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マーケットレポート2025, 11
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過去の駆け込み需要との違いとは?貸家着工戸数を読み解く
国土交通省の発表によると、2025年8月の住宅着工戸数は6万275戸(前年同月比▲9.8%)で、5か月連続のマイナスとなりました。
利用関係別住宅着工戸数の推移
利用関係別(持ち家・貸家・分譲など)では、2025年4月以降、すべての区分で5か月連続の前年同月比マイナス。国交省は、省エネ基準適合の義務化前の「駆け込み着工」による増加の反動減が長引いているとしています。省エネ基準適合の義務化は、原則すべての建築物に省エネ基準への適合を求めるもので、コスト増・手続き負担の増加・工期の長期化などが生じるため、駆け込み需要が発生したとみられます。貸家については、3月に前年同月比+50.6%と急増していました。
利用関係別住宅着工戸数の推移(2025年1月〜)
貸家着工戸数の月別推移
過去にも同様の駆け込み需要は見られました。次に、不動産投資と関係の深い「貸家」の着工戸数の推移を確認します。こちらのグラフは、貸家着工戸数の月次データを「戸数」「前年同月比」「12か月移動平均(トレンド)」で示したものです。過去の駆け込み需要としては、2014年4月の消費税8%引き上げ時が想起されます。2013年10月までの請負契約は税率5%だったため、2013年に大きな駆け込みが発生しました。加えて、2012年ごろから貸家着工は上昇トレンドにあったため、駆け込みの規模が一段と大きく表れました。その後は前年同月比のマイナスがしばらく続きましたが、2015年3月にプラスへ転じています。次に、2019年10月の税率10%への引き上げ時を見ると、この局面では金融機関の融資引き締め等により貸家着工が下落基調だったこと、また8%決定段階で10%も既定路線(時期は後ろ倒し)となっていたことが相まって、大規模な駆け込みは生じませんでした。
こうした過去の動きと比べれば、今回の「省エネ基準適合の義務化」前の駆け込みは極めて大きかったと言えます。貸家着工戸数はここ数年おおむね横ばいのトレンドを維持しており、不動産投資市場も依然として活況です。長期金利動向などを踏まえると、反動減も早晩落ち着く公算が大きいでしょう。
貸家着工戸数の月別推移
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