ざっくり要約!
- 共同担保目録とは、1つの債権に対して設定された複数の担保不動産の情報を一覧にまとめたもの
- 不動産を売却する際には、共同担保目録に記載されたすべての担保不動産について抵当権を抹消する必要がある
不動産の売却を進めていく際に「共同担保目録」という言葉を耳にする場面があるかもしれません。
共同担保目録は、1つの債権に複数の不動産が担保にされていることを示す登記情報です。この登記情報を正しく理解しておかないと、売却手続きに支障が出る可能性があります。
そこでこの記事では、共同担保目録の基本的な仕組みや記載内容の見方、取得方法、そして売却時に必要となる抹消手続きについてわかりやすく解説します。自宅の売却を予定している方に参考になる内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
記事サマリー
共同担保目録は抵当権のある不動産の一覧

不動産の売却や担保の抹消などを行う際には、どの不動産に抵当権が及んでいるのかを把握する必要があり、共同担保目録がその手がかりとなります。
まずは前提となる「抵当権」の仕組みについて確認したうえで、共同担保目録の役割や記載内容についてみていきましょう。
抵当権とは
共同担保目録を理解する前に、まずは抵当権の仕組みについて理解しておく必要があります。
抵当権とは、債務者がローンの返済を滞納した場合に、債権者が担保となっている不動産を売却し、その代金から貸付金を回収できる権利のことです。
たとえば、金融機関から5,000万円の融資を受けて住宅ローンを組んだ場合、その家に抵当権が設定されます。仮に途中で返済が滞り、債務者がローンを返済できなくなった際は、金融機関はその家を売却し、売却代金を使って残りのローンを回収します。
このように、住宅ローンなどの高額な融資では、不動産を担保にするのが一般的であり、その内容は登記簿に記録されることになります。
| ・「抵当権」に関する記事はこちら 抵当権をわかりやすく解説!設定・抹消手続きの流れと不動産の売却方法 |
共同担保目録とは
共同担保目録とは、1つの債権に対して設定された複数の担保不動産の情報を一覧にまとめたものです。
登記簿の一部として作成され、共同担保に関する物件の情報が整理されています。
以下は、法務局で実際に発行される共同担保目録のサンプルです。

たとえば住宅ローンでは、建物とその土地の両方を担保に設定するのが一般的です。また、複数の不動産を1つの債権の担保とすることを「共同担保」といい、抵当権の効力はすべての担保物件にまたがって及びます。
共同担保には、契約当初から複数の不動産を担保にするケースのほか、後から別の不動産を担保として追加するケースもあります。
いずれにしても、複数の不動産が同じ債権の担保となっている場合、それらの情報は共同担保目録として登記簿にまとめて記載される仕組みです。
加えて、不動産を売却する際には、共同担保目録に記載されたすべての担保不動産について抵当権を抹消する必要があります。
共同担保を設定する理由3つ

共同担保を設定する理由はいくつかありますが、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
- 担保としての価値を満たすため
- 私道を確保するため
- 法定地上権を回避するため
それぞれの理由について詳しくみていきましょう。
担保としての価値を満たすため
1つ目の理由は、担保としての価値を満たすためです。
借入額に対して、1つの不動産だけでは担保としての評価額が不足する場合、追加で他の不動産も担保に設定する必要があります。
たとえば、5,000万円の融資を受ける際に、担保として提供した不動産の評価額が3,000万円だとしましょう。この場合、担保として2,000万円分が不足することになります。この不足分を補うために、別の評価額2,000万円の不動産を追加で担保設定することが求められます。
また、住宅ローンなどでは建物と土地の両方を担保にすることが一般的です。建物だけを担保にしても買い手がつきにくく、市場価値が下がることで、資金回収リスクが高まってしまうためです。十分な担保価値を確保するという意味でも共同担保の設定が行われます。
私道を確保するため
土地や建物を担保にする際は、それに接する私道の共有権もあわせて共同担保に設定するのが一般的です。
私道の共有権とは、私道を他の所有者と共同で所有する権利のことです。この権利があれば私道であっても自由に通行することができます。

たとえば、Aの家がある場所が私道に接していて、その私道はAさんとBさんが1/2ずつ所有していたとしましょう。Aさんはこの私道を通って公道に出ることになりますが、もしこの私道の持分がないと、思わぬトラブルに発展するおそれがあります。
たとえ土地や建物を取得しても、前面の私道を自由に使う権利がなければ、家への出入りが制限される可能性があります。そうなると生活に不便が生じるだけでなく、不動産としての価値も大きく下がってしまうかもしれません。
このようなリスクを避けるためにも、建物や土地だけでなく、私道の持分もあわせて共同担保に設定しておくことが大切です。そうすることで、不動産の利用価値を維持し、売却や融資の際のトラブルも防ぐことができます。
| ・「私道」に関する記事はこちら 私道負担のメリット・デメリットは?セットバックとの違いも説明 |
法定地上権を回避するため
共同担保が設定される目的のひとつに、法定地上権の成立を回避することが挙げられます。
法定地上権とは、競売などにより土地と建物の所有者が別々になってしまった場合でも、建物の所有者が土地を引き続き制限付きで利用できる権利のことです。
たとえば、建物だけを担保として競売にかけた場合、落札者は建物の所有権を取得し、土地の所有権は元の所有者に残ります。このようなケースでは、法定地上権が成立し、落札者は他人の土地を使って建物を使用することが可能です。
同様に、土地だけを担保として競売にかけた場合でも、建物所有者には法定地上権が認められる可能性があり、土地と建物の権利関係が複雑になります。
このように、土地と建物の所有者が分かれると、法定地上権の有無をめぐってトラブルが生じたり、競売後の物件利用に支障が出たりするおそれがあります。そのため、実務では土地と建物の両方をまとめて共同担保に設定するのが一般的です。
| ・「地上権」に関する記事はこちら 地上権とは?賃借権や借地権との違いをわかりやすく解説 |
共同担保目録の見方

共同担保かどうかを確認するには、不動産登記簿(登記事項証明書)を取得して内容を確認する必要があります。
登記簿には、不動産の基本情報や権利関係が詳細に記載されており、共同担保目録が設定されているかどうかも読み取ることが可能です。
不動産登記簿は、主に次の3つで構成されています。
- 表題部
- 権利部(甲区・乙区)
- 共同担保目録
ここでは、それぞれの項目の役割と見方を確認しながら、共同担保目録がどこに記載され、どのように確認すればよいかを解説します。
表題部
表題部は、不動産登記簿の最初に記載されている部分で、対象となる不動産を特定するための基本情報がまとめられています。
この情報により、対象の土地や建物の属性を識別することが可能です。
なお、土地と建物では記載される項目が異なります。
土地についての記載内容は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 所在 | 市区町村名と大字・字(あざ)など、土地の場所 |
| 地番 | 登記上の番号 |
| 地目 | 宅地、田、畑、山林、公園など、土地の用途 |
| 地積 | 土地の面積 |
| 原因及びその日付 | 登記の理由(例:売買、相続など)とその日付 |
| 所有者 | 現在の所有者の氏名・住所 |
一方、建物には以下の内容が記載されています。
| 項目 | 内容 |
| 種類 | 居宅、店舗、共同住宅、事務所など、建物の用途 |
| 構造 | 木造、鉄筋コンクリート造などの構造 |
| 床面積 | 各階ごとの床面積 |
このように、表題部では純粋に不動産そのものの物理的・客観的な情報を確認することが可能です。
権利部
続いては「権利部」です。権利部は「甲区」と「乙区」に分かれており、それぞれ記載される項目が異なります。
甲区には、所有権の変動に関する内容が記載されており、以下が各項目になります。
| 項目 | 内容 |
| 順位番号 | 登記が行われた順番 |
| 登記の目的 | その登記が何を目的としているのか(所有権保存、所有権移転など) |
| 受付年月日・受付番号 | 登記が正式に受理された日付と受付番号。登記の有効な日を示します。 |
| 権利者その他の事項 | 所有者の氏名や住所、所有権の取得原因など |
一方の乙区には、抵当権や地役権など、所有権以外の権利に関する内容が記載されます。
その中でも、権利者その他の事項が記載される項目は下記の通りです。
| 項目 | 内容 |
| 原因 | 抵当権が設定された理由 |
| 債務額 | 債務者が金融機関等から借り入れした金額 |
| 利息 | 借入金に対する利息割合 |
| 損害金 | 返済が遅れた場合に発生する延滞損害金 |
| 債務者 | 借り入れした方の情報 |
| 抵当権者 | 抵当権を持っている方や金融機関 |
| 共同担保目録の番号 | 共同担保されている場合、その一覧の番号 |
下記は法務局が発行する全部事項証明書の一例で、実際に甲区と乙区の構成が確認できます。

たとえば、甲区には平成20年10月15日に甲野太朗さんが所有権保存登記を行い、令和1年5月7日に法務五郎さんへ所有権が移転されたことが記載されています。
一方の乙区には、令和1年5月7日の金銭消費貸借契約に基づき、法務五郎さんが4,000万円を借り入れ、債務者として登記されたことが記載されています。
このように、権利部を確認することで、不動産の所有履歴や担保関係の有無を把握することが可能です。
| ・「所有権保存登記」に関する記事はこちら 所有権保存登記とは?必要な理由や記録内容、申請手続きの流れを解説 |
共同担保目録
共同担保が設定されている場合は、不動産登記簿の「権利部」の次に「共同担保目録」が記載されます。
ここには、同じ債権に対して抵当権が設定されている複数の不動産が一覧形式でまとめられています。
共同担保目録に記載されている項目は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| 記号及び番号 | 登記申請時に付けられる受付番号 |
| 番号 | 共同担保に含まれる各不動産に割り当てられた番号 |
| 担保の目的である権利の表示 | 所在地、地番、建物の種類など、抵当権が設定された不動産の情報 |
| 順位番号 | 抵当権が登記された順番を示す番号 |
共同担保目録を確認することで、どの不動産が同じ抵当権の対象としてまとめて担保にされているかを把握できます。なお、共同担保が設定されていない場合は、共同担保目録のパート自体が登記簿に含まれません。
| ・「登記事項証明書」に関する記事はこちら 登記事項証明書とは?必要となるケースや証明書の種類、取得方法を解説 |
共同担保目録における順位番号とは

共同担保目録に記載されている順位番号は、抵当権の優先順位を表す重要な情報です。
同じ不動産に複数の抵当権が設定されている場合、どの抵当権者が優先的に返済を受けられるかを判断する基準になります。
不動産が競売にかけられて売却された場合、順位が若い抵当権者から先に債権を回収できる仕組みです。残った金額がある場合のみ、次の順位の抵当権者に配当されます。
たとえば、順位番号が「2」となっている場合は、まず「1」の抵当権者が優先的に配当を受け、その残りがあれば順位「2」の抵当権者に回ることになります。
共同担保目録の取得方法と注意点

共同担保目録を確認したい場合は、不動産の登記事項証明書(不動産登記簿)を法務局で取得する必要があります。
ここでは、共同担保目録の取得方法とあわせて、申請時の注意点についても解説します。
取得方法
共同担保目録を確認するには登記事項証明書(不動産登記簿)を取得する必要があります。申請方法は、次の3つになります。
- オフラインで登記事項証明書を請求する
- オンラインで登記事項証明書を請求する
- オンラインで登記簿データをPDFで請求する
オフラインでの申請は法務局の窓口に直接出向く必要があります。現地で登記事項証明書交付請求書を窓口で入手し、必要事項を記入すれば窓口で登記情報を取得できるでしょう。
オンラインでの申請は2種類に分けられます。
1つ目は法務局の「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスし、必要事項を記載して送信する方法です。証明書の受け取り方法は郵送と窓口から選べます。
2つ目は、法務局の「登記情報提供サービス」を利用する方法です。必要事項を入力して送信することで、登記簿データをPDF形式で取得できます。
なお、急ぎで共同担保目録を確認したい場合は、法務局の窓口で請求するのが確実です。待ち時間が発生するものの、不備がなければその場で登記事項証明書を取得できるでしょう。
・「登記事項証明書」に関する記事はこちら
登記事項証明書とは?必要となるケースや証明書の種類、取得方法を解説
申請時の注意点
共同担保目録は登記簿の一部ではありますが、登記事項証明書を請求しただけで自動的には交付されるわけではありません。
共同担保目録が必要な場合は、交付請求書の「※共同担保目録が必要なときは、以下にも記載してください」の欄にチェックを入れ、書面で明示しておく必要があります。記入漏れがあると共同担保目録は交付されないため注意が必要です。

なお、共同担保目録のみを単独で請求することはできません。登記事項証明書とあわせて取得する必要があります。
共同担保目録はいつ必要になる?

共同担保目録は、不動産の売却や抵当権抹消登記を行う際に必要になります。
抵当権が設定されたままの不動産でも売却することは可能です。しかし、スムーズに売買契約が進みにくくなり、購入希望者は購入を敬遠しがちになります。
そのため、売却を進めるには、抵当権の抹消登記が欠かせません。抵当権が残っていると、売買に限らず、将来的な相続や名義変更の際にも支障をきたす可能性があるでしょう。
こうしたトラブルを防ぐためにも、あらかじめ共同担保目録を取得し、どの不動産が担保に入っているかを正確に確認しておくことが重要です。
売却したい不動産に共同担保が設定されていたときにすべきこと

売却予定の不動産に共同担保が設定されている場合、その不動産の抵当権を抹消する必要があります。
その際に共同担保の一部のみを外すことは難しく、担保となる不動産すべての抵当権を外すことが一般的です。
抵当権抹消の際は、必要な書類をそろえて法務局にて手続きを行いましょう。主な必要書類は以下のとおりです。
| 必要書類 | 入手先 |
| 登記申請書 | 法務局 |
| 登記済証または登記識別情報 | 金融機関 |
| 登記事項証明書 | 金融機関 |
また、登記申請は自身で手続きを行うことも可能ですが、司法書士に依頼することもできます。司法書士へ依頼する場合は費用が発生しますが、時間や手間を省きたい場合は司法書士に依頼するのも1つの方法です。
| ・「抵当権抹消」に関する記事はこちら 抵当権抹消とは?抹消が必要になるケースや費用、手続きの方法を解説 |
まとめ
共同担保目録とは、1つの債権に対して設定された複数の担保不動産の情報を一覧にまとめたものです。登記簿は表題部、権利部(甲区・乙区)、共同担保目録の3つで構成されており、共同担保目録には共同担保に関する情報が記載されています。
共同担保が利用される主な理由は、融資額に見合う担保価値を確保するためです。共同担保目録に記載された順位番号は債権回収の優先順位を示すもので、競売などで不動産が売却された際には、この順位に従って配当の順番が決まります。
不動産を売却する際、抵当権が付いたままだと手続きが進みにくくなるため、あらかじめ抹消登記を行っておく必要があります。
抹消登記は手順をきちんと理解すれば、自身でも行うことは可能です。しかし、手続きに不安がある場合や、時間を少しでも節約したい場合には司法書士への依頼が確実でしょう。
この記事のポイント
- 共同担保目録とは?
共同担保目録とは、1つの債権に対して設定された複数の担保不動産の情報を一覧にまとめたものです。
登記簿の一部として作成され、共同担保に関する物件の情報が整理されています。
詳しくは「共同担保目録は抵当権のある不動産の一覧」をご覧ください。
- 共同担保目録の重要性は?
共同担保目録は、不動産の売却や抵当権抹消登記を行う際に重要となります。
抵当権が設定されたままの不動産でも売却することは可能です。しかし、スムーズに売買契約が進みにくくなり、購入希望者は購入を敬遠しがちになります。
そのため、売却を進めるには、抵当権の抹消登記が欠かせません。
詳しくは「共同担保目録はいつ必要になる?」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
登記や法務手続きに詳しい不動産会社と取引ができれば、共同担保目録の取得方法や抵当権抹消の流れなどについて、具体的なアドバイスやサポートを受けられる可能性があります。特に不動産の売却は、法律や登記の手続きが複雑になりやすいため、信頼できる不動産会社の見極めも重要なポイントになるでしょう。会社の規模や仲介手数料の安さだけで安易に判断せず、過去の取引実績や担当者の知識・対応力なども確認しながら判断してください。

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