ざっくり要約!
- 相続空き家の3,000万円特別控除とは、相続で引き継いだ一定の要件を満たす空き家を売却した際、譲渡所得から3,000万円を控除できる節税特例
- 相続空き家の3000万円の特別控除を利用する場合、家屋の状態など複数の条件を満たす必要がある
一定の要件を満たす相続した空き家は、売却時に3,000万円特別控除と呼ばれる節税特例を利用できます。
従来、相続空き家の3,000万円特別控除は利用条件が厳しく使いにくい側面がありましたが、改正により2024年以降の売却では大幅に使いやすくなりました。
2024年以降の売却では、買主が空き家を取り壊すケースでも3,000万円特別控除の適用ができます。
相続空き家の3,000万円特別控除とは、どのような制度なのでしょうか。
この記事では、「相続空き家の売却で利用できる3,000万円特別控除」について解説します。
記事サマリー
空き家売却で受けられる3000万円控除の特例とは

相続空き家の3,000万円特別控除とは、相続で引き継いだ一定の要件を満たす空き家を売却した際、譲渡所得から3,000万円を控除できる節税特例のことです。
相続空き家の3,000万円特別控除は、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と呼ばれることもあります。
譲渡所得とは「個人が不動産を売却したときに生じる所得」の呼称のことです。
3,000万円特別控除はマイホームを売却したときの特例として有名ですが、一定の要件を満たす空き家であればマイホームでなくても3,000万円特別控除を利用できます。
3,000万円特別控除を適用したときの譲渡所得の計算式は、以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用) - 3,000万円
譲渡価額は、主に土地や建物の売却代金を指します。
取得費は、原則として土地は購入額、建物は購入額から減価償却費を控除した価額です。
減価償却費とは、建物価値を減額するために生じる会計上の費用のことを指します。
譲渡費用は、売却に直接要した費用のことで、仲介手数料や印紙税、測量費等が該当します。
3,000万円特別控除を適用した結果、譲渡所得がゼロ円(マイナスの場合もゼロ円となる)であれば、売却時の税金は発生しないことになります。
実際のところ、売却益が3,000万円を超える物件はなかなか少ないです。
3,000万円特別控除の効果は非常に大きいため、適用できると税金を大幅に削減した形で売却できるようになります。
相続空き家の3,000万円特別控除は、全国的に増加している古くて危険な空き家を解消するために設けられた制度です。
税金の負担によって空き家の売却が消極的にならないように、相続空き家の3,000万円特別控除の制度を設けることで空き家の解消を促しています。
なお、相続空き家の3,000万円特別控除を適用するには、相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却することが必要です。
・「空き家」に関する記事はこちら
空き家を手放したいなら早くすべき!5つの処分方法と注意点
出典:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

相続空き家の3000万円の特別控除の対象となる家屋の条件

相続空き家の3000万円の特別控除を適用するには、建物が一定の要件を満たしている必要があります。
この章では、建物の要件について解説します。
建物の特徴
建物としては、以下の2つの要件を満たしたものが対象です。
- 区分所有建築物(マンションなど)以外の家屋であること
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
まず、マンションは対象外となります。
相続空き家の3,000万円特別控除は、全国で社会問題化している古くて崩壊の可能性がある戸建ての空き家を解消することが目的です。
そのため、対象は戸建てのみとなっています。
次に、1981年5月31日以前に建築された家屋であることが条件です。
1981年5月31日以前に建築された建物は、原則として旧耐震基準の建物となっており、耐震性が低くなっています。
大地震が発生した際、旧耐震基準の建物は崩壊する危険性があることから、対象の建物は1981年5月31日以前に建築された家屋に限定されています。
建物の利用状況
建物の利用状況としては、原則として以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 相続の開始直前においてその被相続人(死亡した人)以外に居住していた者がいなかったこと
- 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
- 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
まず、被相続人が1人暮らししていたことが要件であり、その他の家族が住んでいた場合には対象外です。
また、他人に貸していた物件も対象外となります。
他人に貸せるような物件は、今後も他人に貸せる可能性があり、空き家が管理不全に陥るリスクが低いからです。
老人ホームに入居していた場合の条件
前節では、建物の利用状況に「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること」という規定がありました。
ただし、例外規定があり、以下の場合は相続開始直前のタイミングで暮らしていなくても特例を適用できます。
【相続開始直前に被相続人の居住の用に供されていなかった家屋の例外規定】
- 被相続人が介護保険法に規定する要介護認定などを受け、相続開始の直前まで老人ホームなどに入所していたこと
- 被相続人が老人ホームなどに入所したときから相続の開始直前まで、その家屋について被相続人による一定の仕様がなされ、かつ、事業の用・貸付の用または被相続人以外の者の居住の用に供されていないこと
空き家売却の3000万円控除の適用条件とは

相続空き家の3,000万円特別控除を適用するには、家屋以外に以下の要件も全て満たすことが必要です。
【譲渡の要件】
- 譲渡価額が1億円以下であること
- 家屋を取り壊さずに売る場合、売却時において、その家屋が現行の耐震基準を満たしていること
相続空き家の3,000万円特別控除では、建物が「現行の耐震基準を満たしていること」が条件になっていることが極めて重要なカラクリとなります。
現行の耐震基準とは、原則として1981年6月1日以降に建てられた新耐震基準の建物のことです。
そもそも相続空き家の3,000万円特別控除の対象は、旧耐震基準時代である1981年5月31日以前に建築された建物が対象でした。
対象が旧耐震基準の建物であるにも関わらず、特例では建物が新耐震基準を満たしていることを要求しています。
一見すると矛盾のように思われますが、この制度は危険な空き家を増やさないために旧耐震基準の建物を取り壊すか、耐震リフォームするかを選択させる仕組みになっているのです。
そのため、相続空き家の3,000万円特別控除では、旧耐震基準の建物を取り壊しても適用できることになっています。
更地にして売る場合には、以下の要件を満たしていることが必要です。
【更地にして売る場合の要件】
- 取り壊した家屋について相続の時からその取壊しの時まで事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないこと
- 土地について相続の時からその譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
一方で、取り壊さずに売却する場合は、耐震リフォームを行ってから売却することが必要です。
取り壊して売ることや耐震リフォームしてから売ることは、以前より認められていました。
しかしながら、以前は売主が取り壊しや耐震リフォームをしなければならないという制限であったため、資金のない売主には使いにくい制度となっていました。
そこで制度改正が行われ、2024年1月1日以降の売却では以下の要件を満たせば買主が取り壊しや耐震リフォームをしても特例が適用できるようになっています。
【2024年以降の改正内容】
- 売買契約などに基づき、売却後、買主が譲渡の日の属する年の翌年の2月15日までに耐震改修または取り壊しを行った場合でも適用対象となる
その他として、2024年1月1日以降の売却では「相続人の数が3人以上である場合における特別控除額は2,000万円となる」という改正も行われています。
買主との「特別な関係」とは
相続空き家の3,000万円特別控除は、買主が特別な関係ではない人であることも条件です。
特別な関係とは、生計を一にする親族や、家屋を売った後にその売った家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人等が該当します。
また、以下の条件も満たしていることが必要です。
【その他の条件】
- 売却した建物や土地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、相続空き家の3,000万円特別控除の特例の適用を受けていないこと

空き家売却後に3000万円控除を受ける手続きと必要な書類

この章では、相続空き家の3,000万円特別控除の手続きと必要な書類について解説します。
手続き方法
相続空き家の3,000万円特別控除を利用するには、市町村から「被相続人居住用家屋等確認書」を取得することが必要です。
被相続人居住用家屋等確認書は、確定申告時に提出が必要な書類となります。
確定申告は、売却の翌年の2/16~3/15の間に行う必要があります。
必要書類
必要書類は以下の通りです。
【土地建物を売る場合】
- 譲渡所得の金額の計算に関する明細書
- 被相続人居住用の建物および土地の登記事項証明書
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 売買契約書の写し
- 被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
建物を取り壊して売却する場合は、上記の1~4が提出書類となります。
空き家売却で3000万円控除を受ける際の注意点

この章では、相続空き家の3,000万円特別控除を利用する際の注意点について解説します。
譲渡所得が3000万円以下でも確定申告が必要
相続空き家の3,000万円特別控除を適用した結果、譲渡所得がゼロ円になったとしても特例を利用するためには確定申告が必要です。
店舗や倉庫は対象外
相続空き家の3,000万円特別控除では、店舗や事務所、倉庫は対象外となります。
ほかの特例制度と併用する場合
相続空き家の3,000万円特別控除は、マイホームを売却したときの3,000万円特別控除と併用が可能です。
ただし、併用する場合は、控除額の限度額が合計で3,000万円までとなります。
相続空き家の3,000万円特別控除は、相続した不動産を売却したときに利用できる「取得費加算の特例」とは選択適用であるため、有利な方を選ぶ必要があります。
買主側が耐震改修や取り壊しを行う場合
制度改正により買主側が耐震改修や取り壊しを行っても特例が適用できるようになりました。
一方で、売主自らの手を離れることになるので自分でコントロールすることができなくなります。
予定通りに耐震改修または取り壊しを行ってくれるかを、売却後もしっかりと確認する必要があります。

この記事のポイント
- 相続空き家の3000万円の特別控除の対象となる家屋の条件は?
相続空き家の3000万円の特別控除を適用するには、建物が一定の要件を満たしている必要があります。
具体的には以下の2つの要件です。
- 区分所有建築物(マンションなど)以外の家屋であること
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
詳しくは「相続空き家の3000万円の特別控除の対象となる家屋の条件」をご覧ください。
- 空き家売却の3000万円控除の適用条件とは?
相続空き家の3,000万円特別控除を適用するには、以下の要件を全て満たすことが必要です。
- 譲渡価額が1億円以下であること
- 家屋を取り壊さずに売る場合、売却時において、その家屋が現行の耐震基準を満たしていること
詳しくは「空き家売却の3000万円控除の適用条件とは」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
相続空き家の3,000万円特別控除は、2024年以降から買主が取り壊しても適用できるようになりました。そのため、取り壊し前提で空き家を購入する買取会社に売却しても利用できます。買取会社は、古い空き家でも買い取ってくれる可能性が高いです。今まであきらめていた人の中で、特例が適用できる期限内に間に合う場合は、再検討してみることをおすすめします。
・「相続空き家に係る居住用財産の3,000万円特別控除の適用要件と取扱」に関する記事はこちら
相続空き家に係る居住用財産の3,000万円特別控除の適用要件と取扱について
・「空き家の売却」に関する記事はこちら
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