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間口とは何か?間口が狭い家を建てるメリット・デメリットを専門家が解説

執筆者プロフィール

齋藤進一
建築士

やすらぎ介護福祉設計 代表
2004年から「ワンストップ型」介護福祉設計をめざし、各個人の障がいの症状に合わせた住宅設計・施工監理をはじめ、子育て世帯が安心して暮らせるユニバーサルな視点でのバリアフリーで、多くの人に安心とやすらぎを提供している。

住宅建築をする際、建物の階数や居室の配置・住宅設備機器の仕様など建築物自体に意識が行きがちですが、先ず基本となるものが「土地(敷地)の形状」です。
これから住宅を検討されている方、土地(敷地)購入を検討されている方に向け、「間口」(土地購入におけるメリット・デメリット)について解説いたします。

「間口」の意味とは何か?

「間口」とは土地(敷地)が道路(公道)に接している部分を指します。
住宅を建築・購入する際は土地(敷地)の形状や大きさに意識がいきがちですが、土地(敷地)形状で建築を可能にする配置やデザインが決まってしまいます。
土地形状の把握のため、土地(敷地)を購入する際に確認したほうがよい重要なポイントとして、接道の箇所数と間口の幅が挙げられます。

まず、間口を考える際に敷地にはどのような形状(接道)パターンがあるか確認しましょう。

一般的な四角の敷地に対し、
① 1辺が接道 3辺が隣地に接する敷地
大半の住宅はこのケースで1辺全体が接道していれば問題ありませんが、敷地が奥まって敷地内通路が接道するケース(以下、旗竿地)があります。
旗竿地の問題点については後で解説いたします。

② 2辺が接道 2辺が隣地に接する敷地
角地のケースと敷地を道路に挟まれたケースがあります。
2以上の道路に接道している場合、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)が緩和されるみなし規定があるので購入者の人気も高くなります。

③ 3辺が接道 1辺が隣地に接する敷地
面積の広い敷地においては、3辺が道路という恵まれたケースもあります。

間口次第では建築不可能な土地に

土地(敷地)に新たに建築する場合、建築基準法では接道義務(建築基準法第43条1項)があり、接道幅(間口の幅)が道路(4メートル以上の公道)に2メートル以上なければなりません。

特に「旗竿地」において間口の幅は重要になり、2メートル未満の敷地では建築不可能となりますので購入時は要注意です。

下図のような特殊事例においても基本的には2メートル以上なければ接道していると言えない敷地になります。

画像引用:建築基準法の取り扱いについて 第3章集団規程法43条|世田谷区

「間口の狭い土地」に家を建てる場合

「間口が狭い」というだけで敬遠される方もいるかもしれませんが、実際どのようなデメリットがあるのでしょうか。

狭い間口で想定される影響

旗竿地のような特殊な敷地形状は、住まい手の好みに左右されやすく選ばれにくい点から土地の相場が安い分、売却時もあまり期待できません。

① 日当たりが悪い
敷地面積にもよりますが、旗竿地は敷地の3~4方向を近隣住宅に囲まれるケースが大半なので、近隣住宅の位置や高さにより日当たりの影響を受けます。
用途地域(建築可能な種類が決まっている)によっては、階数制限があって均一な高さの地域もあれば、マンションなど高い建物が建設されてしまうケースもあります。
将来、近隣にどのような高さまで建築されるかを想定し、建物の配置や窓開口の位置を検討されることをおすすめします。

② 施工費用の増加
建築工事において間口が狭いと敷地内で作業する「建設重機」が入らないという問題が出てまいります。

(基礎・地業工事)

  • 杭打ち機 ⇒ 杭を設置する
  • バックホウ パワーショベル ⇒ 敷地の土を調整する
  • コンクリート圧送ポンプ車 ミキサー車 ⇒ 基礎のコンクリートを施工する

(建て方工事)

  • クレーン車 ⇒ 柱・梁を組み立てる(搬入)
  • 4トンユニック車など ⇒ 材料の搬入・搬出(特に仮設足場のパイプや内装材搬入が大変)

(電気・設備工事)

  • 給排水経路や電力・電話配線距離が長くなることで、距離に応じた施工費の増加や排水管勾配を確保するため住宅の高さを調整する費用

などが挙げられ、サイズの小さい重機での作業内容の増加や手運び・手作業へ替わる分だけ施工費用も上がります。(価格は小型重機の種類や作業人数、施工内容、地域特性によって変わります)

③ 駐車場問題
旗竿地でも敷地が広く、マイカー用の駐車場を敷地内や家屋内へ停められれば良いですが、大半は敷地内通路に縦列駐車をすることになり、駐車に対するストレスと通行時の幅に対するストレスを毎日感じることになります。
最近はカーシェアやレンタカーの普及からマイカーを持たないという選択肢も1つです。

④ 圧迫感がある
旗竿地の狭小な土地においては4方面を近隣住宅に囲まれることになり得ます。
ただ、基本的に民法では、建築物は敷地境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない規定があります。(民法第234条第1項)
隣家まで50センチメートル、自邸50センチメートルで計1メートル離れたとしても、窓の位置が一緒だった場合、カーテンを開けて暮らせるでしょうか。
また、隣家の「キッチンの排気ダクト」位置からの料理の臭いやエコキュート・エアコンなど室外機の機械音の影響への考慮も必要になります。

隣家と近接する側はできれば窓などを設けず壁にして、断熱効果と防音効果を上げる工夫がポイントです。(画像)

窓に関しては建築基準法で「採光率」の規程があります。
居室に設ける開口部は床面積の1/7以上なければなりません。
ただでさえ近隣住宅からの日当たり問題がある中で近隣側を壁面にすると採光が・・というケースには天窓(トップライト)の導入をおすすめします。

近隣住宅からの日当たりの影響を受けにくいメリットがある反面、夏場は直射日光対策が必要になるほどです。

画像:筆者撮影

周辺を近隣住宅に囲まれているので、防火・準防火地域でなくても火災時の耐火に関して仕様を上げておくこともポイントです。

選択肢が限られてしまう

旗竿地で狭小敷地の場合、玄関位置や方位に対する庭やリビング配置が決まってしまい、設計デザイン(居室配置)の選択肢が限定されてしまうデメリットがあります。
それにより、万人向けで考えられた建売住宅と、好きな配置を検討できる注文住宅の差がほとんどない可能性も出てきます。
また、敷地内通路幅が最小の2メートルでマイカーを駐車する場合、家人や自転車の通行を加味すると車種の選択肢も限定されるデメリットがあります。

間口の狭い家のメリット

これまで間口の狭い家のデメリットを挙げましたが、メリットについても見ていきます。

比較的土地が安い

旗竿地の土地形状がニーズに合わなかったり、建売り住宅の居室配置が気に入らなかったりする場合など買い手を選ぶので、土地(敷地)価格が付近の同じ敷地面積に対し安くなるのが一般的です。
周囲の環境や土地の配置などがニーズに合い、将来売却の予定もない場合は「買い」の物件に変わります。

静かな環境であることが多い

旗竿地は奥まった土地となるため、接道する道路の交通量が多い場合でも近隣住宅が騒音を遮ってくれるケースもあります。

採光窓配置を工夫し、近隣からの日当たりの影響を受けない工夫(設計)ができれば、庭やリビングの部屋内を接道から覗かれる心配がなく、小さな子どもを安心して庭で遊ばせられるメリットがあります。

台風などの通過時も建物に直接当たる風雨は接道面の多い住宅に比べ影響が低くなるメリットもあります。

なお、防犯面に関しては接道から住宅の様子が分かりにくいというメリットと、敷地内では近隣に気づかれにくいというデメリットが混在しますので、特に窓開口に関しては防犯への配慮をしておくと良いでしょう。

間口を広げることはできるのか?

土地購入時には「登記簿謄本」で面積は分かりますが、実際の測量図が備わっているとは限りません。
土地をチェックする際には「敷地境界杭」の有無を確認し、間口の幅をチェックすることが重要です。

では、間口を広げることはできるのでしょうか。
間口の狭い旗竿地などにおいて、昔は近隣の私有地を借りて接道へ出入りする敷地もありました。しかしその後、住まい手の世代が変わり認知しないなど近隣トラブルもあるため、できれば間口幅を2メートル確保する分だけ土地購入するのも1つです。
また、敷地内通路幅が各住戸2メートル以上ある敷地でも接道幅を広げるため、近隣と土地を共有し面積を広げるパターンもあります。(画像)

基本的には後から間口を広げることは難しいことを認識しておきましょう。

画像:筆者撮影

この記事のポイント

開口が狭い土地に家を建てるとどんなデメリットがあるの?

狭い間口で想定される影響として、旗竿地のような特殊な敷地形状は、住まい手の好みに左右されやすく選ばれにくい点から土地の相場が安い分、売却時もあまり期待できません。

また、下記のデメリットがあります。

  1. 日当たりが悪い
  2. 施工費用の増加
  3. 駐車場問題
  4. 圧迫感がある

詳しくは『「間口の狭い土地」に家を建てる場合』をご覧ください。

後から間口を広げることはできるの?

基本的には後から間口を広げることは難しいです。
間口の狭い旗竿地などにおいて、昔は近隣の私有地を借りて接道へ出入りする敷地もありました。しかし、その後住まい手の世代が変わり認知しないなど近隣トラブルもあります。

ただ、敷地内通路幅が各住戸2メートル以上ある敷地でも接道幅を広げるため、近隣と土地を共有し面積を広げるパターンもあります。

詳しくは「間口を広げることはできるのか?」をご覧ください。

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