ざっくり要約!
- 住宅ローンを借りている本人が単身赴任をし、生計を一にする親族が残ってそのまま家に住む場合は、住宅ローン控除をそのまま適用可能
- 通常、住宅ローンの返済期間中は原則として家を賃貸に出すことはできないが、転勤等のやむを得ない事情があれば可能
海外赴任が決まると、家族全員で転居するか、または単身赴任をするかの選択を迫られます。
家族全員の転居と単身赴任とでは、転勤期間中の住宅ローン控除の扱いが異なります。
また、家族全員で転居した場合、賃貸に出すか、空き家のままとするかでも住宅ローン控除の再開できる時期に違いが生じます。
海外赴任をする場合には、赴任期間中の住宅ローン控除の取り扱いを知っておくことが望ましいです。
この記事では、「海外赴任時の住宅ローン」について解説します。
記事サマリー
海外赴任でも住宅ローン控除は受けられる?満たすべき条件とは

この章では、海外赴任期間中の住宅ローン控除の取り扱いについて解説します。
単身赴任である
住宅ローンを借りている本人が単身赴任をし、生計を一にする親族が残ってそのまま家に住む場合は、住宅ローン控除をそのまま適用できます。
次節で紹介する家族全員での転居とは異なり、住宅ローン控除期間が失効することなくそのまま継続していきます。
| ・「単身赴任時の住民票」に関する記事はこちら 単身赴任時の住民票は移す?メリット・デメリットや移さない場合の影響を解説 |
家族全員で転居する
家族全員で転居する場合、転勤期間中は住宅ローン控除を受けられなくなります。
例えば、住宅ローン控除の期間が10年の場合、適用から3年を経過した後に2年間、家族全員で転居すると、4年目と5年目の住宅ローン控除は受けられないということです。
6年目に再び住んだ場合は、住宅ローン控除は原則として6年目から再開します。
ただし再開時期は、転勤期間中に「空き家にした場合」と「賃貸に出した場合」で異なる点が注意点です。
空き家にした場合は原則通り、再び住んだ年から住宅ローン控除を再開することができます。
一方で、賃貸に出した場合は、例外として再び住んだ年の「翌年」から住宅ローン控除が再開されます。
住宅ローン控除の適用から3年経過した後に、2年間は賃貸に出して6年目に再入居した場合、再開できるのは7年目からということです。
なお、住宅ローン控除が再適用できるといっても、最終年の期間が延びるわけではありません。
10年間のうち、2年間を家族全員で転居したら、単純に住宅ローン控除が適用できる期間が2年間分、失効するのみです。
そのため、賃貸に出すと住宅ローン控除を1年分、損をすることになります。
なお、家族全員の転居ルールは2003年(平成15年)改正で創設されたため、家族全員の転居は2003年4月1日以降のものが対象です。
海外赴任後に住宅ローン控除の再適用を受ける手続き

この章では、海外赴任後に住宅ローン控除の再適用を受ける場合に必要な手続きについて解説します。
| ・「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」に関する記事はこちら 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)で税金はいくら戻る?要件や手続き方法を解説 |
原則的な手続き
海外赴任か否かに関わらず、住宅ローン控除を受けるには、初年度は確定申告が必要です。
日本でそのまま生活する人の場合、サラリーマンであれば2年目以降は会社が行う源泉徴収だけで足り、確定申告は不要となります。
海外赴任時に必要な手続きと書類
海外赴任等により家族全員で帯同して転居する場合には、出国前と帰国後に所定の手続きを行うことが必要です。
出国前
出国前は、「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」という書類を所轄の税務署に提出することが必要となります。
帰国後
帰国後は、再入居時に「住民票の写し、年末残高証明書、再入居用の計算明細書」を添付して確定申告を行うことが必要です。
出典:A1-42 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出手続|国税庁
再び居住の用に供した場合の (特定増改築等)住宅借入金等特別控除の手続をされる方へ|国税庁
家族が帯同する場合の海外赴任中の住宅の取り扱い

海外赴任に家族が帯同する場合、自宅の取り扱い方法としては「賃貸に出す」と「売却する」、「空き家で維持」の3つが考えられます。
この章では、それぞれの方法について解説します。
賃貸に出す
家族帯同で転勤する場合、転勤期間中だけ賃貸に出すことも考えられます。
通常、住宅ローンの返済期間中は原則として家を賃貸に出すことはできませんが、転勤等のやむを得ない事情があれば可能です。
賃貸に出す場合は、事前に銀行に届出を出します。
住宅ローンは資金使途がマイホームの購入であるため、返済期間中に賃貸に出すとあたかも収益物件の購入に資金を使ったものとみなされ、契約違反に問われる懸念があります。
転勤という理由であれば、銀行も賃貸に出すことを通常は認めてくれることから、契約違反に問われないようにするためにも、事前に銀行に届出することが適切です。
賃貸に出すメリットは、毎月家賃収入が得られ、家の管理も自然と行われるという点です。
家は定期的な換気や通水(台所等の水回りで水を流すこと)を行わないと、カビが生えたり汚臭が充満したりします。
誰かが住めば換気や通水は自然と行われるため、家の価値も維持することができるのです。
賃貸に出すデメリットは、家を借主に汚される、住宅ローン控除の再開期間が1年遅れるといった点が挙げられます。
また、せっかく購入した新築物件の場合には、家を汚される可能性があるため、賃貸に出すことに抵抗を感じる人も多いです。
| ・「マンションを賃貸に出す方法」に関する記事はこちら マンションを賃貸に出す方法は?利益や費用、ローンの注意点も解説 |
注意点
1つめの注意点は、賃貸に出すと住宅ローン控除の再開期間が1年間遅れるという点です。
賃貸に出した場合、住宅ローンの控除期間は再入居の翌年から適用されることになります。
2つめの注意点は、定期借家契約を利用するという点です。
定期借家契約は更新のない契約であり、契約満了時に確定的に賃貸借契約を終了させることができます。
アパート等の通常の賃貸借物件は、普通借家契約が用いられています。
普通借家契約とは更新のある契約のことですが、借主の権利が強く、貸主側から契約解除をするにあたり、正当事由や立ち退き料が必要となります。
正当事由とは借主を退去させるための正当な理由で、立ち退き料とは正当事由を補完するための貸主が借主に対して支払う金銭のことです。
転勤から戻ってきたという理由は正当事由には該当しないため、普通借家契約を利用すると赴任先から戻ってきて家を帰してもらいたいときに立ち退き料が必要となります。
定期借家契約であれば、正当事由や立ち退き料は発生しません。
ただし、定期借家契約は、契約期間中は解除できない、住宅は家賃が安くなる等のデメリットが存在する点が注意点となります。
なお、借主の一時使用が明確な場合には、一時使用賃貸借契約と呼ばれる賃貸借契約を選択できる場合があります。
一時使用賃貸が認められるケースとは、借主が宅建物の新築・増改築の際の仮住まいや避暑等での別荘の賃借、選挙事務所、展示会場等のために借りる場合です。
一時使用賃貸借契約であれば、借地借家法が適用されないため、契約期間中の解約を柔軟に申し入れることができます。
そのため、偶然にもたまたま一時使用目的の借主が見つかった場合には、一時使用賃貸借という契約方式を選択することも可能性としては考えられます。
売却する
家族帯同で転勤する場合、売却という選択肢もあります。
売却のメリットは、売却額がローン残債を上回れば住宅ローンを一気に完済でき、住宅の維持費からも解放されるという点です。
また、住宅ローン控除は何回も利用できるため、日本に戻ってきたときに新たな物件を購入すれば再び1年目から住宅ローン控除を適用できます。
デメリットは、帰国後に再び家を買わなければいけない点や、一定の要件を満たすと売却の翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行わなければならないという点です。
確定申告時のタイミングで日本にいないときは、納税管理人の届出を出しておく必要があります。
納税管理人とは、日本にいない人のために確定申告書の提出や税務署等からの書類の受け取り、税金の納付や還付金の受け取り等を代行する人のことです。
| ・「住宅ローンを一括返済できない家の売却」に関する記事はこちら 住宅ローンを一括返済できない家を売却するにはどうすればいい? 対処法と注意点を解説 |
注意点
日本を出国した後に売却する場合は、売買契約時や引渡時に原則として所有者本人が立ち会うことが必要です。
売買契約時や引渡時に日本に戻って来られない場合には、代理人を立てる必要があります。
代理人は、親や兄弟といった信頼できる人に頼む必要があります。
売却を不動産会社に依頼する場合には、不動産会社による本人確認も必要となることから、売却の依頼は本人が日本にいるときに不動産会社に依頼することが適切です。
| ・「譲渡所得の確定申告」に関する記事はこちら 譲渡所得の確定申告はいくらからするべき? 計算方法も詳しく解説 |
空き家で維持
家族帯同で転勤する場合、空き家で維持することも考えられます。
空き家で維持するメリットは、家を汚されることがない、家財道具をそのままにできるといった点です。
また、住宅ローン控除は、再入居の年から適用できるため、賃貸に出すよりも1年分、有利です。
デメリットは、維持費がかかる、管理が必要になるといった点が挙げられます。
注意点
空き家とする場合は、建物の価値を維持するために、定期的な換気と通水をすることが必要です。
親や兄弟、親戚等で管理を頼める人がいれば月に1~2度のペースで管理をしてもらうのが望ましいといえます。
通常、インフラは止めているため、通水するためにはペットボトルで水を持ち込み、ペットボトルの水を流すことが必要です。
また、管理を頼める人がいない場合には、有料となりますが空き家管理サービスを行っている不動産会社に依頼することになります。
まとめ
以上、海外赴任時の住宅ローンについて解説してきました。
住宅ローン控除は、単身赴任であればそのまま継続することができます。
一方で、家族が全員転居した場合は、転居期間中の住宅ローン控除は失効します。
転勤期間中に賃貸に出した場合、住宅ローン控除は再入居の翌年から適用となる点が注意点です。
海外赴任中の自宅の取り扱いとしては、「賃貸に出す」や「売却する」、「空き家で維持」がありました。
住宅ローン控除の取り扱いだけでなく、その他の条件も含めて適切な方法を選択して頂ければと思います。
この記事のポイント
- 海外赴任でも住宅ローン控除は受けられる?
住宅ローンを借りている本人が単身赴任をし、生計を一にする親族が残ってそのまま家に住む場合は、住宅ローン控除をそのまま適用できます。
一方で、家族全員で転居する場合、転勤期間中は住宅ローン控除を受けられなくなります。
詳しくは「海外赴任でも住宅ローン控除は受けられる?満たすべき条件とは」をご覧ください。
- 家族が帯同する場合の海外赴任中の住宅の取り扱いは?
海外赴任に家族が帯同する場合、自宅の取り扱い方法としては「賃貸に出す」と「売却する」、「空き家で維持」の3つが考えられます。
詳しくは「家族が帯同する場合の海外赴任中の住宅の取り扱い」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
海外赴任中の自宅の取り扱いをどうするかは、住宅ローン控除だけでは決められないと思います。自宅の取り扱いは、赴任先や赴任期間の長さ、家族の人数、子どもの年齢、物件の築年数等を総合的に勘案して決める問題です。
近年は日本の住宅価格が高騰しているため、売却すれば高く売れますが、逆に戻ってきたときに高くて買いにくい環境になってきました。一方で、ファミリー向けの物件は以前よりも賃貸需要が強くなっており、貸しやすくなっています。自宅の取り扱いは、市場動向も捉えたうえで適切な選択をして頂ければ思います。

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