ハイパーインフレ,住宅ローン,チャラ
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ハイパーインフレで住宅ローンがチャラになる?物価や資産との関連を解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • ハイパーインフレとは、物価が日々・時間単位で上がり、通貨がほぼ機能しなくなる状態のこと
  • ハイパーインフレになった場合、住宅価格が上がったり、住宅ローンの借入金額が実質目減りしたりする

日本は低金利政策を長期に続けてきたことから、インフレがさらに加速する懸念が出てきました。

低金利が円安を生み、輸入価格が上昇することで物価高を生み、さらに現金の価値が低下するという悪循環が生じています。

もしハイパーインフレが生じれば、マイナスの現金である住宅ローンは相対的に大きく価値を落としていくことになります。

ハイパーインフレになった場合、住宅ローンはどのようになっていくのでしょうか。
この記事では、「ハイパーインフレになると住宅ローンはチャラになるか」をテーマに解説しますので、ぜひ参考にしてください。

ハイパーインフレとは

ハイパーインフレとは

ハイパーインフレとは、急激なインフレのことです。
この章では、ハイパーインフレの概要について解説します。

ハイパーインフレの概要

ハイパーインフレとは、物価が日々・時間単位で上がり、通貨がほぼ機能しなくなる状態のことです。

年間で物価が10倍以上も上がり、通貨が急速に信用を失って、人々が物々交換をし始める状況がハイパーインフレに相当します。

ハイパーインフレは、過去にドイツや南米諸国で戦争や政権交代、革命等で政府の信用が失われたことで生じた例がありました。

また、政府が国債を中央銀行に引き受けさせ、紙幣を大量発行して財政支出を賄い始めると、ハイパーインフレにつながる危険性があります。

ハイパーインフレは、通常のインフレとはまず発生原因が異なります。
通常のインフレの発生原因は需要拡大や原材料高によって生じるのに対し、ハイパーインフレは通貨の過剰発行や信任喪失により生じることが多いです。

年間のインフレ率も異なり、通常のインフレ率は年数パーセント程度であるのに対し、ハイパーインフレは1,000%以上になることもあります。

通常のインフレは貨幣機能が維持できますが、ハイパーインフレは現金が無価値化して貨幣機能が失われる点も大きな違いです。

対策としては、通常のインフレは金利引き上げや財政引き締め等で対応できるのに対し、ハイパーインフレはほとんど手立てがなく通貨改革が必要となります。

日本の現状

現状の日本は、中央銀行である日銀がかなりの国債を引き受けてしまっている点に問題があります。

本来、政府の財政政策と日銀の金融政策は別物ですが、日銀が国債を大量に保有しているため、財政政策と金融政策が密接に絡んでしまっているのが実態です。

仮に日銀が金利を上げると、政府の利払いが増え、歳出削減や増税を迫られる懸念が出てきます。

また、国債は金利が上がると価格が下がるため、大量に国債を抱えている日銀は金利を上げると国債の含み損を抱えてしまいます。

国債の利回りは、本来なら市場原理で決まりますが、日本は日銀が国債を市場で高く買うことで国債の利回りを抑えているのが現状です。

国債の利回りが低くなると、連動して住宅ローンの固定金利が低くなります。

一方で、日銀は「銀行の銀行」であることから、政策金利を上昇させると、市中の銀行に対する利払いが増え、収益が悪化します。

収益が悪化すると、国債を高買いして国債の利回りを抑えることができなくなってしまうため、政策金利も容易に上げることができません。

政策金利は、住宅ローンの変動金利に直結する金利です。

このように日銀は国債を大量に抱え込んでいることから、金利を上げることができず、その結果として円安を生み、インフレを加速させる状況となっています。

日本はすぐさまハイパーインフレになるとは考えにくいですが、今の日銀が金利を上げてインフレを抑制するブレーキ機能を失っており、強いインフレが生じる可能性はあります。

諸悪の根源は政府が赤字国債を発行し過ぎたことにあるものの、民主主義であるため、国の放漫財政を容認し続けたのは国民です。

少々耳の痛い話ですが、国民が物価高に苦しめられているのは、つまるところ我々「国民のせい」ともいえるかもしれません。

住宅とインフレの関係性

このままインフレが継続すれば、住宅価格がさらに上がります。

不要な不動産を売却する人にとっては良いですが、不動産を新たに購入する人にとっては厳しい状況です。

赤字国債の発行は次世代へのツケといわれますが、今の若い世代が住宅を買えないこと自体、次世代のツケがすでに始まっている状況といえます。

「ハイパーインフレで住宅ローンがチャラになる」といわれる理由

「ハイパーインフレで住宅ローンがチャラになる」といわれる理由

ハイパーインフレでも住宅ローンが実際にチャラになるわけではありません。
ただし、実質的にほぼ無意味になるため、チャラになると考えられています。

ハイパーインフレ下では、1,000万円で購入した不動産が、翌年には1億円になるような状況となります。

1,000万円のローンが残っていたとしても、1億円で売れるため、簡単に返済することができます。
そのため、ハイパーインフレでは住宅ローンは実質的にチャラになると考える人もいるのです。

ハイパーインフレが住宅ローンや住宅購入に与える主な影響

ハイパーインフレが住宅ローンや住宅購入に与える主な影響

ハイパーインフレが発生することは少し考えにくいですが、この章では、今よりも強めのインフレが生じた場合を前提に住宅ローンや住宅購入に与える主な影響を解説します。

住宅価格が上がる

インフレは不動産のようなモノの価値が上がり、現金の価値が下がる現象です。

そのため、インフレが強まれば、住宅価格はさらに上がります。

住宅ローンの借入金額が実質目減りする

インフレは現金の価値が下がる現象ですが、すでに借りている住宅ローンはマイナスの現金です。

マイナスであっても、現金である以上、インフレ下では相対的に価値が目減りしていきます。

住宅ローンの変動金利が上昇する

日銀は金利を上げにくい状況にありますが、それでも物価高が続けば、金利を上げる可能性は十分にあります。
すでに住宅を購入している人であっても、変動金利で住宅ローンを組んでいれば毎月の返済額が上がります。

住宅の購買力が低下する

このまま物価高が続けば、最終的に金利を上げざるを得ません。

金利を上げれば国債の利回りも上がるため、政府の利払いの財政支出が増えます。
財政支出が増えてしまえば、次に行われるのは増税です。

現状のまま行くと、日本はやがて高インフレ、高金利、高税金の三重苦に国民が悩まされる懸念があります。

三重苦が発生すれば可処分所得が減るため、住宅の購買力が低下していくと考えられます。

ハイパーインフレに備えた住宅ローン対策

ハイパーインフレに備えた住宅ローン対策

ハイパーインフレが発生することは少し考えにくいですが、今よりもインフレが加速することは十分に考えられます。
この章では、今よりもインフレが加速したときの現実的な住宅ローンの対策について解説します。

固定金利を選んで上昇リスクを回避する

今後インフレが強まれば、やはり金利の上昇は避けられません。
日銀が、税金が上がることも覚悟の上で、金利を上げる可能性は十分にあります。

金利上昇リスクを回避するには、住宅ローンを固定金利で組むことが適切な対策です。

近年の固定金利は変動金利に比べると随分高くなりましたが、それでも総じて低い水準にとどまっています。

そのため、すでに住宅ローンを組んでいる人でも、固定金利が総じて低いうちに借り換えることが望ましいです。

また、これから住宅を新たに購入する人であれば、変動金利だけでなく、固定金利も組み合わせて借りることがリスクヘッジとなります。

全額を変動金利では借りない

昨今は住宅価格が高く、かつ、変動金利と固定金利との乖離が大きいことから、全額を変動金利で借りてしまっている人も多いです。

今後の金利上昇の懸念を踏まえると、やはり全額を変動金利で借りることはリスクがあります。

ただし、固定金利は変動金利よりも金利が高いことが多いため、毎月の返済額など自分に合った資金計画を組むことが大切です。

5年ルール・1.25倍ルールも知っておく

住宅ローンの変動金利は、金利が変わることで返済額が急激に増加しないよう、多くの金融機関で5年ルールを定めています。

5年ルールとは、元利均等返済において毎月の返済額は5年間変更しないというルールのことです。

元利均等返済とは、元金と利息の合計額が毎月一定額となる返済方法を指します。

5年ルールでは5年後に返済額が上がったとしても、その返済額は従前の1.25倍までとしていることが一般的です。

無理のない返済計画を立てる

インフレに関わらず、住宅ローンは無理のない返済計画を立てることが基本です。

無理のない返済計画とは、返済負担率が20%以内であることが目安とされています。

返済負担率とは、額面収入に占める年間返済額の割合のことです。

資産価値が上がる物件を見極める

近年の日本の不動産は価格が上昇している不動産と下落している不動産が存在し、値動きが二極化しています。

都市部の値上がりが期待できる不動産を購入しておけば、万が一、毎月の住宅ローンの返済が苦しくなったときでも売却すれば完済できます。

また、省エネ性能の高い住宅や長期優良住宅等は、住宅ローン控除等の税制優遇制度が整備されており、将来的に価値が高まると予想される物件です。

資産価値の高い建物を選んでおくことも、対策の一つとなります。

資産は分散して保有する

インフレ下では、現金は価値がどんどん目減りしていくため、現金だけを持つことはリスクがあります。

現金や不動産、株式といったように、資産の種類を分散させておくことが望ましいです。

まとめ

以上、「ハイパーインフレになると住宅ローンはチャラになるか」をテーマに解説してきました。
日本は政府が大量の赤字国債を抱えており、金利を機動的に上げられない状況にあることからインフレが加速してしまう懸念が存在します。

ハイパーインフレになっても住宅ローンはなくなるわけではありませんが、物件を売却すれば簡単に返済できるため、実質的にチャラになるという考え方はあります。

強めのインフレに備えるには、住宅ローンの組み方等でも一定の対策を施しておくことが必要です。
今後の資産形成を考えるうえで、参考にして頂ければと思います。

この記事のポイント

ハイパーインフレで住宅ローンがチャラになる?

ハイパーインフレでも住宅ローンが実際にチャラになるわけではありません。

ただし、実質的にほぼ無意味になるため、チャラになると考えられています。

ハイパーインフレ下では、1,000万円で購入した不動産が、翌年には1億円になるような状況となります。

1,000万円のローンが残っていたとしても、1億円で売れるため、簡単に返済することができます。

詳しくは「『ハイパーインフレで住宅ローンがチャラになる』といわれる理由」をご覧ください。

ハイパーインフレになると住宅ローンはどうなる?

ハイパーインフレになると、住宅ローンの借入金額が実質目減りします。

インフレは現金の価値が下がる現象ですが、すでに借りている住宅ローンはマイナスの現金です。

マイナスであっても、現金である以上、インフレ下では相対的に価値が目減りしていきます。

詳しくは「ハイパーインフレが住宅ローンや住宅購入に与える主な影響」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

ハイパーインフレとまではいわないものの、高市政権の発足により日本はインフレがさらに加速する現実味を帯びてきました。高市政権は景気対策のために積極的な財政出動をすると考えられ、今後さらに赤字国債が増えれば、ますます金利を上昇させにくくなると予想されます。日銀によるブレーキ作用が利かなければ、株価や不動産価格は今後も上昇していく見込みが高いです。日本の物価は政府の放漫財政と密接に絡んでいることから、今後の情勢を見極めるには政府の財政再建に対する姿勢も注視していく必要があります。

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