ざっくり要約!
- 河川法とは、外水氾濫の対策のために定められた法律
- 河川保全区域のような洪水リスクの高い土地は、資産価値が下落する懸念も理解しておく
災害の多い日本には、自然災害を防ぐためのさまざまな法律が存在します。河川法も自然災害に関連する法律であり、水害関連法令のひとつです。
河川は都市部に流れていることも多く、人々の生活拠点の近くに存在する自然です。
そのため、河川の氾濫を防止する目的の河川法は、都市部の人にも影響を与える法律となっています。
河川法とはどのような法律なのでしょうか。この記事では、「河川法」について解説します。
記事サマリー
河川法とはどのような法律?

はじめに河川法がどのような法律なのか、詳しくみていきましょう。
河川法とは
河川法とは、河川を適正に利用し、流水の正常な機能を維持し、河川環境の整備と保全を行うことで公共の安全を保持することを目的とした法律のことです。
河川を公共物として捉え、国や都道府県といった河川の管理者が適切な保全と管理をしなければならないことを定めた法律となります。
なお、河川法は水害関連法令のひとつです。水害には洪水や津波、高潮等がありますが、河川法が対象としている水害は大雨が降った際に生じる「洪水」になります。
洪水には、外水氾濫と内水氾濫の2種類があります。
外水氾濫とは、大雨の流水が人工の堤防を越え、あるいは堤防を決壊させて河川水が河道外に溢れ出る洪水形態のことです。
外水氾濫は、家屋の倒壊や流出等の大規模な被害を引き起こすことがあります。
一方の内水氾濫とは、その場所に降った雨水や周囲から流れ込んできた流出水がはけきらずに溜まる氾濫形態のことです。
内水氾濫は、都市部において近年リスクの高まっている洪水となっています。
まとめると、河川法は外水氾濫の対策のために定められた法律であり、ダム等のハード面を整備することで、外水氾濫の予防を目的としています。
河川法に違反した場合の罰則
河川法では、一部の地域において工作物の新築や除却、土地の掘削、盛土、切土等の行為に規制があります。
これらの規制に違反した場合、重いものであれば1年以下の懲役または50万円以下の罰金、軽いものであれば20万円以下の罰金といった罰則が存在します。
河川法が適用される川とされない川
河川は、一級河川、二級河川、準用河川、普通河川の4つに分類され、種類により河川法が適用されるかどうかが異なります。
一級河川とは、国が管理する大規模な河川のことです。
例えば、信濃川や利根川といった大きな河川が一級河川に該当します。
二級河川とは、都道府県が管理する河川のことです。
例えば、東京都の目黒川や兵庫県西宮市に流れる夙川が二級河川に該当します。
これらの一級河川と二級河川は、河川法が適用される河川です。
また、準用河川とは市町村が管理する河川であり、一級河川と二級河川以外の河川で、河川法の一部を準用する河川のことです。
普通河川とは、一級河川と二級河川、準用河川以外の河川のことです。
普通河川は小さな水路や小川が該当し、河川法は適用されません。
河川法で許可が必要な行為【区域別】

河川法は、一部の地域に工作物の新築や除却、土地の掘削、盛土、切土等の行為に制限をかけている法律です。
そのため、河川法はどのような地域に適用されるかの理解が欠かせません。
この章では、河川法が適用される地域と規制の内容について解説します。

河川区域
河川区域とは、堤防敷の内側になる区域のことです。
河川区域は、以下の3つに分離されます。
イ.自然流水の通路となる部分(1号地)
河川の流水が継続して存する土地および地形、草木の生茂の状況その他その状況が河川の流水が継続して存する土地に類する状況を呈している土地の区域。ただし、河岸の土地を含み、洪水その他の異常な天然現象により一時的に当該状況を呈している土地を除く。
ロ.堤防その他河川管理施設の敷地(2号地)
河川管理施設の敷地である土地の区域であり、いわゆる堤防敷が該当する。
ハ.イおよびロの部分に挟まれ河川管理に必要であると認められる部分(3号地)
堤外の土地の区域のうち、自然流水の通路となる部分区域と一体として管理を行う必要があるものとして河川管理者が指定した区域
河川区域は、川から堤防までの空間を指すため、いわゆる人が建物を建てることができない地域です。
河川区域では、主に以下の制限が課せられています。
| 制限項目 | 河川管理者の許可を必要とする行為 |
|---|---|
| 占用 | 河川区域内の土地を占用 |
| 土石等の採取 | 土石(砂を含む)を採取 |
| 工作物の新築等 | 工作物を新築し、改築し、または除却 |
| 土地の掘削等 | 土地の掘削、盛土もしくは切土その他土地の形状を変更する行為または竹木の植栽や伐採等の行為 |
河川管理者とは管理に関する権利を持つものであり、一級河川は国土交通大臣、二級河川は都道府県知事、準用河川は市町村長のことです。
河川保全区域
河川保全区域とは、堤防敷の外側にある区域のことです。
河川保全区域は河川区域に隣接する区域であり、原則として河川区域の境界から50メートル以内の敷地となります。
ただし、地形や地質等の状況により、やむを得ないと認められる場合には、例外として河川区域の境界から50メートルを超えて指定される場合もあります。
河川保全区域では、主に以下の制限が課せられています。
| 制限項目 | 河川管理者の許可を必要とする行為 |
|---|---|
| 工作物の新築等 | 工作物を新築、または改築 |
| 土地の掘削等 | 土地の掘削、盛土もしくは切土その他土地の形状を変更する行為 |
河川区域は基本的に一般の人が所有できない土地ですが、河川保全区域は一般の人が所有できる土地である点が特徴です。
そのため、一般の方が河川保全区域の土地を購入する可能性もあります。
河川保全区域の土地を購入して建物を建てる場合には、河川管理者の許可が必要です。
河川予定地
河川予定地とは、河川工事を円滑に施工するため、また、施工の損失を防止するために河川管理者が指定した土地のことです。
河川工事によって、新たに河川区域になる土地が河川予定地に該当します。
河川予定地では、主に以下の制限が課せられています。
| 制限項目 | 河川管理者の許可を必要とする行為 |
|---|---|
| 工作物の新築等 | 工作物を新築、または改築 |
| 土地の掘削等 | 土地の掘削、盛土もしくは切土その他土地の形状を変更する行為 |
河川立体区域
河川立体区域とは、河川の地下または空間について一定の範囲で規制を定めた立体的な区域のことです。
河川立体区域では、主に以下の制限が課せられています。
| 制限項目 | 河川管理者の許可を必要とする行為 |
|---|---|
| 工作物の新築等 | 工作物を新築し、改築し、または除却 |
| 土地の掘削等 | 土地の掘削、盛土もしくは切土その他土地の形状を変更する行為 |
| 積載 | 載荷重が1平米につき政令で定める重量以上の土石その他の物件の集積をする行為 |
河川法が影響する土地の購入時の注意点

一般の人でも、河川保全区域のような河川法が影響する土地を購入する可能性はあります。
この章では、河川法が影響する土地の購入時の注意点について解説します。
水害リスクがある
河川法が影響する土地は、水害リスクが高い点が注意点です。
河川保全区域の一部は、河川の中でも流路を安定させるために重要な区間が指定される傾向があります。
例えば、河川が蛇行している部分や洗堀が懸念される場所が、河川保全区域に指定されやすいです。
洗堀とは、流水によって海岸または河床などが削り崩される浸食作用のことを指します。
洪水の被害が拡大しやすい場所でもあることから、できれば河川保全区域は購入を見送った方が無難です。
| ・「内水氾濫」に関する記事はこちら 内水氾濫とは?外水氾濫との違いや事前にできる対策、避難時の持ち物も解説 |
住宅の建築や土地の形状変更で制限がかかる場合がある
河川保全区域では、住宅の建築や土地の形状変更において河川管理者の許可が必要です。
許可が受けられるかどうかは、ケースバイケースになります。
一般的に堤防近くで基礎を掘削すると堤防が弱くなるため、河川保全区域では重量建築物は建てられない傾向があります。
河川区域を占有する場合は使用料が発生する
河川区域を占有する場合は、使用料が発生します。
河川区域の占用するケースとしては、河川敷でバーベキュー広場を提供する場合や、船舶の係留施設やオープンカフェ等を営業するケースが挙げられます。
水を利用したい場合は水利権を確認する
水利権とは、河川の流水を占用する権利のことです。
流水の利用には、水力発電やかんがい、水道、工業用水、鉱業用水、養魚、し尿処理等が挙げられます。
河川の水を利用する場合には、水利権を得るための許可が必要です。
資産価値への影響を理解しておく
近年は線状降水帯や台風による大規模な洪水災害が頻発しており、自然災害に対する関心が以前よりも高まってきました。
不動産会社が物件を仲介する際は、重要事項説明においてハザードマップの説明が義務化されたため、洪水リスクが高い土地は今後資産価値が下がる可能性もあります。
そのため、河川保全区域のような洪水リスクの高い土地は、資産価値が下落する懸念も理解しておくことが望ましいです。
| ・「ハザードマップの見方」に関する記事はこちら ハザードマップの見方を解説!種類や入手方法も確認して洪水や地震に備えよう |
河川法の影響を知りたいときの相談先

河川法に関しては、最終的には国や都道府県等の河川管理者に相談することが適切です。
しかしながら、一般の人にとって河川管理者に規制の内容を確認するのはハードルが高いといえます。
そのため、まずは不動産会社に規制の内容について確認することをおすすめします。
まとめ
以上、河川法について解説してきました。
河川法とは、洪水のうち、外水氾濫を防止することを目的とした法律です。
大きな河川に近い場所の土地は河川法の規制がかかっている可能性があり、一般の人でも河川保全区域内の土地は購入する可能性があります。
河川法が影響する土地は、水害リスクが高く、住宅の建築や土地の形状変更に制限がかかる点に注意が必要です。
河川法の影響を受ける土地を検討する際は、参考にして頂ければと思います。
この記事のポイント
- 河川法とはどのような法律?
河川法は外水氾濫の対策のために定められた法律であり、ダム等のハード面を整備することで、外水氾濫の予防を目的としています。
詳しくは「河川法とはどのような法律?」をご覧ください。
- 河川法で許可が必要な行為は?
河川法で許可が必要な行為はさまざまですが、例えば河川区域は川から堤防までの空間を指し、土地の占用、土石等の採取、工作物の新築等、土地の掘削等が、河川管理者の許可を必要とする行為に該当します。
詳しくは「河川法で許可が必要な行為【区域別】」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
一部の河川では、堤防が高規格堤防(いわゆるスーパー堤防)となっている場合があります。スーパー堤防とは、堤防の市街地側に盛土を行い、幅を広げた緩やかな台地状にした堤防のことです。利根川や江戸川、玉川、荒川、淀川等の一部にスーパー堤防が整備されています。
スーパー堤防となっている場所は、堤防の上でも通常の土地利用を行うことが可能です。またスーパー堤防は、地震にも強いという特徴があります。河川の近くの土地を購入する場合には、スーパー堤防が整備されている土地か否かも確認することがポイントとなります。

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