ざっくり要約!
- 住宅ローン控除が終了すると、所得税や住民税の減税がなくなり、手取り収入が減少する
- 控除終了後に家計が圧迫される事態を防ぐために、繰り上げ返済やふるさと納税、iDeCoなどを活用すると良い
住宅ローン控除を受けられる期間は、最長10年または13年です。控除期間が終了すると、所得税や住民税の減税を受けられなくなるため、手取り収入が減る可能性があります。
住宅ローン控除を受けている方は、控除が終了するタイミングや増加する税金の額などを確認し、必要に応じて対策をすることが大切です。
この記事では、住宅ローン控除が終わるとどうなるのか、減税の終了後に家計への影響を抑える方法とあわせて解説します。
記事サマリー
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人が利用できる税の優遇制度です。まずは、控除される税金の種類や、控除額の計算に関わる借入限度額を確認しましょう。
控除できる税金と控除率
住宅ローン控除を受けられると「年末時点のローン残高×控除率」で計算される金額が、その年の所得税から直接差し引かれます。
控除率は、2021年12月以前に実施されていた旧制度と、2022年1月から開始された新制度で異なります。
- 旧制度:1.0%
- 新制度:0.7%
控除額が所得税よりも高い場合、引き切れなかった部分は翌年度の住民税から差し引くことが可能です。住民税から控除できる金額の上限は、以下の通りです。
- 旧制度:前年分の所得税の課税総所得金額等の7%(最高136,500円)
- 新制度:前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(最高97,500円)
借入限度額
住宅ローン控除の控除額を計算する際、対象となるローン残高には上限が設けられています。この上限を「借入限度額」と呼びます。
旧制度の借入限度額は、以下の通りです。
〇2014年1月1日〜2021年12月31日までに入居
| 取得した住宅 | 借入限度額 |
| 住宅の対価や費用に含まれる消費税等が8%または10%の場合 (注文住宅や新築マンションなど) | 長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円 上記以外の住宅:4,000万円 |
| 上記以外 (売主が個人の中古住宅など) | 長期優良住宅・低炭素住宅:3,000万円 上記以外の住宅:2,000万円 |
新制度の借入限度額は以下の通りに定められています。
〇2022年1月1日〜2023年12月31日までに入居
| 住宅の種類 | 借入限度額 |
| 新築住宅 買取再販住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円 ZEH水準省エネ住宅:4,500万円 省エネ基準適合住宅:4,000万円 その他の住宅:3,000万円 |
| 既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅:3,000万円 その他の住宅:2,000万円 |
〇2024年1月1日〜2025年12月31日までに入居
| 住宅の種類 | 借入限度額 | ||
|---|---|---|---|
| 子育て世帯・若者夫婦世帯 | その他の世帯 | ||
| 新築住宅・買取再販住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | |
| その他の住宅 | 0円※1 | ||
| 既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | |
| その他の住宅 | 2,000万円 | ||
※1.2023年までに新築の建築確認を受けている場合は2000万円
※子育て世帯・若者夫婦世帯とは、①年齢19歳未満の扶養親族を有する者または②年齢40歳未満であって配偶者を有する者、若しくは年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者
2024年1月〜2025年末までに子育て世帯や若者夫婦世帯が、新築住宅や買取再販住宅に入居する場合、借入限度額が上乗せされます。
住宅ローン控除の控除期間
住宅ローン控除を受けられる期間は、取得した住宅の種類や入居した時期によって変わります。旧制度における控除期間は以下の通りです。
| 入居のタイミング | 控除期間 |
| 2014年1月〜2019年9月 | 10年間 |
| 2019年10月〜2020年12月 | 消費税10%課税対象の住宅を取得:13年間 上記以外:10年間 |
| 2021年1月〜2021年12月 | 以下の期間内に消費税10%課税対象の住宅を取得する契約が結ばれている場合:13年間 ・注文住宅:2020年9月末まで ・分譲住宅・中古住宅など2022年11月末まで 上記以外:10年間 |
| 2022年1月〜2022年12月 | 以下の期間内に消費税10%課税対象の住宅を取得する契約が結ばれている場合:13年間 ・注文住宅:2020年10月〜2021年9月末まで ・分譲住宅・中古住宅など:2020年12月〜2021年11月末まで 上記以外:0年 |
旧制度の控除期間は原則10年ですが、特定の条件を満たすと13年間に延長されます。
旧制度の控除額は「年末時点のローン残高×1.0%」ですが、控除期間が13年に延長される場合、11〜13年目については建物価格の2/3が上限となります。
一方、新制度の控除期間は以下の通りです。
| 住宅の種類 | 入居のタイミング | |
| 2022年1月〜2023年12月 | 2024年1月〜2025年12月 | |
| 新築住宅 買取再販住宅 | 13年 | 長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅:13年 その他の住宅:0年※ |
| 既存住宅 | 10年 | |
※1.2023年までに新築の建築確認を受けている場合は10年
新制度では、新築住宅または買取再販住宅を取得する場合、控除期間が最長13年となります。
| ・「住宅ローン控除」に関する記事はこちら 【2024年度版】住宅ローンの控除の条件は?申請方法や注意点まとめ 住宅ローン控除の必要書類一覧!申請初年度と2年目以降の注意点も |
住宅ローン控除が終わるとどうなる?

住宅ローン控除の適用期間が終了すると税金の優遇が受けられなくなるため、税負担が増えます。以下で、増加する金額の求め方とあわせて詳しく解説します。
税負担が増える
住宅ローン控除が終わると、控除されていた金額分だけ所得税や住民税の納税額が増えるため、基本的に手取り収入は減少します。
たとえば、年間で20万円の減税を受けていた場合、住宅ローン控除の期間が終了したあとは、手取り収入が年間で最大20万円減ります。月々に換算すると、手取り収入は約1万7,000円減る計算です。
控除額が高ければ高いほど、控除終了後に減少する手取り額も高くなるでしょう。
増える税額は「ローン残高×0.7%」とは限らない
住宅ローン控除の終了後に増える税額は、必ずしも「年末時点のローン残高×控除率」とは限りません。控除額は、以下のA〜Cのうちもっとも低い金額であるためです。
- 年末時点のローン残高×控除率
- 借入限度額×控除率
- 所得税+控除対象の住民税額
たとえば、控除の最終年におけるAが42万円、Bが35万円、Cが53万円の場合、控除額は35万円です。そのため、控除終了後に増加する税額は最大35万円となります。
【シミュレーション】税額はいくら増える?
住宅ローン控除が終わると税負担はどれくらい増えるのでしょうか。シミュレーションで確認してみましょう。
年末時点のローン残高が借入限度額を上回るケース
まずは、年末時点のローン残高が借入限度額を上回っている場合、住宅ローン控除が終わると税負担がいくら増えるのかを試算します。条件は以下の通りです。
- 入居した年:2023年1月
- 住宅ローンの借入額:7,000万円
- 返済期間:35年
- ボーナス返済:なし
- 金利:年1.0%
- 返済方法:元利均等方式
- 取得する住宅の種類:省エネ基準適合住宅
- 住宅ローン控除の借入限度額:4,000万円
- 控除率:0.7%
入居した年が2023年1月のため、新制度の住宅ローン控除を受けられるものとします。
このケースの場合、返済13年目における年末時点のローン残高は約4,680万円です。しかし、住宅ローン控除の借入限度額は4,000万円のため、差額の680万円は控除額の計算対象外となります。
返済13年目の所得税が30万円の場合、控除額と減税後の税額は以下の通りです。
- 最終年の控除額:4,000万円×0.7%=28万円
- 減税後の所得税額:30万円−28万円=2万円
試算の結果、返済13年目の所得税は2万円まで軽減されました。
翌年の所得税額も同水準の場合、住宅ローン控除が終了することで税負担は28万円(ひと月あたり約2.3万円)増えると考えられます。
控除額が所得税額よりも多いケース
続いて「年末時点のローン残高×控除率」で算出した控除額が所得税額より多いケースでシミュレーションしてみましょう。
住宅ローン控除を受ける人の年収が600万円であり、扶養内の配偶者がおり、所得税額は14万7,000円、住民税額は27万4,000円であるとします。
最終年度の住宅ローン控除額が28万円の場合、控除後の所得税額と残りの控除額は以下の通りです。
- 控除後の所得税額:14万7,000円−28万円≒0円
- 残りの控除額は:28万円−14万7,000円=13万3,000円
残りの控除額は13万3,000円ですが、新制度の住宅ローン控除では住民税から控除できる金額は最大9万7,500円のため、控除後の住民税額は以下の通りとなります。
- 控除後の住民税額:27万4,000円−9万7,500円=17万6,500円
よって、控除額の合計および住宅ローン控除の終了後に増加する税額は、以下の通りとなります。
- 所得税の軽減額14万7,000円+住民税の軽減額9万7,500円
=24万4,500円
住宅ローン控除が終わったら検討すべきこと
住宅ローン控除の終了により、所得税や住民税の負担が増加したときは、以下の方法で対策をすることを検討しましょう。
- 繰り上げ返済
- ふるさと納税
- iDeCo
- 医療費控除
- 借り換え繰り上げ返済
繰り上げ返済
繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別にまとまった資金でローン元金の一部または全部を返済することです。繰り上げ返済を行うと、減少したローン元金に応じた利息を支払わなくて済むため、総返済額を減らすことができます。
繰り上げ返済の方法は、以下の2種類があります。
- 期間短縮型:返済期間を短縮する方法
- 返済額軽減型:毎月の返済額を減らす方法
繰り上げ返済する金額やローン残高などが同じである場合、期間短縮型のほうがより多くの利息を軽減できます。
しかし、住宅ローン控除の終了によって税負担が増加した場合は、返済額軽減型を選択して毎月の支出を減らし、家計を楽にするのも1つの方法です。
| ・「繰り上げ返済」に関する記事はこちら 住宅ローンの繰り上げ返済で得するワザを公開!注意点も解説 住宅ローンを繰り上げ返済してはいけない? 大きな理由と効果的な方法を解説 |
ふるさと納税
ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体などに寄付ができる制度です。
ふるさと納税で寄付した金額から2,000円を超える部分は、所得税や住民税から控除されます。また、ふるさと納税を行うと、食品や日用品、家電などの返礼品を受け取ることも可能です。
2,000円の自己負担を上回る価値がある魅力的な返礼品が多数あるため、上手に活用すれば住宅ローン控除終了後の家計のやりくりに余裕が生まれやすくなります。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金を拠出して投資信託や生命保険などで運用して老後資金を準備する私的年金制度です。
iDeCoの主な特徴は、掛金の全額が所得控除の対象になる点です。1年間で支払った掛金と同じ金額の分だけ、その年の課税対象となる所得が減るため、所得税や翌年の住民税の負担を軽減する効果が期待できます。
iDeCoを始めることで、住宅ローン控除の終了により増えた税負担を軽減しながら、老後に向けた資産形成を行うことが可能です。
ただし、拠出できる掛金には上限があり、積み立てた資産は原則60歳まで引き出せないなどの注意点があります。
医療費控除
医療費控除とは、医療費が一定額を超えるときに医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けられる制度です。控除額は最高200万円で、以下の式で計算します。
- 実際に支払った医療費の合計額−保険金などで補填される金額−10万円※
- ※総所得金額等が200万円未満の場合は、総所得金額等の5%
医療費控除により、課税の対象になる所得が減ることで、所得税や住民税の負担が軽減される場合があります。
住宅ローン控除が終了して増税負担を感じるようになった場合には、医療費控除も併せて検討してみましょう。
借り換え
住宅ローン控除は、利用者の金利負担の軽減を目的とした制度です。住宅ローン残高の0.7〜1.0%が控除されることで、実質的に金利負担がゼロ、あるいは控除額が金利負担を上回っているケースも少なくありません。
住宅ローン控除が終わると金利が上がるというわけではありませんが、負担感は増すでしょう。そこで、控除の終了時に金利が低い住宅ローンに借り換えるのも一つの方法です。
現状の金利や残債などにもよりますが、借り換えをすると毎月の返済額が軽減され、家計にゆとりが生まれる可能性があります。
ただし、借り換えには一定の諸費用がかかるため、借り換え後の返済額に加え、借り換えにかかる費用も含めて検討してみましょう。
| ・「借り換え」に関する記事はこちら 住宅ローン借り換えのタイミングとメリット・デメリットについて |
まとめ
住宅ローン控除の期間が終了すると、税金の優遇が受けられなくなるため、所得税や住民税の負担が増えて手取り収入が減る可能性があります。
控除が終了したあとは、家計の負担を軽減するために「繰り上げ返済をする」「ふるさと納税をする」「iDeCoで老後資金を準備する」といった方法で対策すると良いでしょう。
この記事のポイント
- 住宅ローン控除とはどのような制度ですか?
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した人が利用できる税の優遇制度です。
「住宅ローン控除とは?」にて、控除される税金の種類や、控除額の計算に関わる借入限度額を確認しましょう。
- 住宅ローン控除が終わるとどうなりますか?
住宅ローン控除の適用期間が終了すると税金の優遇が受けられなくなるため、税負担が増えます。
詳しくは「住宅ローン控除が終わるとどうなる?」をご覧ください。
- 住宅ローン控除が終了したらどうしたら良いでしょうか?
住宅ローン控除の終了により、所得税や住民税の負担が増加したときは、対策をすることを検討しましょう。
詳しくは「住宅ローン控除が終わったら検討すべきこと」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
住宅ローン控除は、マイホームに入居したタイミングや取得した住宅の種類などで控除期間をはじめとした制度内容が変わります。自身が受けている住宅ローン控除の制度内容がわからない場合は、まず最寄りの税務署や懇意にしている税理士などに相談することをおすすめします。

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