ざっくり要約!
- 賃貸住宅の空室は、競合物件の存在や、物件自体の魅力の低下、入居者層と物件の特性が合っていないことなどが原因で発生します。
- 空室対策には、賃料の値下げやフリーレントのほか、リフォームやリノベーション、人気設備の導入などの方法があります。
- 効果的な空室対策を行うには、物件の状況や周辺の競合、ターゲットとする入居者層に合わせて方法を選ぶ必要があります。
マンションやアパートを経営するうえで、空室の発生は避けたい問題です。空室が続くと家賃収入が途絶え、ローンの返済や維持管理費の負担が重くなる可能性があります。所有する物件の価値を維持し、安定した収益を得るためには、効果的な空室対策が欠かせません。
この記事では、賃貸住宅で空室が発生する主な原因や、具体的な空室対策を紹介します。それぞれの対策がどのような物件に向いているかも解説するので、ご自身の状況に合った対策を見つけ、マンション・アパート経営に活かしてください。
記事サマリー
賃貸住宅の空室率の推移
近年の賃貸住宅の空室率は、社会情勢の変化に伴い、エリアごとに異なる動きを見せています。

空室率は、2020年下期に1.9%(関西圏)〜3.0%(全国)まで改善しましたが、2022年度には一時的に4.7%(全国)まで上昇しました。しかし2023年度には再び改善傾向にあり、全国平均で4.2%となっています。
特に首都圏と関西圏では、2022年度にそれぞれ4.2%、5.1%まで上昇したものの、2023年度には両エリアとも3.4%まで大きく改善しています。一方で「その他」のエリアは7%台で推移しており、エリアによる需給バランスの差が見られます。
このような空室率の変動は、大家にとって直接的な影響を及ぼします。空室率が高い局面では、入居者確保のためにフリーレントや賃料の減額交渉が増える傾向にあります。逆に空室率が低い局面では、賃料の改定など強気の条件を提示しやすくなるでしょう。
市場の動向を把握し、自身の物件が置かれている状況に合わせて柔軟な戦略を立てることが求められます。
賃貸住宅の空室が多くなってしまう3つの理由
所有する物件に空室が生じる背景には、様々な要因が考えられます。効果的な対策を立てるためには、まず原因を把握しましょう。
ここでは、空室につながる主な原因を3つ解説します。
- 競合物件が多い
- 魅力が低い
- 入居者の属性や好みなどを把握していない
競合物件が多い
周辺エリアに競合となる賃貸物件が多いと、供給過多の状態になり、入居者から選ばれにくくなることがあります。特に、最新の設備を備えた新築物件が次々と建設されるエリアでは、既存の物件は相対的に見劣りする傾向があります。
また、日本では人口減少や少子高齢化が進んでおり、長期的には賃貸住宅の需要が減少していく可能性も指摘されています。入居者の選択肢が増える一方で、借り手の総数が減っていく状況では、物件の競争力を維持するための工夫が重要になります。
魅力が低い
物件そのものの魅力が低いことも、空室の直接的な原因です。築年数の経過とともに、間取りが現代のライフスタイルに合わなくなったり、キッチンやバスルームなどの設備が古くなったりすると、物件を探している人の関心を引くのは難しくなります。
壁紙や床の汚れ、外観の傷みなども、内見時の印象を大きく左右する要素です。周辺の競合物件と比較して、家賃に見合うだけの価値や快適さがないと判断されると、空室は埋まりにくくなるでしょう。
入居者の属性・好みなどを把握していない
物件が立地するエリアの主な入居者層と、物件の特性が合っていない場合も空室の原因となります。たとえば、大学の近くで学生の単身者が多いエリアなのに、ファミリー向けのような広い間取りの物件では、需要とのミスマッチが生じます。
反対に、静かな住宅街でファミリー層に人気があるのに、ワンルームの物件ばかりでは入居者を見つけるのは困難です。
効果的な空室対策を行うには、まずそのエリアにどのような人が住んでいて、どのような物件を求めているのかを正確に把握する、市場調査とターゲティングが不可欠といえます。

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マンション・アパートの空室対策6選

空室の原因を特定できたら、次はその原因に応じた具体的な対策を検討します。対策には様々な方法があり、物件の状況や予算、ターゲットとする入居者層によって最適な選択は異なります。ここでは、代表的な6つの空室対策を紹介します。
- 賃料の値下げ
- リフォーム・リノベーション
- 設備の導入
- フリーレント
- 審査の緩和
- 管理会社の変更
1.賃料の値下げ
賃料の値下げは、入居者募集において最も直接的で、早期に効果が現れやすい対策のひとつです。周辺の類似物件の家賃相場を調査し、それよりも少し低い価格設定にすることで、入居者の関心を引きつけやすくなります。
ただし、一度下げた賃料を元に戻すのは簡単ではありません。長期的に収益性が低下するだけでなく、既存の入居者から不満が出る可能性もあります。値下げは最終手段と考え、まずは周辺相場を正確に把握したうえで、慎重に判断することが重要です。
向いているケース
- 周辺相場より家賃が高い
- 長期間空室が続いている
- 他にできる対策がない
賃料の値下げは、所有する物件の家賃が周辺の類似物件の相場と比べて明らかに高い場合に有効な手段です。適正な価格に設定し直すことで、これまで家賃を理由に敬遠していた層にアピールできます。
また、他の対策を試しても半年や1年以上といった長期間にわたって空室が続いている場合も、値下げを検討するタイミングかもしれません。空室期間の損失と、値下げによる収入減を比較し、どちらがより大きな損失になるかを計算してみましょう。
リフォームや設備投資を行う資金的な余裕がない場合にも、値下げは現実的な選択肢となります。
| ・「賃料査定」に関する記事はこちら 賃料査定とは?賃料の設定方法や不動産会社の選び方や注意点なども詳しく解説 |

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2.リフォーム・リノベーション
築年数の経過により内装や設備が古くなった物件は、リフォームやリノベーションで競争力を高めることができます。壁紙や床材の張り替え、キッチンやバスルームの交換など、物件の弱点を解消する改修が効果的です。
また、間取りを変更して現代のニーズに合わせたり、デザイン性の高い内装にしたりすることで、他の物件との差別化を図れます。
近年では、入居者が自由に内装を変更できるDIY可能な物件として貸し出す方法も注目されています。全ての改修を大家が行うのではなく、入居者の好みに委ねることで、費用を抑えつつ物件の魅力を高めることが可能です。
向いているケース
- 築年数が古い
- 内装や設備が時代遅れになっている
- 周辺に新築や築浅の競合物件が多い
リフォームやリノベーションは、築年数が古く、内装や設備が現代の入居者の求める水準に達していない物件に特に向いています。時代遅れの印象を与える間取りや水回りを刷新することで、物件の価値を大きく向上させることが可能です。
周辺に新築や築浅の競合物件が多いエリアでも、リノベーションによってデザイン性や機能性を高めることで、十分に対抗できる可能性があります。費用はかかりますが、長期的な視点で見れば、家賃下落を防ぎ、安定した入居者を確保するための有効な投資といえるでしょう。
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3.設備の導入
入居者に人気の高い設備を導入することも、効果的な空室対策です。例えば、インターネット無料設備や宅配ボックス、モニター付きインターホンなどは、現代の賃貸住宅において需要の高い設備として知られています。
これらの設備があることで、入居者の生活はより快適で便利になります。その結果、物件の付加価値が高まり、周辺の競合物件との差別化につながります。大規模なリフォームに比べて少ない費用で実施できる対策も多く、費用対効果が高い点が魅力です。
向いているケース
- 物件に目立った特徴がない
- 周辺の競合物件に設備面で劣っている
- ターゲット層が明確
物件にこれといった強みがなく、他の物件に埋もれがちな場合に、設備の導入は有効な差別化戦略となります。特に、周辺の競合物件が導入している人気の設備が自分の物件にない場合は、早急に検討する必要があるでしょう。
また、ターゲットとする入居者層が明確な場合にも、その層に響く設備を導入することで、より効果的にアピールできます。例えば、単身者向けなら宅配ボックス、ファミリー層向けなら追い焚き機能付きバスなどが考えられます。ターゲットのニーズを的確に捉えることが重要です。
| ・「宅配ボックス設置の補助金」に関する記事はこちら 宅配ボックス設置の補助金一覧! 戸建て・マンション・賃貸住宅が利用できるのはどの制度? |
4.フリーレント
フリーレントとは、入居後の一定期間の家賃を無料にする契約形態です。例えば「最初の1ヶ月分の家賃無料」といった条件を提示することで、入居者の初期費用負担を軽減し、契約のハードルを下げることができます。
家賃を直接下げるわけではないため、一度契約が始まれば、2年目以降も設定した家賃で収入を得られるのがメリットです。
ただし、無料期間中は家賃収入がゼロになるため、短期で退去されると損失が大きくなるリスクもあります。契約期間の縛りを設けるなどの対策もあわせて検討するとよいでしょう。
向いているケース
- 引越しシーズンを過ぎてしまった
- 入居者の初期費用を抑えたい
- 家賃設定は下げたくない
フリーレントは、1月〜3月といった引越しの繁忙期を過ぎてしまい、入居希望者が見つかりにくくなった時期に特に有効です。引越しを考えているものの、費用面でためらっている人の背中を押す効果が期待できます。
物件の価値から考えて家賃自体は下げたくないが、何かインセンティブを付けたいという場合にも適した方法です。家賃を下げるよりも、大家にとっての長期的な収入減を避けつつ、入居者には初期費用のメリットを提供できる、双方にとって合理的な選択肢となり得ます。
5.審査の緩和
入居審査の基準を緩和することも、空室対策のひとつです。これまで審査に通らなかった層にも門戸を広げることで、入居希望者の母数を増やすことができます。
例えば、収入の基準を少し下げたり、フリーランスや非正規雇用の人も対象に含めたりすることが考えられます。また、ペット可にしたり、高齢者や外国籍の方の入居を積極的に受け入れたりすることも有効です。
ただし、審査を緩和すると家賃滞納やトラブルのリスクが高まる可能性もあるため、保証会社の利用を必須にするなど、リスク管理を徹底することが前提となります。
向いているケース
- 入居希望者がなかなか現れない
- 特定のニーズに応えたい
- 家賃滞納リスクへの対策が取れる
様々な募集活動をしても内見の申し込みすら入らないなど、入居希望者が全く現れない状況では、審査基準の見直しを検討する価値があります。市場が求める入居者層と、大家が設定している基準に乖離があるのかもしれません。
また、ペット可物件や高齢者向け物件など、特定の需要はあっても供給が少ない市場を狙う戦略も有効です。ニッチな層にターゲットを絞ることで、競合と争うことなく入居者を確保できる可能性があります。
ただし、家賃保証会社の加入を必須にするなど、滞納リスクをヘッジする仕組みを整えておくことが不可欠です。
| ・「家賃保証会社」に関する記事はこちら 賃貸保証会社(家賃保証会社)とは?料金や役割、仕組みを解説 |
6.管理会社の変更
空室が続く原因が、物件そのものではなく、管理会社の客付け能力や管理体制にある場合も考えられます。入居者募集の広告活動が不十分であったり、内見希望者への対応が悪かったりすると、機会損失につながります。
また、入居中のクレーム対応や建物の清掃・メンテナンスが行き届いていないと、入居者の満足度が低下し、退去の原因にもなりかねません。
現在の管理会社の活動内容を評価し、もし不満点があるならば、客付け能力や管理能力の高い会社へ変更を検討することも有効な空室対策です。
向いているケース
- 管理会社の募集活動に不満がある
- 入居者からのクレームが多い
- 長期的な視点で資産価値を維持したい
管理会社がどのような媒体で、どのくらいの頻度で募集広告を出しているか確認し、もし不十分だと感じるなら、変更を考えるべきかもしれません。担当者からの報告が遅い、提案がないといった場合も同様です。
また、現在の入居者から建物の清掃状況やトラブル対応に関する不満が頻繁に寄せられるようであれば、管理の質に問題がある可能性があります。
良い管理は入居者の定着率を高め、長期的な資産価値の維持につながります。複数の管理会社から話を聞き、サービス内容や実績を比較検討することが重要です。
| ・「賃貸管理会社」に関する記事はこちら 賃貸管理会社とは? 頼れる委託先の選び方を紹介 |

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まとめ
賃貸住宅の空室は、近隣物件との競合や物件の魅力不足など、さまざまな要因によって発生します。安定した賃貸経営を実現するには、空室の原因を分析し、状況に応じた適切な対策を講じることが重要です。
空室対策には、賃料を見直す、一定期間のフリーレントを設定するといった直接的な方法のほか、リフォームや設備の導入により物件の価値を高める方法もあります。どの手法が効果的かは、物件の築年数、立地、予算、入居希望者の層などによって異なります。
まずは、空室の要因を冷静に見極めることが不可欠です。この記事で紹介した内容を参考に、自身の物件に合った戦略を立ててみてください。
空室対策に関して、より専門的なアドバイスが必要な場合は、東急リバブルへお気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 賃貸住宅での空室率はどのくらいですか?
近年の賃貸住宅の空室率は、社会情勢の変化に伴い、エリアごとに異なる動きを見せています。
詳しくは「賃貸住宅の空室率の推移」をご覧ください。
- 賃貸住宅はなぜ空室が多くなってしまうのですか?
所有する物件に空室が生じる背景には、様々な要因が考えられます。効果的な対策を立てるためには、まず原因を把握しましょう。
詳しくは「賃貸住宅の空室が多くなってしまう3つの理由」をご覧ください。
- マンションやアパートにはどのような空室対策がありますか?
空室の原因を特定できたら、次はその原因に応じた具体的な対策を検討します。対策には様々な方法があり、物件の状況や予算、ターゲットとする入居者層によって最適な選択は異なります。
詳しくは「マンション・アパートの空室対策6選」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
効果的な空室対策を行ううえで、忘れてはならないのが「入居者目線」です。例えば、導入した設備が、そのエリアの主な入居者層のニーズとずれていては、投資が無駄になってしまう可能性があります。
対策を検討する際は、まず「自分がこの物件に住むとしたら、何があれば嬉しいか、何が不満に感じるか」を想像してみましょう。可能であれば、退去した入居者に理由を尋ねてみるのも、物件の弱点を客観的に知る良い機会になります。不動産会社の担当者に、最近のトレンドや近隣の成功事例などを聞いてみるのも有効です。

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