既存不適格
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既存不適格建築物とは?違反建築物との違いや購入時の注意点を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • 既存不適格建築物とは、建築当初の法律や基準には合致していたものの、現行の法律や基準には適合しなくなった中古建物のこと
  • 既存不適格建築物の最も多い原因は竣工後の法改正

不動産の購入を検討している際に「既存不適格建築物」という言葉を見たことがある人もいらっしゃるかもしれません。

既存不適格建築物とは、建築当時の法律には合致していたものの、その後の法改正により現行の基準を満たさなくなった建物のことです。

不適格というネガティブな言葉が含まれていますが、違法建築物ではありません。
既存不適格建築物とは、どのような建物なのでしょうか。
この記事では、「既存不適格建築物」について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

既存不適格建築物とは?

既存不適格建築物とは

既存不適格建築物とは、建築当初の法律や基準には合致していたものの、現行の法律や基準には適合しなくなった中古建物のことです。

最初に既存不適格建築物の概要について解説します。

現行の法律に適合しない建物

建物の寿命は数十年以上に渡るため、新築当初から建築基準法や消防法、都市計画法、条例等の規制が改正されることは珍しくありません。

例えば、日本では大きな地震が起きた際に建築基準法が改正され、建物の耐震基準が強化されるといったことがあります。

耐震基準が強化される前に建てられていた建物は、新築当時の基準には適合していたものの、改正後の基準には適合しなくなります。

例えば旧耐震基準と呼ばれる建物は、既存不適格建築物の一つの例です。

建物は、新築する際、着工前に建築確認というプロセスを踏みます。
建築確認とは、これから着工する建物が合法的であるかどうかを図面にてチェックする行為のことです。

建築確認が通れば、合法的な建物であることが認められ、着工することができます。

着工した建物は、竣工時に建築確認の図面通りに建てられたかの検査を受けます。
この検査に合格すれば、検査済証と呼ばれる書面が発行され、合法的な建物であることが証明されるという流れです。

既存不適格建築物であっても、建築当時は建築確認や検査のプロセスを踏んでいます。

そのため、建築当時の法律や基準に対しては適合して建てられた合法的な建物なのです。

違反建築物との違い

既存不適格建築物とよく誤解される建物に、違反建築物(違法建築物)があります。
違反建築物または違法建築物とは、その名の通り、違法の建築物です。

違反建築物には、建築当初から違法である建物と、建築当初は合法であったものの竣工後に違法になった建物の2種類があります。

建築当初から違法な建物は、建築確認や検査の手続きを無視して違法に建てられた建物です。
合法性の確認のチェックを経ずに建てたことから、根本的に既存不適格建築物とは異なります。

竣工後に違法になった建物は、建築確認や検査の手続きを合法的に経て、後から増改築して違法になった建物です。
よくあるケースとしては、竣工後にベランダにサンルームを増築して床面積が規制よりもオーバーしたような建物が挙げられます。

違反建築物は、竣工前の手続き違反や竣工後の増改築を行うといった何らかの意思が所有者にある点が特徴です。

それに対して既存不適格建築物は、所有者に特段の意思がなく、法改正によって自然と基準に適合しなくなった点が違反建築物との相違となります。

既存不適格建築物となる主な原因

既存不適格建築物となる主な原因

既存不適格建築物となる原因はいくつか存在します。
この章では、既存不適格建築物となる主な原因について解説します。

法改正が行われる

既存不適格建築物の最も多い原因は、竣工後の法改正です。

法律そのものが改正されたり、基準が強化されたりすることで既存不適格建築物となってしまいます。

一般的に有名な既存不適格建築物は、旧耐震基準の建物です。
建築基準法の耐震設計法は、1981年(昭和56年)6月1日を境に大きく変わりました。

1981年5月31日以前に建築確認申請を通過した建物は「旧耐震基準」、1981年6月1日以降に建築確認申請を通過した建物は「新耐震基準」と呼ばれています。

旧耐震基準の建物は、1981年5月31日以前は法律上の耐震基準を満たしていたため、合法的な建物です。

しかしながら、原則として現行の耐震基準(新耐震基準)を満たしていないため、既存不適格建築物に該当することになります。

その他として、消防法や建築物省エネ法、条例等の規制が変わることで既存不適格建築物となることもあります。

敷地の一部を収用される

敷地の一部を道路や公園等の公共用地として収用されることで、既存不適格建築物となることもあります。

具体的には、後から敷地が減ることで建ぺい率や容積率がオーバーすることがあります。

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことです。
建築面積とは、端的にいうと建物を上から見たときの面積のことを指します。

容積率とは、敷地面積に対する延床面積の割合のことです。
延床面積とは、各階の床面積を合計した面積のことを指します。

例えば、100平米の土地に200%の容積率が指定されていると、延床面積が200平米までの建物を合法的に建てることが可能です。

ここで新築当時に200平米の建物を建てた後、道路の拡幅のために土地の一部である20平米が道路用地として収用されたとします。
収用後も建物はそのまま残ることから、収用後は80平米(=100平米-20平米)の土地に200平米の建物が建っていることになります。

敷地に指定されている容積率は200%であるため、本来であれば延床面積が160平米(=80平米×200%)の建物しか建てることができません。

しかしながら、実際には80平米の土地に延床面積が200平米の建物が建っており、この建物は既存不適格建築物に該当します。

同様に建ぺい率も土地の面積に対して限度が決まるため、竣工後に土地が収用されることで建ぺい率に関しても既存不適格建築物となる場合があります。

法が存在する前から建っている

法改正等ではなく、そもそも法が存在する前から建っている建物も、現行の基準に合わなければ既存不適格建築物となります。

代表的なものが、建築基準法が施行される前から建っている建物です。
建築基準法は1950年(昭和25年)に施行された法律であることから、それ以前に建っていた建物は既存不適格建築物となっていることがあります。

例えば、古い建物で無道路地に建っている建物は、既存不適格建築物です。
建築基準法では、建物を建てるには原則として幅員が4m以上の道路に間口が2m以上接していることが必要(接道義務)となります。

しかしながら、接道義務は建築基準法の規定であることから、法律が存在する前は接道義務を満たしていなくても建物を建てることができました。

なお、現在では1950年は2025年時点からすると75年も前であるため、建築基準法が施行される前の既存不適不適格建築物は少なくなってきています。

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既存不適格建築物の購入時の注意点

既存不適格建築物の購入時の注意点

既存不適格建築物は違法建築物ではありませんが、購入するならいくつか注意すべき点があります。

ここでは、既存不適格建築物の購入時の主な注意点を紹介します。

担保評価が低く融資を受けづらい

現行基準との不適合の内容が深刻な場合、銀行から融資を受けにくいケースがあります。

例えば、無道路地に建っている再建築不可物件等は深刻な既存不適格であり、融資が難しくなることも多いです。

購入後の増築や建て替えが難しい

既存不適格建築物は現行の基準に合っていないことから、全く同じ建物を再建築することはできません。

また、容積率がオーバーしていれば、増築も難しいといえます。

売却が難しい

現行基準との不適合の内容が深刻な場合、将来、売却が難しくなります。
売却が困難となる典型的な既存不適格建築物は、無道路地に建っている再建築不可物件です。

また、既存不適格建築物は主に法改正によって生じるため、必然的に築年数の古い物件が多いです。

現行基準との不適合という以前に、築古物件であることから売却が難しい物件は多いといえます。

購入を検討しても良い既存不適格建築物の条件

購入を検討しても良い既存不適格建築物の条件

一部の既存不適格建築物は、購入を検討しても良いケースがあります。
この章では、購入を検討しても良い既存不適格建築物の条件について解説します。

不適合の内容が軽微である

建築基準法は頻繁に改正される法律であるため、軽微な内容の既存不適格建築物は多く存在します。

例えば、階段に手すりがない住宅等は、軽微な既存不適格建築物の一つといえます。

多くの人が許容できる軽微な内容の既存不適格建築物であれば、購入しても大きな問題はありません。

現状のままで長期運用できる

最近の法改正で既存不適格建築物になったばかりであり、築年数が浅く、現状のままで長期運用できる物件は、購入しても良いといえます。

法改正の直後は多くの中古物件が既存不適格建築物となるため、市場に与える影響は少ないです。

立地が良い

現行基準からの不適合の内容よりも、立地の魅力が大きく上回る場合には、購入しても良いといえます。

立地が良ければ、将来、新たな基準で建てた建物も優良物件になる可能性が高いです。

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まとめ

以上、既存不適格建築物について解説してきました。
既存不適格建築物は、建築当時は合法であったものの、法改正や土地収用等により現行基準に合致しなくなった建物のことです。

既存不適格建築物は、現行の規制を満たしていないため、同じ建物に建て替えることはできません。
現行基準との不適合の内容によっては、売却しにくかったり融資を受けにくかったりするリスクがあります。
購入にあたってはリスクとメリットを慎重に見極めたうえで、物件を選ぶことが適切です。

この記事のポイント

既存不適格建築物とは何か?

既存不適格建築物とは、建築当初の法律や基準には合致していたものの、現行の法律や基準には適合しなくなった中古建物のことです。

詳しくは「既存不適格建築物とは?」をご覧ください。

既存不適格建築物の具体的な例は?

古い建物で無道路地に建っている建物は、既存不適格建築物です。

建築基準法では、建物を建てるには原則として幅員が4m以上の道路に間口が2m以上接していることが必要(接道義務)となります。

詳しくは「既存不適格建築物となる主な原因」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

既存不適格建築物といっても、現行の基準との不適合の内容は千差万別です。例えば2025年4月から全ての新築建物は省エネ基準に適合させることが義務化されました。それ以前に建てられた多くの建物は省エネ基準に適合していないため、既存不適格建築物となってしまいます。
しかしながら、省エネ基準に適合していない中古住宅が、すぐさま融資や売買で不利になるわけではありません。既存不適格建築物であっても、影響は不適合の内容によって全く異なります。既存不適格建築物は、不適合の中身が重要となるのです。

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