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マンションの自主管理とは?トラブル例やメリット・デメリットを紹介

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • マンションの自主管理方式とは、管理組合が自ら管理業務を行う方式のこと
  • 自主管理方式は40~50戸程度の小規模物件で採用されているケースが多い

一部の分譲マンションには、管理を自分たちで行う自主管理方式を採用している物件もあります。

自主管理は組合員が自ら管理業務を行わなければいけないことから、組合員の負担が重くなります。

一方で、外部の管理会社に管理を委託しているマンションでも、管理会社に対する不信感から自主管理への切り替えを検討している物件もあるようです。

分譲マンションの自主管理とは、どのようなものなのでしょうか。

この記事では、「分譲マンションの自主管理」について解説します。

マンションの自主管理とは管理方式の一種

マンションの自主管理とは管理方式の一種

分譲マンションを購入した区分所有者は、全員マンション管理組合の組合員となります。
マンション管理組合とは、マンションを管理・運営する団体のことです。

マンション管理組合が採用する管理方式には、主に「自主管理」と「全部委託」、「一部委託」の3つの方式があります。

自主管理方式

自主管理方式とは、管理組合が自ら管理業務を行う方式のことです。

管理会社に管理を委託するのではなく、管理組合が管理費等を集金し、自ら各種設備の点検業者や清掃業者等と直接契約し、マンションを維持運営する方式になります。

自主管理方式を採用している物件は、築年数の古い物件に多いです。

1960年代に建築された分譲マンションでは3~4割程度の割合で自主管理物件が存在しましたが、その後は徐々に減少し、近年新築される物件ではほとんど見られません。

現存する分譲マンション全体で見ると、自主管理方式の物件の割合は極めて少ないです。

築年数の古いマンションの中には、200戸超の物件でも自主管理を行っているケースはあります。

ただし、戸数が多いマンションは自主管理が困難となるため、一般的には自主管理は40~50戸程度の小規模物件で採用されているケースが多いです。

全部委託方式

全部委託方式とは、管理会社へ全面的に管理を委託する方式のことです。

平成以降に分譲された多くのマンションは、基本的に全部委託方式が採用されています。

全部委託方式は、管理を全て管理会社に委託していることから、組合員の負担が軽く、管理組合の理事(役員)が交代しても管理の質が変わらない点がメリットです。

ただし、費用負担が大きく、管理組合の管理に対する主体性も薄くなる点がデメリットとなります。

なお、近年に新築される分譲マンションでは、全部委託方式をさらに一歩進めた「第三者管理者方式」という管理方式も登場しています。

第三者管理者方式とは、管理業者が管理者になる方式のことであり、理事会機能も委託する管理方式のことです。

理事会自体がないことから、分譲マンションを購入しても理事会の役員にならなくてよいというメリットがあります。

近年は全部委託方式の分譲マンションでも、理事会のなり手がいないという問題が発生してきており、今後は第三者管理者方式も増えていく可能性があります。

一部委託方式

一部委託方式とは、マンション管理業務の一部を管理会社に委託する方式のことです。
自主管理方式と全部委託方式の中間の概念に相当する管理方式となります。

一部委託方式は、全部委託方式に比べると管理費用を抑えられる点がメリットです。

ただし、自主管理よりは費用が発生し、自主管理している部分は理事が交代すると管理の質が変わる可能性がある点がデメリットとなります。

マンションの自主管理で住民が行う業務

マンションの自主管理で住民が行う業務

この章では、自主管理で住民(組合員)が行う業務について解説します。

事務管理業務

事務管理業務とは、出納や会計報告、管理費・積立金滞納のチェック等の会計業務、理事会、総会の支援のことです。

事務管理業務では、組合員からの管理費および修繕積立金の徴収がメインの業務となります。

自主管理では事務管理業務を理事が自ら行うことから、管理費および修繕積立金の滞納者がすぐに把握できる点がメリットです。

滞納が発生した場合の督促業務も迅速に行うことができます。

一方で、会計担当者には一定の会計知識が必要となる点がデメリットです。
会計ソフト等も使う必要があり、会計知識のない人が会計担当になると業務の質が落ちることもあります。

管理員業務

管理員業務とは、訪問者の受付、設備等の点検、ゴミ出しの管理等の日常業務のことです。

管理員業務は、内容によって理事が自ら行う場合もありますし、外部の業者に委託することもあります。

例えば、ゴミ出しの管理等は、理事が交代制で行うことも多いです。

一方で、設備等の点検に関しては、外部の専門業者に委託します。
外部の専門業者に委託する場合は、専門業者の選定を管理組合が自ら行い、契約も締結することが必要です。

清掃業務

清掃業務とは、日常清掃の他、定期清掃(定期的に行う高圧洗浄等)、特別清掃(日常清掃や定期清掃では落としきれないときに行う随時の清掃)のことを指します。

自主管理方式では、清掃業務も外部の業者に委託することが多いです。

清掃業務を外部の清掃業者に委託する場合は、清掃業者の選定を管理組合が自ら行い、契約も締結する必要があります。

建物維持管理業務

建物維持管理業務とは、エレベーターや電気、消防、機械式駐車場等の設備の点検業務のことを指します。

自主管理方式では、建物維持管理業務も外部の業者に委託することが多いです。

建物維持管理業務を外部の専門業者に委託する場合は、専門業者の選定を管理組合が自ら行い、契約も締結する必要があります。

マンションを自主管理するメリット

マンションを自主管理するメリット

この章では、マンションを自主管理するメリットについて解説します。

管理費用が安くなる

自主管理では、管理費用が安くなる点がメリットです。

管理業者への委託費用を削減することができます。

また、専門業者を選定する際も、自分たちで相見積もりを取って業者を選ぶため、費用の透明性を確保しやすいです。

外部に委託する作業の内容も自分たちで判断することができ、無駄な業務や過剰な内容を発注しなくて済みます。

住民の管理意識が高まりやすい

自主管理方式は、管理を自分たちで考えながら行うため、住民(組合員)の管理意識が高まりやすい点がメリットです。

中には、理事に就任した後、自分で建物や設備の勉強をして知識を向上させていく方もいます。

また、自主管理方式は住民主導で動くことから、適切な大規模修繕も行われやすいです。

例えば、高齢化によって車椅子を使う住民が増えてきたため、「あそこの段差にスロープを作ろう」といったことも迅速に実行されます。

戸建てであれば、自分の家は自分が管理することは当然です。
自主管理方式の物件は、住民がマンションに対して戸建てに近い感覚を持っており、不便な部分があれば自主的に改善していくケースが多く見られます。

住民同士の交流が活発になる

自主管理方式のマンションは、住民同士の交流が活発になることも多いです。

築年数が古く、戸数の多いマンションではマンション内に1つの自治会が成立している物件もあります。

このようなマンションでは、管理組合の理事会と自治会の2つの組織が有機的に結合しており、マンション内で納涼祭りや防災訓練、同好会も行われています。

住民同士が顔見知りとなっており、単身高齢者の孤独死も早期に発見されやすいです。
また、マンション内で特殊詐欺などの被害が発生すれば情報共有がなされ、防犯対策も行われます。

マンションを自主管理するデメリット

マンションを自主管理するデメリット

この章では、マンションを自主管理するデメリットについて解説します。

理事の負担が重い

自主管理方式のマンションは、理事の負担が重いことがデメリットです。
設備や建物等の管理で専門知識が必要となる分野では、なり手が見つからず、理事が固定化し、業務が属人化されてしまうことがあります。

業務が属人化されると、業務を他の人に引き継げず、ますますなり手が見つからなくなります。

また、理事が長年固定化することで、業者への発注が不正に行われることもあります。

管理不足によるトラブルが起こりやすい

自主管理方式では知識が不十分な人が理事になると、管理不足によるトラブルが起こりやすいという点もデメリットです。

パソコンが使えない人が長年理事になっていると、手書きの業務がそのまま引き継がれてしまい、非効率な業務となって管理が不十分となることもあります。

売却時の評価が下がる

自主管理方式のマンションは売却時の評価が下がる可能性があることもデメリットです。

自主管理方式は、一部のしっかりと運営されているマンションを除いて、入居後の手間や管理不全を不安視されてしまい、購入検討者から敬遠されやすい傾向があります。

自主管理から管理委託に変更するメリット・デメリット

自主管理から管理委託に変更するメリット・デメリット

自主管理は理事の負担が重いことから、管理委託へ変更するケースもあります。
この章では、自主管理から管理委託に変更するメリットとデメリットを紹介します。

メリット

自主管理から管理委託に変更するメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 理事の負担が軽減される。
  • 管理組合の理事が交代しても管理の質が基本的に変わらない。
  • 知識やノウハウが豊富な管理会社に委託することで、適切な管理を期待できる。

デメリット

自主管理から管理委託に変更するデメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 管理費の負担が大きくなる。
  • 管理費等の滞納者への督促業務の初動が遅くなる。
  • 委託した管理業者の仕事ぶりに不満が生じることもある。

自主管理マンションを選ぶ際の注意点

自主管理マンションを選ぶ際の注意点

自主管理方式が採用されているマンションは、築年数が古い物件や戸数の少ない物件が多いです。

築年数の古い物件は、修繕積立金が高くなっているケースがあります。
一方で戸数の少ない物件は、管理費が割高となっているケースが多いです。

戸数が少なければ、自主管理されていても、各戸が負担する管理費はそもそも割高となっています。

そのため、自主管理方式の物件は修繕積立金や管理費が高い傾向にあるので、金額をしっかり確認することが注意点です。

その他としては、自主管理の物件は購入した後、自分に業務負担の重い理事が回ってくる可能性があります。

戸数が少なければ高頻度に理事が回ってくる可能性が高くなり、住んだ後の負担は重いです。

業務負担の重い理事をやりたくない場合には、購入を見送るといった選択も考えられます。

この記事のポイント

マンションの自主管理で住民が行う業務とは?

自主管理で住民(組合員)が行う業務のひとつに、事務管理業務があります。
事務管理業務とは、出納や会計報告、管理費・積立金滞納のチェック等の会計業務、理事会、総会の支援のことです。
事務管理業務では、組合員からの管理費および修繕積立金の徴収がメインの業務となります。

詳しくは「マンションの自主管理で住民が行う業務」をご覧ください。

マンションを自主管理から管理委託に変更するメリットは?

自主管理から管理委託に変更するメリットには、以下のような点が挙げられます。

  1. 理事の負担が軽減される。
  2. 管理組合の理事が交代しても管理の質が基本的に変わらない。
  3. 知識やノウハウが豊富な管理会社に委託することで、適切な管理を期待できる。

詳しくは「自主管理から管理委託に変更するメリット・デメリット」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

近年はマンション住民の高齢化や空室化、賃貸化によって全部委託方式でも、理事会の存続が危ぶまれる物件が増えています。第三者管理者方式を採用するマンションも増えてきており、理事の負担が重い自主管理方式はますます減少していくことが予想されます。管理方式を変更する際は、理事会の持続可能性も考慮したうえでさまざまな方式の中から最適なものを選択することが望ましいといえます。

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