産を手にしたものの、現在は空き家となり、売却を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、売却に際して「どんな税金がかかるのか?」と疑問を抱えている方も少なくありません。

この記事では、空き家を売却する際に発生する税金の種類と、利用可能な特別控除についてわかりやすく解説します。売却を検討中の方や、税金について不安を感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。

空き家の売却で発生する主な税金は4つ

空き家の売却で発生する主な税金は

空き家を売却した場合、主に次の税金が課されることになります。

  • 譲渡所得税
  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 固定資産税

譲渡所得税は、空き家を売却し、利益(売却益)が出た場合に課される税金です。一方の印紙税は売買契約書作成する際に課税され、登録免許税は所有権移転登記を行う際に課税されます。

また、固定資産税については不動産を所有していれば空き家であっても毎年課税される税金です。仮に不動産を売却したとしても、売主側と日割り精算を行い、固定資産税を納税するケースもあります。

それぞれの税金について、具体的な内容や注意点は後述で詳しく解説していきます。

プロが解説 取引の流れ 費用と税金 不動産売却なら東急リバブル

空き家の売却でかかる譲渡所得税とは

空き家の売却でかかる譲渡所得税とは

空き家を売却して利益が出た場合には譲渡所得税が課されます。

この税金は不動産を売却して得た利益(譲渡所得)をもとに計算されるため、売却金額が高額な場合や、購入時の価格との差額が大きい場合には多額の税金が発生するケースも少なくありません。

譲渡所得は、以下の計算式を用いて算出されます。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)

これをもとに課税額が決まるため、各要素の内容をしっかり把握しておくことで、おおよその税額を求められるでしょう。各要素について、以下で詳しく解説していきます。

取得費とは

取得費とは、売却する不動産を取得する際に生じた費用のことを指します。

具体的には、購入時に支払った土地や建物の代金、不動産会社への仲介手数料などが含まれます。

主な取得費・土地や建物の代金
・建築費用
・リフォーム費用
・不動産会社への仲介手数料
・購入当時の登録免許税や不動産取得税

ただし、建物に関しては、所有期間中に発生する減価償却費相当額を差し引いて計算します。そのため、建物の取得費は所有年数が長くなるほど低くなる仕組みです。

また、不動産取得費が不明な場合には、売却代金の5%を取得費として計算することも認められています。

この計算方法は、購入時の記録が残っていない場合や購入価格が不明な場合に適用されます。

出典:No.3252 取得費となるもの|国税庁
No.3258 取得費が分からないとき|国税庁

譲渡費用とは

譲渡費用とは、不動産を売却する際に直接要した費用のことです。

具体的には、不動産会社に支払う仲介手数料や売買契約書に貼る印紙代、売却のために土地を更地にした際の解体費用などが該当します。

これらは売却活動に直接関連する費用として譲渡費用に含めることが認められています。

一方で、住宅ローンの残債や司法書士への手数料などは、売却に直接結びつかない費用とみなされるため、譲渡費用として計上することはできません。

譲渡費用として認められる費用譲渡費用として認められない費用
・仲介手数料
・売買契約書に貼る印紙代
・建物の解体費用
・住宅ローン残債
・司法書士への手数料
・日常的な修繕費や維持費

出典:No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁

空き家売却にかかる税金の税率は所有期間で異なる

空き家売却にかかる税金の税率は所有期間で異なる

ここまで譲渡所得の求め方について解説してきました。この譲渡所得をもとに譲渡所得税を算出することになりますが、不動産の所有期間によって適用される税率が異なります。

具体的には、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に区分され、税率に大きな差が生じます。

また、相続によって取得した不動産については、親がその不動産を所有していた期間も所有期間として加算される仕組みです。

以下で、それぞれの税率や計算方法について詳しく解説していきます。

長期譲渡所得

売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」として扱われます。
長期譲渡所得の場合、適用される税率は以下のとおりです。

所得税率:15%
復興特別所得税:所得税率 × 2.1%(2037年まで適用されます)
住民税率:5%

これらを合計すると税率は20.315%となります。

例えば、譲渡所得が3,000万円の場合、適用される税額は以下のとおりです。

3,000万円 × 20.315% = 約609万4,500円

出典:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁

短期譲渡所得

一方、売却した年の1月1日時点で、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」が適用されます。短期譲渡所得の場合、適用される税率は以下のとおりです。

所得税率:30%
復興特別所得税:所得税率 × 2.1%(2037年まで適用されます)
住民税率:9%

これらを合計すると、税率は39.63%となります。

前述の長期譲渡所得と同じく、譲渡所得が3,000万円の場合で試算してみます。

3,000万円 × 39.63% = 約1,188万9,000円

このように、所有期間が5年を超えるかどうかで、適用される税率に倍近くの差が生じることがわかります。そのため、どのタイミングで不動産を売却すべきか慎重に判断する必要があるでしょう。

出典:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁

プロが解説 取引の流れ 費用と税金 不動産売却なら東急リバブル

空き家売却で発生する譲渡所得税以外の税金

空き家売却で発生する譲渡所得税以外の税金

ここからは、冒頭で解説した空き家の売却で発生する主な税金4つのうち、譲渡所得税以外の残り3つについて解説します。これらの税金も、売却金額や条件によっては高額な出費となるケースがありますので、事前にきちんと把握しておくことが大切です。

以下では、それぞれの税金の特徴や計算方法について詳しく説明していきます。

印紙税

印紙税とは、不動産売買契約書などの課税文書にかかる税金のことです。

不動産の売買契約書を取り交わす際には、所定の収入印紙を貼る必要があります。この収入印紙を貼ることで納税が完了したとみなされます。

印紙税額は契約金額に応じて決まり、2027年3月31日までは軽減税率が適用されるため、通常よりも負担が軽減されます。

主な印紙額は以下のとおりです。

契約金額が500万円超~1,000万円以下5,000円
契約金額が1,000万円超~5,000万円以下1万円

なお、売買契約書は通常、売主用と買主用の2通作成します。そのため、2通分の印紙税が必要になりますが、売主と買主で1通分ずつ負担するのが一般的です。

出典:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の 印紙税の軽減措置の延長について|国税庁

登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権移転登記や抵当権抹消登記を行う際に納付する税金です。空き家を売却する場合、これらの登記手続きに応じて登録免許税が発生します。

抵当権抹消登記では不動産1つにつき1,000円が課され、所有権移転登記の場合は固定資産税評価額の1,000分の4が基本税率となります。

また、登記作業を司法書士に依頼する場合には、上記に費用に加えて1~2万円程度の報酬が必要となります。

ただし、所有権移転登記にかかる登録免許税は通常、買い手が負担することが一般的であるため、売り手が負担するケースはほとんどありません。

出典:No.7190 登録免許税のあらまし|国税庁

固定資産税

固定資産税とは、所有している不動産に課される税金のことです。

売却した年の1月1日時点で不動産を所有していた人に課される仕組みになっているため、売却後であっても、その年分の固定資産税を支払う義務が生じます。

年度途中で不動産を売却した場合、固定資産税は売り手と買い手で引渡し時に按分して清算することが一般的です。

出典:固定資産税|総務省

空き家売却の税金は特別控除で安くなるケースがある

空き家売却の税金は特別控除で安くなるケース

空き家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度が設けられています。この特例を活用することで、税負担の大幅な軽減が期待できるでしょう。

以下で、本特例の概要や必要な手続きについて詳しく解説していきます。

空き家に係る譲渡所得の特別控除とは

「空き家に係る譲渡所得の特別控除」とは、空き家を売却する際に一定の条件を満たすことで、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度です。

この特例を利用することで、売却代金が3,000万円以下の場合には譲渡所得税がかかりません。

対象となるのは、被相続人が住居として使用していた家屋を相続し、2016年4月1日から2027年12月31日までに売却したケースです。

ただし、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 建物が1981年5月31日以前に建てられた戸建て住宅であること
  • 相続直前まで被相続人が1人暮らしをしていたこと
  • 相続開始日から3年が経過した年の12月31日までに譲渡すること
  • 相続から売却までの間に、その家屋を賃貸に出したり事業用として利用したりしていないこと
  • 引渡しから引渡した日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たす改修を行うか取壊して更地にすること

例えば「相続した自宅を事務所として使おうと改装し、しばらく利用した後に売却した」というケースでは、特別控除の対象外となります。

「空き家に係る譲渡所得の特別控除」は、節税効果が非常に高い制度である一方、適用条件が細かく設定されているため、制度の詳細を正確に理解しておく必要があるでしょう。

出典:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

特別控除の適用のために必要な手続き

3,000万円の特別控除を受けるためには、以下の順で手続きを進めていきます。

1.管轄の市区町村に「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請する
2.「被相続人居住用家屋等確認書」が交付される
3.交付された「被相続人居住用家屋等確認書」とその他の必要書類を添えて確定申告を行う

確定申告は、空き家を売却した翌年の2月16日~3月15日の期間内に行う必要があります。

必要書類は以下の表にまとめています。

譲渡所得の内訳書売却益を計算するための情報を記載する書類
登記事項証明書不動産の権利関係や所在地を証明する書類
被相続人居住用家屋等確認書市区町村で交付を受ける、特例適用のための証明書
耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し建物が耐震基準を満たしていることを証明する書類(建物を取り壊す場合は不要)
売買契約書の写し売却先や、売却金が1億円以下であることを確認する書類

空き家になった実家などを売却する場合の税金控除の特例

空き家になった実家などを売却する場合の税金控除の特例

以前住んでいた空き家や、親を高齢者施設に引き取ったことで空き家になった実家を売却する場合には、税負担を軽減できる以下のような特例が設けられています。

  • マイホーム特例
  • 所有期間10年超の軽減税率の特例

それぞれの特例について順に解説していきます。

マイホーム特例

自宅を売却する場合、マイホーム特例が適用される可能性があります。正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。

この特例を利用すると、長期・短期にかかわらず、譲渡所得から最大3,000万円を控除することが可能です。

以下で、この特例を適用するための条件をみていきます。

  • 売却する資産が現在も住んでいる家屋、または以前住んでいた家屋であること
  • 住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 家屋を取り壊した場合、取り壊した日から1年以内に譲渡契約を締結し、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。
  • 取り壊し後、その敷地を貸駐車場やその他の用途に使用していないこと
  • 売却する相手が親子や夫婦など「特別な関係がある人」ではないこと
  • 売却の前年または前々年に、同様の特例やマイホームに関する他の特例を受けていないこと

他にも細かな適用要件が設けられているため、詳しく確認したい方は国税庁ホームページの「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を確認ください。

所有期間10年超の軽減税率の特例

自宅を売却する際、所有期間が10年を超える場合は「長期譲渡所得の軽減税率の特例」が適用される可能性があります。

この特例を利用すると、通常よりもさらに税率を下げることが可能です。

この特例は、譲渡所得が6,000万円以下の場合「所得税率10% + 復興特別所得税0.21% + 住民税率4% = 合計14.21%」と、前述で解説した長期譲渡所得税率(20.315%)よりもさらに低い税率が適用されます。

主な適用条件は以下のとおりです。

  • 売却する資産が現在も住んでいる家屋、または以前住んでいた家屋で、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却した年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えていること
  • 売却するマイホームが国内にあること
  • 売却した年の前年または前々年に、この特例を受けていないこと
  • 売却相手が親子や夫婦など、特別な関係者ではないこと
  • 居住用財産の3,000万円特別控除を除く、指定された特例を受けていないこと

出典:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁

プロが解説 取引の流れ 費用と税金 不動産売却なら東急リバブル

この記事のポイント

空き家売却の税金を安くすることはできる?

空き家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」という制度が設けられています。

要件を満たす場合、この特例を活用することで、税負担の大幅な軽減が期待できるでしょう。

詳しくは「空き家売却の税金は特別控除で安くなるケースがある」をご覧ください。

空き家になった実家などを売却する場合の税金控除の特例はある?

以前住んでいた空き家や、親を高齢者施設に引き取ったことで空き家になった実家を売却する場合には、税負担を軽減できる以下のような特例が設けられています。

  • マイホーム特例
  • 所有期間10年超の軽減税率の特例

詳しくは「空き家になった実家などを売却する場合の税金控除の特例」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

空き家を売却した場合、主に以下の税金が課されます。

  1. 譲渡所得税
  2. 印紙税
  3. 登録免許税
  4. 固定資産税

譲渡所得税については、売却した年の1月1日時点での所有期間が5年超えや10年超えの場合、税率の優遇措置が適用されることがあります。また、一定の要件を満たすことで「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」などの特別控除もあるため、該当する方は忘れずに手続きを進めましょう。
ただし、これらの特例は要件が細かく、理解が難しい部分も多いため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
・「空き家の売却」に関する記事はこちら
空き家の売却について解説!解体して更地にする、そのまま売る以外の方法も紹介

税金が心配? 無料税務・法律相談会

不動産に関する税務、不動産取引上の法律問題などについて詳しくお答えいたします。

無料税務・法律相談会