ざっくり要約!
- 古い家を売る方法はひとつではない。状況や状態に合った売り方を選ぶことが大切
- 独断で売り方を検討するのではなく、現状のまま不動産会社に相談しよう
築年数が30年を超えるような古い家は、築浅の家と比べると需要が低いことから、売り方には工夫が必要です。売り方もひとつでなく、状況や状態によって向き・不向きがあります。
本記事では、古い家の売却を検討している方のために、売る方法や注意点をわかりやすく解説します。
記事サマリー
「古い家」とはどれくらいの築年数を指す?
「古い家」に明確な定義はありません。しかし、法定耐用年数を超えた住まいは「古い家」と称される傾向にあります。住宅の法定耐用年数は、以下のとおりです。
| 構造 | 用途 | 耐用年数 |
| 木造 | 住宅 | 22年 |
| 事務所 | 24年 | |
| 鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造 | 住宅 | 47年 |
| 事務所 | 50年 | |
| 鉄骨造(骨格材4ⅿm超) | 住宅 | 34年 |
| 事務所 | 38年 | |
| 鉄骨造(骨格材3ⅿm超4ⅿⅿ以下) | 住宅 | 27年 |
| 事務所 | 30年 | |
| 鉄骨造(骨格材3ⅿm以下) | 住宅 | 19年 |
| 事務所 | 22年 |
木造住宅であれば「22年」が法定耐用年数となるわけですが、そもそも法定耐用年数とは税務上の減価償却の基準であって、これを超えた場合に住めなくなってしまうわけではありません。
| ・「耐用年数」に関する記事はこちら 木造住宅の耐用年数は33年?減価償却や査定との関連を解説 |
近年は住宅の性能も向上していることもあり、築22年の木造住宅であっても必ずしも古いと感じられるわけではありません。「古い家」の目安としては、木造住宅は築30年程度を超えた物件、マンションは築40年程度を超えた物件と考えておくと良いでしょう。
古い家を所有し続けるリスク
古い家を所有し続けることには、次のようなリスクがあります。
資産価値が低下する
「古い家」は明確に定義されていないとはいえ、築30年、40年を超えてくると建材や設備の劣化が目立ってきます。需要も基本的には経年につれて低下していくため、資産価値が下がっていくと考えておきましょう。
維持・管理に費用がかかる
古い家を適切に維持・管理しようとすると、それなりの費用がかかります。一戸建ては、築20年頃まではメンテナンスや補修などで維持できますが、築30年を超えると外壁や屋根、内装材、設備などの交換が必要になってきます。
また、マンションも「修繕費用は積み立てているから安心」とは限りません。マンションも高経年化するにつれて、必要な修繕費用は上がっていきます。それに伴い、毎月、管理組合に徴収される管理費や修繕積立金が増える可能性もあります。
「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される
適切な維持・管理を怠ると、一戸建ての空き家は空き家対策特別措置法に基づき、自治体から「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定される可能性があります。特定空き家や管理不全空き家に指定された状態で勧告を受けると、空き家が建つ土地が「住宅用地の特例」から除外され、固定資産税や都市計画税が跳ね上がるおそれがあります。
■住宅用地の特例
| 固定資産税課税標準額 | 都市計画税課税標準額 | |
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 1/6 | 1/3 |
| 一般住宅用地(200㎡超の部分) | 1/3 | 2/3 |
| ・「空き家対策特別措置法」に関する記事はこちら 「空き家対策特別措置法(空き家法)」改正が決定!「管理不全空き家」も固定資産税減額解除の対象に |

古い家を売る10の方法

古い家を売る方法は、ひとつではありません。それぞれにメリット・デメリットや向き不向きがあるため、家の状態や売主の意向を踏まえて売り方を検討しましょう。
1.そのまま売却する
古い家も、解体やリフォームなどせず現状のまま売却することができます。ただし、古い家は購入後に修繕や解体をしなければならないことも多いため、築浅の家と比べるとどうしても需要は下がってしまいます。
10の売却の方法のうち、最も手間はかかりますが、売れる保証はありません。また、売れたとしても、売却に半年や1年、それ以上の期間がかかる可能性もあります。
2.「古家付き土地」として売却する
古い一戸建ては「古家付き土地」として売却することも可能です。土地として売ることで、新築を目的としている人や土地活用を検討している人もターゲットに加えることができます。
ただし、一戸建てではなく土地として販売するため、基本的に建物は評価されません。場合によっては、一戸建てとして売るより価格が下がってしまう可能性があります。
3.家を解体して売却する
新築や土地活用を検討している人にとっては、建物が現存していることがマイナスになる可能性があるため、家を解体したほうが需要が高まる可能性があります。ただし、家の解体には100万円以上の費用がかかるため、慎重に判断しましょう。
| ・「家の解体」に関する記事はこちら 一戸建ての解体費用はどのくらい?解体の際の注意点も解説 空き家の解体費用はどれくらい?費用を抑えるコツや払えない場合の対処法を解説 |
4. 「更地渡し」で売却する
家を解体した後に販売活動をするのではなく「更地」として引き渡すことを前提に売却するのも一案です。更地にすることは条件や状況によっては有効な売却手段であるものの、家を解体すると前述した「住宅用地の特例」の適用がなくなり、固定資産税や都市計画税は実質的に増税してしまいます。
建物を解体して更地にした後に長期間売れないことを避けるには「更地渡し」という引き渡し方法が有効です。更地渡しとは、売買契約後に売主が建物を解体し、更地にして買主に引き渡すことを指します。所有権がある内に更地になる期間を最小限に留めることができるため、増税を気にすることなく売却できます。
5.建物をリフォームして売却する
家をリフォームして売却するのもひとつの選択肢です。リフォーム済み物件は、買主にとって「すぐに住める家」として魅力的に映りやすく、築年数が古くても高値で売れる可能性があります。また、購入後に改修する必要がないため、買主にとっても負担が少なく、早期の成約につながりやすくなります。
一方、リフォームには費用と時間がかかるため、費用対効果を十分に見極めることが重要です。
| ・「リフォーム」に関する記事はこちら 築40年の家を好条件で売るには?リフォームをしなければ売れないのか |
6.「インスペクション」や「瑕疵保険の付保」をして売却する
不動産の付加価値のひとつとして「インスペクション」の実施や「瑕疵(かし)保険」の付保が挙げられます。
インスペクションとは、中古住宅を売買する前の状況調査を指します。調査は第三者のプロが行うため、中立的かつ専門的に建物の状況を買主に把握してもらうことができます。
| ・「インスペクション」に関する記事はこちら インスペクションとは?メリットや費用、注意点、自治体の補助金を解説 |
一方、既存住宅向けの瑕疵保険は、物件を売買し、引き渡した後に基本構造部分などの不具合などを対象とした保険です。インスペクションは壁や床を破壊して行う検査ではないため、インスペクションをすれば不具合が起きないというものではありません。瑕疵保険まで付保することで買主の大きな安心となるため、不動産が早く、高く売れる可能性が高まります。
| ・「瑕疵保険」に関する記事はこちら 住宅の瑕疵保険とは?新築・中古・リフォームの保険内容の違いを解説 |
瑕疵保険は原則的に新耐震基準で建てられた住宅にしか付保できませんが、1981年5月以前に建築確認を受けた旧耐震基準の住宅も、一定の耐震性を有していれば付保が可能な場合もあります。また、買主が購入後に耐震改修などを実施した場合も対象となる保険も一部存在します。
ただし、家屋の解体を前提としている買主にとっては、インスペクションも瑕疵保険も付加価値にはなりません。家の状態や需要を考慮しながら実施を検討しましょう。
| ・「耐震基準」に関する記事はこちら 旧耐震と新耐震の違いは?地震発生時のリスクも解説 |
8.不動産会社に買い取ってもらう
家は不動産会社の「仲介」によって売却するのが一般的ですが、不動産会社に買い取ってもらうこともできます。買主が一般消費者ではないため、資金調達や購入の判断が速く、「仲介」に必要な仲介手数料が不要といったメリットがあります。
ただし、どのような物件でも買い取ってもらえるわけではありません。宅建業者は買い取った物件を修繕・リフォームし、再販して利益を得ることを目的にしています。利益が得られないと判断する物件は、宅建業者であっても買い取ることはありません。
また、買取価格は仲介で売却した場合の7〜8割ほどになるのが一般的です。以上の特徴から「仲介では売れなかった」「できる限り早く売りたい」というケースや意向がある方に適した売却方法といえるでしょう。

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| ・「買取と仲介の違い」に関する記事はこちら 不動産売却の仲介と買取の違いは?物件ごとの向き・不向きも解説 |
9.「売却保証」をつけて売却する
「売却保証」とは、一定期間、売れなかった場合に限って買取で売却するという方法です。一定の期間中は「仲介」による売却を目指します。
最終的に「買取」によって売ることになる可能性はあるものの「仲介」による販売活動も挟むため、高額で売れる可能性もあるというのが売却保証の特徴です。売却保証をつけることができれば「売れない」ことを避けられるため、住み替えによる売却、あるいは売りたい期日がある方に向いている売却方法です。

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10.空き家バンクに登録する
空き家が多いエリアや過疎化が進んでいるエリアの古い家は、売り方を工夫しても、力量のある不動産会社に依頼したとしても、売却が困難なケースがあります。
地方自治体では、こうした古い空き家を「空き家バンク」に登録し、買いたい人とマッチングする政策を行っています。自治体によっては、不動産会社と媒介契約中の物件は登録できないなど細かな規定があるため、まずは自治体のホームページなどで情報を集めてみましょう。
古い家を好条件で売るためのコツとは?
決して需要が高いとはいえない古い家を好条件で売るには、次のようなコツがあります。
相場を把握して適正な価格で売り出す
古い家に限ったことではありませんが、不動産を好条件で売るには、まず「適正価格」を知る必要があります。たとえば、市場価値が2,000万円の不動産を1,500万円しかないと思い込んでいたら、機会損失につながりかねません。一方、2,000万円の不動産の価値を2,500万円と思い込んでしまっている場合は、売り出し価格が高すぎて売れない可能性が高くなります。
市場価値より高く売りたいとしても、まずは適正な価格を知ることが大切です。市場価値より高く売るなら、それなりに時間をかけるか「付加価値」を付ける必要があります。
独断でのリフォーム・解体は避けるべき
リフォームや解体は古い家を売るための有効な手段のひとつですが、不動産会社に相談する前に独断でリフォーム・解体することは避けるべきです。リフォームや解体によって、早く、高く売れる可能性はあるものの、施策にかけた費用の分だけ高く売れるとは限りません。
また、リフォームや解体をすることで、逆に買い手を狭めてしまうことにもなりかねません。不動産会社に相談した結果、リフォームや解体をしたほうが良いという判断になる可能性はありますが、まずは手を加えない状態で査定を依頼しましょう。
補助金制度を活用する
インスペクションの実施や建物の解体に補助金が出る自治体もあります。補助金には上限がありますが、一部負担してもらったうえで物件の魅力が高まるのであれば使わない手はありません。
インスペクションや解体への補助金の多くは、古い空き家に対するものです。家が建つ自治体名とともに「空き家 解体」「空き家 インスペクション」といったキーワードで検索すれば、情報にたどり着けるはずです。

古い家の売却で使える可能性のある税金控除特例
古い家であっても、売値次第では譲渡所得(売却益)が発生し、売却後に所得税や住民税が課される可能性があります。しかし、譲渡所得を控除できる特例も少なからずあります。
とくに購入当時の価格がわからない古い家は、譲渡所得が高くなってしまいがちです。あらかじめどのような控除特例が適用できるか、確認しておきましょう。
| 状況 | 特例 |
| 住んでいた自宅を売却するときに 利用できる税金控除特例 | 居住用財産の3000万円特別控除 |
| 長期所有における軽減税率の特例 | |
| 自宅売却で譲渡損失が出たときに 利用できる税金控除特例 | 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 |
| マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 | |
| 相続した実家を売却するときに 利用できる税金控除特例 | 相続空き家の3000万円特別控除 |
| 取得費加算の特例 | |
| 平成21年・平成22年に取得した土地を売却したときに利用できる税金控除特例 | 1000万円の特別控除 |
| 収容などにより土地を売却したときに 利用できる税金控除特例 | 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例 |
| 収容等の場合の5000万円特別控除 |
| ・「控除特例」に関する記事はこちら 土地売却時に受けられる9つの税金控除特例 |
売れない古い家はどうすればいい?
古い家の需要は、決して高いとはいえません。都市部や駅近であれば建物が古くても土地自体に魅力がありますが、郊外や駅から歩けない距離にある古い家は、思うような価格や期間で売れない可能性もあります。なかなか売れない場合は、次のような手段を講じてみましょう。
売り方を変えてみる
ひとつの目安ですが、半年など一定期間経っても反響が少ない、あるいは内見予約が入らない場合は、売り方を変えてみるのも一案です。ただし、物件の条件や状態、反響によって適切な売却方法は変わってきます。
たとえば、築40年を超える一戸建ては建物が評価されない可能性が高いため、リフォームによる効果は限定的かもしれません。一方、築20年程度でまだまだ住める状態であれば、リフォームが効果的な施策となる可能性があります。
一概に「リフォームすれば需要が上がる」「解体すれば売れやすくなる」というわけではありません。これらの施策を講じるには一定の費用もかかるため、不動産会社に相談しながら慎重に判断しましょう。
不動産会社を変更する
選択肢のひとつとして、不動産会社を変えるという方法もあります。ただ、古い家が売れない要因が、必ずしも不動産会社にあるとは限りません。需要が低い家をなんとか売ろうと尽力してくれている不動産会社であれば、変更する必要はありません。
一方で、「媒介契約を締結した後、便宜的な定期連絡しかしてこない」「売ろうとする意欲、主流が感じられない」といった場合は、不動産会社の変更も視野に入れて検討してみましょう。
ポイントを押さえて古い家の売却を成功させよう
古い家は売却が難しいケースが多いですが、売り方次第で売却は可能です。適切な売却方法は、物件の状況や状態によって異なるため、まずは現状のまま不動産会社に相談しましょう。相談する際には、いつまでにいくらで売りたいかという希望も明確に伝えることが大切です。
この記事のポイント
- 古い家を売る方法とは?
古い家を売る方法はひとつではありません。「そのまま売却する」「古家付き土地として売却」するなど、さまざまな手段があります。
詳しくは「古い家を売る10の方法」をご覧ください。
- 古い家を売るコツとは?
相場を把握して適正な価格で売り出すことが大切です。また、どんなに劣化していたとしても独断でのリフォームや解体は避けるべきでしょう。また、インスペクションや解体には助成金が出る可能性もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。
詳しくは「古い家を好条件で売るためのコツとは?」をご覧ください。
- 古い家を売ったときの税金は節税できる?
居住していた場合も相続した場合も、3,000万円特別控除などが利用できる場合があります。
詳しくは「古い家の売却で使える可能性のある税金控除特例」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
古い家の需要は決して高くありませんが、全国的に中古住宅の築年数は上がっており、新築住宅の供給数は減少傾向にあることから、今後は古い家を改修して住むことは、主流になっていくものと考えられます。物件の築年数は変えることができませんが、付加価値を付けたり、見せ方を工夫したりすることは可能です。

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