ざっくり要約!
- 35年契約の火災保険を途中で解約すると、残りの保険期間に応じた解約返戻金を受け取れる可能性がある
- 家を売却するときは、引き渡し日に火災保険を解約する。また、火災保険の補償を受けられる 損傷箇所や破損箇所などがないかよく確認する
2015年10月以前は、火災保険の保険期間(補償が受けられる期間)を最長36年として契約することができました。住宅ローンの返済期間は原則として最長35年であるため、それにあわせて火災保険の保険期間を35年に設定している人も少なくありません。
火災保険が満了する前に家を売却する場合は、忘れずに解約手続きをしましょう。残りの保険期間に応じた解約返戻金を受け取ることができます 。
この記事では、35年契約の火災保険を解約するタイミングや解約返戻金の決まり方、解約時の注意点などについて解説します。
記事サマリー
火災保険は契約期間中に解約できる!
火災保険を解約する際は、契約者自身が手続きをする必要があります。また、家を買主に引き渡す前に解約手続きはしないようにしましょう。
自ら手続きしなければ解約できない
家を売却したとしても、火災保険の契約は自動的に解約されません。
火災保険の契約は、契約者個人と保険会社との間で結ばれます。また、補償対象となる物件が売却された事実が保険会社に自動で通知 されることはありません。
売却により物件の所有権が移転しても火災保険の契約は残り続けるため、契約者自身が保険会社や保険代理店に連絡し、解約を申し出る必要があります。
解約手続きを怠ると、自身が所有していない物件の火災保険料を支払い続けることになり、解約返戻金も戻ってきません。家を売却するときは、火災保険を必ず解約しましょう。
火災保険を解約するタイミングは?
火災保険は、物件の引き渡し日以降に解約することをおすすめします。
不動産の売買取引では、売買契約を結んでから決済と買主への引き渡しが行われるまで、1〜2か月ほどかかるのが一般的です。
引き渡し日よりも前に解約すると、売買契約を結んだあとに台風や豪雨などで物件に損害を生じたときに補償が受けられなくなります。
一方、家が引き渡されて名義変更が済んだあとは、たとえ自然災害が発生しても以前の所有者(売主)に保険金は支払われません。
そのため、火災保険は物件が買主に引き渡され、所有権が移転したあとになるべく早く解約すると良いでしょう。
火災保険の解約方法
火災保険を解約する一般的な流れは、以下の通りです。
- 保険会社や保険代理店へ連絡し解約を申し出る
- 解約申請書類の受領と記入
- 書類の返送
火災保険を途中解約するときは、契約先の保険会社のコールセンター、または保険代理店に連絡しましょう。保険会社によっては、Webサイトから解約を申し出ることも可能です。
連絡の際は、証券番号や保険の契約日などを担当者に伝えたり所定の受付フォームに入力したりするため、事前に保険証券を準備しておくとスムーズです。
解約の申し出が受け付けられると、保険会社から「解約依頼書」などの書類が郵送されてくるため、必要事項を記載し指定された書類を添付して返送しましょう。
書類に不備がなければ手続きは完了し、通常1〜2週間程度で指定した口座に解約返戻金が振り込まれます。
| ・「火災保険」に関する記事はこちら 火災保険はいくらかけるべき?保険料の決まり方や補償内容など解説 火災保険は賃貸住宅でも必要?補償内容や加入時のポイントについて解説 持ち家と賃貸で火災保険のおすすめの補償内容は異なる?それぞれ解説 |
35年契約の火災保険の解約返戻金はいくら?

続いて、保険期間が35年の火災保険を解約したときに戻ってくる解約返戻金の計算方法を解説します。
返戻率とは?
返戻率とは、支払った保険料に対する解約返戻金の割合のことです。火災保険においては未経過料率と同じ数字となります。
保険会社や商品によって返戻率が異なるため、一括払保険料や残りの契約期間が同じでも、解約返戻金は変わる可能性があります。
地震保険にも返戻金がある
地震保険は、地震や噴火、それらにともなう津波による損害を補償する保険です。
火災保険とセットで地震保険にも加入している場合、契約期間の途中で解約すると解約返戻金が支払われることがあります。
地震保険の解約返戻金の計算方法は、火災保険と同様に「一括払保険料×未経過料率」です。一方、火災保険の未経過料率は保険会社によって異なるのに対し、地震保険の場合は全社共通です。
これは、地震保険が政府による再保険(保険会社が加入する保険)を前提とした公共性の高い保険制度であるためです。そのため、保険料の計算方法も保険会社による違いはありません。
返戻金の計算方法
すべての保険期間分の火災保険料を一括で支払っていた場合、解約返戻金は以下の計算式で算出されるのが一般的です。
- 解約返戻金=一括払保険料×未経過料率
未経過料率(長期保険未経過料率)とは、契約からの経過期間に応じて定められる割合のことです。保険会社によって未経過料率は異なります。
たとえば、35年契約の火災保険を解約したときの経過期間が20年8か月、その時点での未経過料率が48%、一括払保険料が80万円である場合の解約返戻金は以下の通りです。
- 解約返戻金=一括払保険料80万円×未経過料率48%
- =38万4,000円
火災保険の解約返戻金は、一括払保険料を単純に残りの契約期間で月割り計算した金額とは異なります。
火災保険を解約するときの注意点
住宅の売却や買い替えにともない火災保険を解約するときは、以下の点に注意しましょう。
- 解約前に保険が適用される破損がないか確認する
- 現在の保険期間は最長5年
解約前に保険が適用される破損がないか確認する
火災保険の解約手続きを始める前に、家に補償の対象となる損傷箇所や破損箇所がないか最終確認すると良いでしょう。
火災保険は、契約内容によっては火災だけでなく台風・強風による屋根や外壁の損傷、飛来物による窓ガラスのひび、落雷による給湯器の故障なども幅広く補償します。
火災保険の補償対象となる損傷箇所や破損箇所が見つかった場合、保険金を受け取って修繕費用等に充てることで、物件の価値が下がりにくくなります。
また、物件を引き渡した後に買主から欠陥や不具合などを指摘されて契約不適合責任を問われ、修理や売却代金の減額などを要求されるリスクも減らせるでしょう。
引き渡し後に物件の損害が発覚した場合、たとえ火災保険の解約前であっても保険金は支払われません。物件を引き渡す前に火災保険を使って修理できる箇所がないかよく確認することをおすすめします。
現在の保険期間は最長5年
火災保険の最長契約期間は、2015年9月以前は最長36年でしたが、2015年10月からは最長10年、2022年10月以降は最長5年へと段階的に短縮されています。
これは、台風や集中豪雨などの大規模な自然災害の頻発により、保険金の支払額が増加しており、長期的に生じる損害を予測することが難しくなっているためです。
そのため、35年契約の火災保険を解約して新たに加入する場合、保険期間は最長で5年に短縮される点には注意が必要です。
また、持ち家と賃貸で必要な補償内容や保険期間は異なります。
不動産売却で火災保険の返戻金以外に戻ってくるお金
不動産を売却する際は、火災保険の解約返戻金の他にも、以下が払い戻される可能性があります。
- 住宅ローンの保証料
- 固定資産税・都市計画税の一部
- 管理費・修繕積立金の一部
住宅ローンの保証料
住宅ローンの保証料は、保証会社に対して支払う手数料です。保証会社とは、住宅ローンの借主が返済できなくなったとき、代わりに一括返済(代位弁済)をする会社のことです。
住宅ローンの契約時に、保証料を一括前払い方式(外枠方式)で支払っている場合、住宅の売却にともないローンを完済したときは、残りの期間に応じた保証料が返金されます。
なお、保証料を金利に上乗せして支払う内枠方式を選択している場合は、住宅ローンを完済しても返金はありません。
| ・「住宅ローンの保証料」に関する記事はこちら 住宅ローンの手数料とは?費用の相場や保証料との違いもあわせて解説 |
固定資産税・都市計画税の一部
固定資産税は、毎年1月1日の時点で土地や建物などの固定資産を所有している人に課せられる税金です。不動産が市街化区域内にある場合は、都市計画税もあわせて納税します。
年度の途中で不動産を売却するときは、固定資産税や都市計画税を売主と買主で日割り計算して精算するのが一般的です。
固定資産税と都市計画税は、その年の1月1日時点の所有者に1年分が課税されます。
しかし、物件を売却すると年度の途中で所有者が変わることになるため、不公平とならないよう、以下の金額を売主と買主がそれぞれ負担するのが慣習となっています。
- 売主の負担額:起算日から引き渡し日の前日までの日数分
- 買主の負担額:引き渡し日から年末までの日数分
起算日は、関東では1月1日、関西では4月1日とするのが一般的です。精算金は、売買を仲介する不動産会社が計算します。
| ・「固定資産税・都市計画税」に関する記事はこちら 固定資産税とは?新築一戸建てやマンションの計算事例や税金が軽減される条件を解説! 都市計画税とは?固定資産税との違いや計算方法を解説 |
管理費・修繕積立金の一部
マンションを売却する場合、毎月支払う管理費や修繕積立金を売主と買主で精算するのが一般的です。
通常、買主は引き渡し日から月末まで日割り計算した金額を売主に支払います。
ただし、これまで払い込んできた「修繕積立金」の総額は、管理組合の共有財産とみなされるため、売主個人に返還されません。
| ・「管理費・修繕積立金」に関する記事はこちら マンションの管理費の相場は?修繕積立金との違いや高い場合の理由も |
まとめ
35年契約の火災保険を途中で解約すると、残りの期間に応じて「解約返戻金」を受け取れる可能性があります。
ただし、引き渡し前に解約すると売買契約を結んだあとに台風や洪水などで家が損害を負ったときに補償を受けられなくなります。
解約の際は、保険が適用される損傷箇所や破損箇所がないか事前に確認し、家を引き渡したあとに解約手続きをしましょう。
この記事のポイント
- 火災保険は保険期間中でも解約できるのでしょうか?
火災保険を解約する際は、契約者自身が手続きをする必要があります。また、家を買主に引き渡す前に解約手続きはしないようにしましょう。
詳しくは「火災保険は契約期間中に解約できる!」をご覧ください。
- 35年契約の火災保険を解約した場合、返戻金はいくらですか?
すべての保険期間分の火災保険料を一括で支払っていた場合、解約返戻金は「一括払保険料×未経過料率」で算出されるのが一般的です。
詳しくは「35年契約の火災保険の解約返戻金はいくら?」をご覧ください。
- 火災保険を解約するときの注意点はありますか?
住宅の売却や買い替えにともない火災保険を解約するときは、「解約前に保険が適用される破損がないか確認する」「現在の保険期間は最長5年」という点に注意しましょう。
詳しくは「火災保険を解約するときの注意点」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
家を買い替えるときは、新居を補償対象とする火災保険の加入手続きも忘れないようにしましょう。特に、住宅ローンを組んで新居を取得する場合、火災保険の加入が必須であるケースがほとんどです。保険会社によって、補償内容や付帯できる特約、保険料などが異なります。加入の際は、複数の保険会社から見積もりを取り寄せて比較すると良いでしょう。

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