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住宅ローンの連帯債務と連帯保証はどう違う?ペアローンとの違いも解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 連帯債務とは1つの住宅ローンに対して複数の方が全額の返済義務を負う仕組み
  • 連帯債務では主債務者と連帯債務者の収入を合算して住宅ローン審査を受けられる

住宅ローンを検討していると「連帯債務」という言葉を耳にすることがあります。特に夫婦で住宅ローンを組む際に利用されることが多い仕組みですが、「連帯保証」や「ペアローン」と混同してしまう方も少なくありません。

それぞれ仕組みが異なり、返済の責任や契約内容に違いがあるため、正しく理解しておくことが重要です。

この記事では、連帯債務の仕組みやメリット・デメリットを解説し、連帯保証やペアローンとの違いについても詳しく説明します。住宅ローンを検討している方に役立つ内容になっているので、ぜひ最後まで御覧ください。

住宅ローンにおける連帯債務とは

住宅ローンにおける連帯債務とは

まずは連帯債務の概要や、利用できる条件などについて解説していきます。

連帯債務の仕組み

連帯債務とは、1つの住宅ローンに対して複数の方が全額の返済義務を負う仕組みです。

住宅ローンにおいては、夫婦や親子が収入を合算し、どちらかが主債務者、もう一方が連帯債務者として契約するのが一般的です。

収入を合算することで、単独では希望額の融資を受けにくい場合でも、ローンを組むことが可能です。

住宅の所有権は共有名義となり、出資した割合がそれぞれの持分となります。

なお、収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2種類があり、その違いについては後述で詳しくみていきます。

連帯債務者になれるのは夫婦や親子など

連帯債務者になれる方は、金融機関ごとに条件が異なります。

例えば、住宅金融支援機構の【フラット35】を利用する場合は、以下の条件を満たす必要があります。

【フラット35の連帯債務者の条件】

  • 申込者の親・子・配偶者など
  • 70歳未満であること
  • 同居すること
  • 連帯債務を負うこと

【収入合算できる金額】
収入合算者の年収全額まで収入合算が可能。
ただし、合算額が収入合算者の年収の50%を超える場合、返済期間が短くなることがある。

【収入合算した場合の返済期間】
最長返済期間
=80歳−(以下のうち、年齢が高い方の申込時年齢 ※1歳未満切り上げ)

  • 申込者本人
  • 収入合算者(※収入合算額が年収の50%を超える場合)

例えば、申込者が35歳3ヵ月で年収400万円、収入合算者が52歳4ヵ月で年収700万円とします。

仮に収入合算者の年収全額を合算すると、全体収入に占める割合が50%を超えるため、このケースでは収入合算者の年齢を基準に返済期間を求めることになります。

この場合、返済期間の計算は以下の通りです。

80歳−53歳=27年

そのため、最長で27年間の返済が可能です。


出典:収入合算|【フラット35】

連帯債務で住宅ローンを契約するメリット

連帯債務で住宅ローンを契約するメリット

連帯債務で住宅ローンを契約する場合の主なメリットは次のとおりです。

  • 借入時に収入を合算できる
  • 住宅ローン控除がそれぞれ適用できる

以下で詳しくみていきましょう。

借入時に収入を合算できる

連帯債務では、主債務者と連帯債務者の収入を合算して住宅ローン審査を受けられます。

そのため、片方の収入だけでは希望する融資額に届かない場合でも、もう一方の収入を加えることで審査に通りやすくなるでしょう。

例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が200万円で、住宅ローンの融資限度額を年収の5倍までとした場合、夫が単独で申し込む場合の融資可能額は以下の通りです。

夫単独の場合:500万円×5=2,500万円

しかし、夫婦で収入を合算すると、年収700万円とみなされるため、700万円×5=3,500万円まで借入が可能になります。

住宅ローン控除がそれぞれ適用できる

主債務者と連帯債務者の双方で住宅ローン控除を適用できるのもメリットの1つです。

「住宅ローン控除」とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した際に、毎年のローン残高の一定割合を所得税・住民税から控除できる制度です。

控除額が大きいため、税負担の大幅な軽減が期待できます。

また、単独で住宅ローンを組むよりも、連帯債務で借り入れることで、それぞれの所得に控除を適用できるため、節税効果がさらに高まるでしょう。

適用される控除額は、主債務者・連帯債務者それぞれの持分割合に応じて決まります。

例えば、5,000万円の住宅ローンを組み、主債務者と連帯債務者がそれぞれ50%の持分を持つ場合、1人あたり2,500万円をもとに控除額が計算されます。

ただし、住宅ローン控除を適用するには、住宅の要件や所得制限など一定の条件を満たす必要があります。

連帯債務で住宅ローンを組むデメリット

連帯債務で住宅ローンを組むデメリット

一方で、連帯債務で住宅ローンを組む場合には以下のようなデメリットが存在します。

  • 離婚しても債務はなくならない
  • 団信に加入できるのが主債務者だけのケースがある

それぞれ順に解説していきます。

離婚しても債務はなくならない

夫婦が連帯債務で住宅ローンを組んだ後に離婚しても、返済義務はなくなりません。

片方が家を出たとしても、契約上は引き続きローンを支払う必要があります。

これは、連帯債務で購入した不動産が夫婦の共有名義であり、離婚しても自動的に連帯債務が解除されるわけではないためです。そのため、ローンの支払い義務は残り続けます。

連帯債務を解消するには、主に以下のいずれかの方法を取る必要があるでしょう。

  • 物件を売却する
  • ローンを借り換える

ただし、夫婦の収入を合算してギリギリで住宅ローンを組んでいた場合、単独では収入基準を満たしにくくなり、借り換えが難しくなる可能性があります。

団信に加入できるのが主債務者だけのケースがある

連帯債務で住宅ローンを組んだ場合、団体信用生命保険(団信)に加入できるのは、主債務者のみとなり、多くのケースで連帯債務者は加入できません。

団信とは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害になった際に、保険金でローン残高を完済できる仕組みです。これにより、残された家族に住宅ローンの返済負担がかからないようになっています。

しかし、連帯債務者が団信に加入できない場合、その方に万が一のことが起こっても住宅ローンは残り、主債務者が引き続き全額を支払わなければなりません。

そのため、連帯債務者が団信に加入できない場合は、代わりに生命保険などを活用し、万が一に備える必要があるでしょう。

連帯債務で住宅ローンを組む場合は持分割合の理解が必要

連帯債務で住宅ローンを組む場合は持分割合の理解が必要

連帯債務で住宅ローンを組む際は、持分割合について正しく理解しておくことが重要です。

持分割合とは、物件に対してそれぞれが持つ所有権割合のことです。
持分割合と住宅ローンの返済額は、双方の収入割合に応じて決める必要があります。

例えば、息子の年収が300万円、父親の年収が700万円の場合、持分割合は息子30%・父親70%となります。

仮に5,000万円の住宅を購入した場合の持分金額は以下のとおりです。

  • 息子の持分:1,500万円(30%)
  • 父親の持分:3,500万円(70%)

また、頭金を支払う場合は、その金額も考慮した上で持分割合を決める必要があります。

連帯債務者と連帯保証人との違い

連帯債務者と連帯保証人との違い

住宅ローンを組む際に、収入を合算できる方法には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2種類があります。

連帯債務者の場合、主債務者と連帯債務者の双方が同じ返済義務を負います。所有権は共有名義となるため、住宅ローン控除もそれぞれ利用することが可能です。

一方、連帯保証人は、ローン契約の当事者ではなく、あくまで保証人という立場です。

主債務者が単独で債務者となり、返済が滞った場合に限り、連帯保証人が代わりに返済義務を負います。

その他の違いについては以下の表にまとめています。

連帯債務者連帯保証人
ローン契約者主債務者と共にローン契約者となるローン契約者ではない
返済義務それぞれに返済義務がある主債務者の返済が滞った場合に限り、返済義務を負う
団体信用生命保険原則、加入できない加入できない
住宅ローン控除控除の対象控除の対象外

連帯債務とぺアローンの違い

連帯債務とぺアローンの違い

ペアローンも連帯債務と混同されやすいため、違いを正しく理解することが大切です。

以下が双方の違いをまとめた比較表です。

連帯債務者ペアローン
ローン契約者主債務者と共にローン契約者となる双方で別々のローン契約を締結
返済義務それぞれに返済義務があるそれぞれに返済義務がある
団体信用生命保険原則、加入できないそれぞれで加入
住宅ローン控除控除の対象控除の対象

ペアローンの概要

ペアローンとは、2人がそれぞれ別々の住宅ローンを契約する仕組みです。

お互いが相手の連帯保証人となるため、どちらかが返済できなくなった場合には、もう一方がその債務を引き継ぐ必要があります。

ペアローンの主なメリット

  • 収入合算で審査されるため、単独よりも多くのローンを組める
  • 団体信用生命保険(団信)にそれぞれ加入できる

ペアローンにおいても連帯債務と同様に収入を合算して審査を受けられるため、単独で申し込むよりも多くの借入が可能です。さらに、団体信用生命保険(団信)に2人とも加入できるのもペアローンのメリットの1つです。

しかし、ペアローンは2人がそれぞれ別の住宅ローンを契約するため、事務手数料や印紙代といった費用が連帯債務よりも高くなるデメリットがあります。

ペアローンが組める条件

ペアローンが組めるかどうかは金融機関によって異なりますが、以下のような関係であれば利用できるケースが多いです。

  • 夫婦
  • 親子

また、同居予定の婚約者や同性のパートナーでもペアローンを組めることもあるようです。ただし、すべての金融機関で対応しているわけではないため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

加えて、ペアローンは個々で住宅ローン契約を締結するため、金融機関の審査基準(年収・年齢など)を満たし、単独で借入できる返済能力が求められます。

連帯債務とぺアローンのどっちにすべき?

連帯債務とぺアローンのどっちにすべき?

住宅ローンを組む際、単体では希望する金額を借りられない場合に、連帯債務やペアローンの利用が効果的です。しかし、どちらを選べばよいか迷う方も多いかもしれません。

連帯債務またはペアローンを検討している場合、選択の基準となるのは、将来の働き方や返済計画です。

以下で、それぞれ向いているケースをみていきましょう。

【ペアローンが向いているケース】

  • 夫婦ともに安定した収入があり、出産・育児後も復職する予定がある
  • 双方で団体信用生命保険(団信)に加入し、万が一の際の保障を確保したい
  • 住宅ローン控除を2人で活用し、税負担を軽減したい

【連帯債務が向いているケース】

  • 数年後に夫婦のどちらかが仕事を辞める可能性がある
  • 住宅ローンの契約や管理をシンプルにしたい
  • 事務手数料や印紙代・抵当権設定登記費用など諸費用を抑えたい

このように、将来のライフプランや働き方を考慮し、自分たちに合った方法を選ぶことが大切です。

この記事のポイント

連帯債務者と連帯保証人との違いは?

連帯債務者の場合、主債務者と連帯債務者の双方が同じ返済義務を負います。所有権は共有名義となるため、住宅ローン控除もそれぞれ利用することが可能です。

一方、連帯保証人は、ローン契約の当事者ではなく、あくまで保証人という立場です。

主債務者が単独で債務者となり、返済が滞った場合に限り、連帯保証人が代わりに返済義務を負います。

詳しくは「連帯債務者と連帯保証人との違い」をご覧ください。

連帯債務とぺアローンで迷った時はどうする?

連帯債務またはペアローンを検討している場合、選択の基準となるのは、将来の働き方や返済計画です。

連帯債務が向いているケースは、数年後に夫婦のどちらかが仕事を辞める可能性がある、住宅ローンの契約や管理をシンプルにしたい、事務手数料や印紙代・抵当権設定登記費用など諸費用を抑えたいといった場合です。

詳しくは「連帯債務とぺアローンのどっちにすべき?」をご覧ください。

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ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

連帯債務とは、1つの住宅ローンに対して複数の方が全額の返済義務を負う仕組みです。住宅ローンにおいては、夫婦や親子のどちらかが主債務者となり、もう1人が連帯債務者として契約するのが一般的です。連帯債務で住宅ローンを利用することで、借入時に収入を合算でき、借入可能額を増やせるメリットがあります。一方で団信に加入できるのが主債務者だけのケースが多く、連帯債務者に万が一のことがあっても保障されない点に注意が必要です。
住宅ローンを検討する際は、将来のライフプランや働き方をきちんと話し合うことが大事です。ローンの組み方によっては、万が一の際の保障を手厚くできたり、住宅ローン控除の効果を高められたりします。もし、どのような住宅ローンにすべきか判断できない場合は、専門家の意見を参考にしながら納得のいくプランを選びましょう。
・「親子ローン」に関する記事はこちら
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