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停止条件とは? 解除条件との違いや不動産売買する人が知っておくべきポイントをわかりやすく解説

執筆者プロフィール

悠木まちゃ
宅地建物取引士

ライター・編集者。ハウスメーカー勤務時に、新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの営業・設計を経験。
その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動を開始。実務経験を活かし、不動産・金融系を中心に執筆から編集まで行う。ブックライターとしても活動するほか、ライター向けオンラインサロンの講師も担当している。

ざっくり要約!

  • 停止条件とは、契約の締結後、特定の条件が満たされるまで法的効力の発生を停止させるものです。
  • 解除条件とは、契約の効力が発生した後に、特定の条件が満たされるとその効力が消滅するものです。
  • 停止条件を不動産売買契約に付ける際は、条件の内容や期日を明確にし、手付金や仲介手数料の取り扱いについて決めておくことが重要です。

不動産売買契約において、「停止条件」という言葉を耳にすることがあるでしょう。「停止条件」とは、契約締結後に法的効力の発生を停止させておくための条件です。

この記事では、停止条件の基本的な仕組みや解除条件との違い、不動産売買における具体例や注意点について解説します。安心して不動産取引を進めるためにも、ぜひご覧ください。

停止条件とは? 解除条件との違いは?

停止条件とは、契約の締結後に特定の条件が満たされるまで、その契約の法的効力の発生を停止させる条件のことです。その条件が実現するかどうかが不確実な場合に用いられます。

例えば、「住宅ローンの審査が通ったら、この家を買う」という契約の場合、「住宅ローンの審査が通る」という事実が停止条件となります。この条件が成就するまで、売買契約の効力は発生しません。

解除条件との違い

停止条件と似たものに解除条件があります。解除条件とは、すでに発生している契約の効力を、特定の条件が成就した場合に消滅させる条件のことです。

停止条件が「契約の効力発生を止める」ものであるのに対し、解除条件は「契約の効力を消滅させる」ものである点が異なります。

例えば、「転勤が決まったら、この賃貸借契約を解除する」という契約では、「転勤が決まる」という事実が解除条件になります。

不動産売買契約に停止条件が付いていたらどうなる?

不動産売買契約に停止条件が付いている場合、その条件が成就するまでは、売買契約の効力は発生しません。買主は代金を支払う義務を負わず、売主は不動産を引き渡す義務を負わないということです。

例えば、住宅ローンの審査通過を停止条件とする場合、審査に通るまでは、売買契約は効力を持ちません。もし審査が不合格となれば、契約は効力を生じることなく終了します。停止条件によって契約が無効となっても、損害賠償請求の対象にはなりません。

この仕組みにより、買主は「ローンの審査に通らなかった状態で、不動産の購入義務を負う」というリスクを回避できます。

不動産売買における停止条件の具体例

実際に、どのような場合に停止条件が設けられるのでしょうか。ここでは、3つの具体例を紹介します。

  • 地目の変更を条件とした売買
  • 建築条件付き土地の売買
  • 地主の承諾を条件とする借地権の売買

地目の変更を条件とした売買

地目の変更を条件とした売買とは、農地などの地目の土地を、宅地などに変更することを条件として売買契約を結ぶことです。

例えば、農地法に基づく転用許可などが停止条件として定められます。農地の転用は容易ではなく、許可が得られない可能性があるため、契約の効力発生を保留にする必要があるとされています。

建築条件付き土地の売買

建築条件付き土地の売買とは、指定された建築業者と建築請負契約を結ぶことを条件とした土地の売買契約のことです。この場合の停止条件は、指定期間内に建築請負契約が成立することです。

土地の売主が建築業者である場合に、土地と建物の販売をセットにして利益を確保するために、この停止条件が設けられることがあります。

地主の承諾を条件とする借地権の売買

借地権(土地を借りて建物を建てる権利)を売買する際に、地主の承諾を得ることを条件とする契約です。借地権の譲渡には地主の承諾が必要であり、承諾が得られなければ借地権を売買できないために、停止条件が設けられます。

なかには地主が承諾しない場合や、地主に承諾料を支払う必要が生じる場合もあります。

不動産売買における解除条件の具体例

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続いて、不動産売買における解除条件の具体例を2つ紹介します。

  • ローン特約
  • 買い替え特約

ローン特約

ローン特約とは、買主が住宅ローンの融資を受けられなかった場合に、不動産売買契約を解除できるという特約です。融資の審査に通らなければ代金を支払えなくなるため、買主を保護する目的で設けられます。

ローン特約における解除条件は、「融資承認が得られないこと」です。具体的には、「〇年〇月〇日までに融資の承認が得られない場合、本契約は解除される」といった形で定められます。

買い替え特約

買い替え特約とは、買主が所有する不動産(以下「旧居」)の売却が一定期間内に成立しない場合に、新たに購入する不動産(以下「新居」)の売買契約を解除できるという特約です。

旧居の売却代金を新居の購入資金に充てることを予定している買主を保護するために設けられます。旧居の売却ができなかった場合に、新居の購入を白紙に戻せることで、買主は二重ローンになるリスクを回避できます。

買い替え特約は、「〇年〇月〇日までに旧居の売買契約が成立しない場合、新居の売買契約は解除される」といった形で定められます。

不動産売買に停止条件をつけるときの注意点

不動産売買において、停止条件の設定は買主と売主の双方にとってリスクヘッジとなり得ます。しかし、停止条件をつける際には以下の点に注意が必要です。

  • 条件を曖昧にしない
  • 期日を明確にする
  • 手付金の取り扱い
  • 仲介手数料の取り扱い

条件を曖昧にしない

停止条件の内容は、明確に定めることが重要です。

例えば、「住宅ローンの承認を得られたら」という条件を設定する際は、具体的に「〇〇銀行から、〇〇円の融資承認を〇年〇月〇日までに得られたら」と、客観的に判断できる内容を記載する必要があります。

条件が曖昧だと、解釈の違いから後々トラブルが生じる可能性が考えられます。

期日を明確にする

停止条件には、条件成就の期日を必ず設定しましょう。「いつまでに」という期限がなければ、契約がいつまでも不安定な状態になってしまいます。例えば、買主がいつまでも住宅ローンの審査を申請しないといった事態が起こりえます。

期日を設定することで、契約当事者はその期日までに条件を成就させる義務を負い、契約の履行を促進できます。また、期日までに条件が成就しなかった場合の取り決め(契約解除など)も明確にしておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

具体的には、「〇年〇月〇日までに融資承認が得られない場合は、本契約は白紙解除とする」といった条項を設けることが一般的です。

手付金の取り扱い

停止条件付きの不動産売買契約では、手付金の取り扱いを明確にしておく必要があります。通常、停止条件が成就しなかった場合、手付金は買主に返還されます。

しかし、契約書に明確な記載がないと、手付金の返還をめぐってトラブルになる可能性があります。例えば、売主が手付金を既に使ってしまっていた場合、返還が困難になるケースも考えられます。

そのため契約書には「停止条件が成就しなかった場合、売主は買主に受領済みの手付金を無利息で返還する」といった条項を明記し、手付金返還の条件を定めることが重要です。また、買主の自己都合で停止条件が成就しなかった場合は手付金が返還されないとする特約を設けることもあります。

仲介手数料の取り扱い

仲介手数料は、成功報酬であるという考え方が一般的です。したがって、停止条件によって契約が解除された場合は、仲介手数料は発生しないと考えるのが自然です。

しかし、不動産会社によっては契約を締結した時点で仲介手数料を請求する場合があり、停止条件が成就せずに契約解除となった場合でも、仲介手数料の返還に応じないケースがあります。

停止条件が成就しなかった場合の仲介手数料の取り扱いについて契約前に確認し、書面で合意しておくことが重要です。仲介手数料の支払時期や返還条件を明確にすることで、トラブルを回避できます。

まとめ

停止条件とは、特定の条件が満たされるまで、契約の効力発生を停止させる条件のことです。地目の変更や建築条件付き土地の売買などに使われます。一方、解除条件は契約が成立した後にその効力を消滅させるものです。

停止条件を設定する際は、条件や期日を明確に定め、手付金や仲介手数料の取り扱いを取り決めておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。

不動産取引を行う際は、停止条件や解除条件を理解したうえで、契約内容を確認しましょう。不明点がある場合は、不動産会社に質問しながら進めることが大切です。

この記事のポイント

停止条件と解約条件の違いはなんですか?

停止条件とは、契約の締結後に特定の条件が満たされるまで、その契約の法的効力の発生を停止させる条件のことです。その条件が実現するかどうかが不確実な場合に用いられます。

解約条件との違いなど詳しくは「停止条件とは? 解除条件との違いは?」をご覧ください。

停止条件の具体例はどのようなものがありますか?

「地目の変更を条件とした売買」「建築条件付き土地の売買」「地主の承諾を条件とする借地権の売買」の場合に停止条件が儲けられます。

詳しくは「不動産売買における停止条件の具体例」をご覧ください。

停止条件をつける場合の注意点はありますか?

不動産売買において、停止条件の設定は買主と売主の双方にとってリスクヘッジとなり得ます。しかし、停止条件をつける際には注意が必要です。

詳しくは「不動産売買に停止条件をつけるときの注意点」をご覧ください。

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ライターからのワンポイントアドバイス

停止条件は、買主保護の役割を果たす一方で、売主にとっては契約の効力発生が不安定になる側面もあります。例えば、停止条件によって契約が無効になると、売主は販売機会を失う可能性も考えられます。
そのため、停止条件を付ける場合は、その必要性を慎重に見極めることが重要です。契約前に専門家に相談し、停止条件の内容や期間について、双方が納得のいく取り決めをしましょう。