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住宅ローンにおける金消契約とは?契約までの流れや注意点をわかりやすく解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 金消契約とは金銭を借りる際に金融機関と個人や消費者が結ぶ契約のことで、正式名称は「金銭消費貸借契約」
  • 住宅ローンを組む際には、金消契約を含めてさまざまな手続きが必要となる

これから住宅ローンを組む予定の方のなかには「金消契約」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。聞き慣れない言葉のため、いまいち内容を理解できていない方も多いはずです。

金消契約とは、住宅ローンなどの借入にあたり、金融機関と借主が金銭の貸し借りに関する条件を取り決める契約のことです。

この記事では、金消契約の概要や契約までの流れ、当日に必要な持ち物や注意点についてわかりやすく解説します。これから住宅ローン契約を控えている方にとって役立つ情報となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

不動産でも使われている金消契約とは?

不動産でも使われている金消契約とは

金消契約とは、金銭を借りる際に金融機関と個人や消費者が結ぶ契約のことです。

正式名称は「金銭消費貸借契約」であり、借入に関する条件を明確に取り決めることで、融資後のトラブルを防ぐ役割を担っています。

契約書には借入金額や返済期日、資金の使途、利率、遅延損害金などの融資条件が記載されます。

金消契約の対象となる取引は主に以下のとおりです。

  • 住宅ローン
  • カードローン
  • キャッシング
  • 教育ローン
  • 奨学金

このように金銭消費貸借契約は、暮らしのなかの身近な取引に幅広く使われている契約です。今回は、これらのなかでも「住宅ローン」における金銭消費貸借契約について中心に解説していきます。

住宅ローンの金消契約で記載される項目

住宅ローンの金消契約で記載される項目

住宅ローンにおける金消契約では、契約内容に関するさまざまな項目が契約書に明記されます。後のトラブルを避けるためにも、それぞれの項目を事前に理解しておくことが大切です。

ここでは、金消契約書に記載される主な項目について解説します。

借入金額

借入金額は、金消契約書に記載される基本的な項目のひとつです。契約者がいくらの資金を金融機関から借り入れるのかを明確にするため、契約書には正確な金額が記載されます。

また、借入金額とあわせて、融資実行日と最終返済日が記載されており、返済計画を立てるうえで重要な情報となります。

【借入金額の記載例】

借入金額20,000,000円
借入日2025年1月1日最終返済日2060年1月27日

利息

金消契約では、借入に対する利息も明確に定められます。貸主は利息を支払う契約の場合は利息の計算方法を契約書に明記することが義務付けられており、トラブル防止の観点からも重要な項目です。

また、利息には法律上の上限もあり、利息制限法により以下のように元本額に応じた上限利率が定められています。

元本額上限金利
10万円未満年20%まで
10万円以上100万円未満年18%まで
100万円以上年15%まで

なお、住宅ローンの場合はこれらの上限利率よりはるかに低い金利が適用されるのが一般的です。これは、住宅ローンの金利が政策金利や10年国債利回りなどの指標を基に設定されるためです。

金融機関によって異なりますが、おおむね年0.5~3%程度の範囲に収まることが多いでしょう。

出典:利息制限法|e-Gov法令検索

返済方法・返済期日

金消契約では、借入金の返済方法や返済期日についても具体的に記載されます。

例えば、毎月の返済日や、ボーナス時の返済(ボーナス返済)の有無、元利均等返済または元金均等返済といった方式など、返済計画に関する詳細が盛り込まれます。

項目記載例
毎月の返済日毎月10日払い
ボーナス返済年2回(7月・12月)に各30万円を加算返済
返済方式の種類元利均等返済方式

また、期限前返済(繰上返済)が可能かどうかも契約書に記載される重要な項目です。

一般的に住宅ローンでは期限前返済は可能とされていますが、契約内容によっては一部制限が設けられている場合や手数料が発生する場合があります。

期限の利益

「期限の利益」とは、契約上定められた返済期日までは、借りた金銭を返済せずに利用できる債務者の権利を指します。

住宅ローンなどの長期借入では、返済期日まで一定の期間をかけて分割返済できること自体が、債務者にとって大きなメリットです。

ただし、返済を怠ったり、重大な信用不安が生じたりした場合には、この「期限の利益」を失う(喪失する)ことがあります。

金消契約では、あらかじめ「期限の利益を喪失する事由」が明記されており、以下のようなケースに該当すると、残りの借入金について一括返済を求められる可能性があります。

  • 返済を滞納した場合
  • 破産、再生、更生、清算手続の申立てがあったとき
  • 重大な契約違反があったとき

このように、期限の利益は当然に保障されるものではなく、契約上の義務を果たしていないと判断されれば、金融機関から厳しい措置が取られることもあります。

遅延損害金

「遅延損害金」とは、返済が期日までに行われなかった場合に、借主(債務者)が貸主(金融機関)に対して支払う損害賠償金のことです。

これは、遅延によって生じた損失や機会費用を補うためのものであり、契約書には通常、年○%といった割合で利率が定められています。

なお、契約書に遅延損害金に関する利率が明記されていない場合は、法定利率である年3%が適用されることになります(民法第404条の第2項)。

出典:民法|e-Gov法令検索

金消契約を結ぶまでの流れ

金消契約を結ぶまでの流れ

住宅ローンを組む際には、金消契約を含めてさまざまな手続きが必要になります。ここでは、事前審査から融資の実行、物件の引き渡しまでの流れをステップごとにご紹介します。

1.金融機関の事前審査

住宅ローンを組む際は、まず金融機関の店頭やWebサイトから事前審査(仮審査)の申し込みを行います。

申し込みの際には本人確認書類や収入証明書などの必要書類を事前に準備しておくとスムーズです。

審査結果は即日〜数日以内に通知されるのが一般的です。

2.重要事項の説明

事前審査を通過すると、物件に関する「重要事項説明」が行われます。

これは宅地建物取引士(宅建士)が書面を用いて、物件情報や売買条件を説明する法定手続きです。

説明内容には、以下のような項目が含まれます。

  • 物件の所在地・面積・構造
  • 接道状況や都市計画の制限
  • 管理費・修繕積立金などの維持費用
  • 瑕疵担保責任や契約解除条件
  • 登記簿上の権利関係(抵当権など)

とくに、権利関係や将来的な制限・費用負担は、購入後のトラブルを防ぐうえで重要な確認ポイントです。疑問点があればこの段階で必ず確認しておきましょう。

3.本審査・本承認

事前審査を通過した後は本審査が行われます。

本審査は、事前審査よりもさらに厳密に行われ、申し込み内容や提出書類を慎重に確認されます。

具体的な審査項目は以下のとおりです。

  • 本人確認および勤務先への在籍確認
  • 年収や返済負担率の確認
  • 健康状態(団体信用生命保険の審査)
  • 購入物件の担保評価(担保としての適正性)
  • 他の借入状況や信用情報

これらを踏まえて、金融機関は最終的な融資の可否を判断します。そのため、本審査の結果が出るまでには、通常1週間から1カ月程度の時間がかかることがあります。

4.金消契約(金銭消費賃借契約)締結

本審査に通過すると、いよいよ金消契約(金銭消費貸借契約)の締結に進みます。

契約方法には、金融機関の窓口で行う「対面方式」のほか、オンライン上で進める「非対面方式」があります。契約書は紙面または電子形式のいずれかを選択する形で進められることが一般的です。

手続きにかかる時間は、おおむね1~2時間程度が一般的です。必要書類の確認や説明事項が多いため、時間に余裕を持って臨むようにしましょう。

5.融資実行・物件引き渡し

金消契約を終えると、いよいよ融資の実行段階へと進みます。売主や仲介業者がスケジュールを調整し、売買契約に基づく融資実行日を設定します。

当日は、金融機関から買主の口座に融資資金が振り込まれ、買主は自己資金とあわせて売買代金を売主の口座へ送金する流れです。

あわせて、司法書士の立ち会いのもとで所有権移転登記が行われ、法的に物件の所有者が買主へと移ります。この手続きを終えると正式に物件の引き渡しが完了します。

金消契約当日に必要な持ち物と場所

金消契約当日に必要な持ち物と場所

金消契約をスムーズに進めるためには、当日に必要な書類や持ち物を事前に確認しておくことが大切です。また、契約をどこで行うのかも金融機関によって異なるため、あらかじめ把握しておきましょう。

ここでは、金消契約の締結時に必要となる持ち物や、契約を行う場所について解説します。

必要な持ち物

金消契約を行う際には、主に以下の書類や持ち物が必要になります。

  • 住宅ローン返済用の口座情報および銀行印
  • 印鑑登録証明書・住民票
  • 実印
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 収入印紙(※書面での契約時に必要、印紙税額は借入金額によって異なる)
  • その他、金融機関が求める書類

これらに不備があると、スケジュールの再調整や契約日の変更が必要になる場合があります。円滑に手続きを進めるためにも、余裕を持って準備しておくことが大切です。

締結する場所

金消契約の締結方法には「対面」と「非対面」の2種類があります。対面方式では、金融機関の店舗に来店し、担当者立ち会いのもとで書類の確認や署名・捺印を行うのが一般的です。

一方で、非対面方式を導入する金融機関も増えており、ネット銀行では主流となっているほか、都市銀行や地方銀行でも非対面契約に対応するケースが広がっています。

非対面の場合は、書類のやり取りを郵送やオンライン上で完結させることが可能であり、来店の手間がかからない点が特徴です。どちらの方法になるかは金融機関や契約内容によって異なるため、事前に確認しておくと安心です。

金消契約締結時の注意点

金消契約締結時の注意点

金消契約は多額の資金が動く契約のため、締結時には慎重な確認と理解が求められます。契約締結時に注意すべきポイントは次のとおりです。

  • 契約内容はすみずみまで確認する
  • 印紙税がかかることを知っておく
  • 本審査を通過しても取り消される場合がある

それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。

契約内容はすみずみまで確認する

金消契約は、一度締結すると内容を変更することは原則認められません。そのため、契約書に記載された内容は事前にきちんと確認しておくことが重要です。

契約書には専門用語が使われていることもあり、十分に理解せずに署名・捺印してしまう方も少なくありません。

しかし、内容をよく確認せずに契約してしまうと、後になって不利な条件に気づき、トラブルにつながる恐れがあります。

不明な点はそのままにせず、必ず担当者に確認し、納得したうえで契約に臨むようにしましょう。理解をあいまいにせず進めることが、安心した住宅ローン利用につながります。

印紙税がかかることを知っておく

金消契約を紙の契約書で交わす場合は、契約金額に応じた印紙税が課税されます。契約書に収入印紙を貼り、印紙税を納税する仕組みです。

借入額印紙税額
1,000万円超~5,000万円2万円
5,000万円超~1億円6万円
1億円超~5億円10万円

一方で、電子契約を利用する場合は印紙税が不要です。ただし、電子契約では銀行によっては別途手数料がかかる場合もあるため注意が必要です。

また、金消契約にあたっては、保証会社に支払う保証料や金融機関の事務手数料など、印紙税以外のコストも発生します。これらの金額は金融機関ごとに異なるため、契約前に費用の内訳を確認しておきましょう。

本審査を通過しても取り消される場合がある

住宅ローンの本審査に通過すると安心してしまいがちですが、融資が確定したわけではありません。融資実行までの間に、申込者の信用情報や収入状況に大きな変化があった場合、金融機関が融資を取り消す可能性もあります。

とくに以下のような行動には注意が必要です。

  • ほかのローン(自動車ローンや教育ローンなど)を新たに組む
  • 転職や退職をする
  • クレジットカードのキャッシングや分割払いを利用する

こうした行動は、審査時と比べて「返済能力が変化した」と判断される要因となりかねません。融資実行が完了するまでは、なるべく信用情報や収入状況を変えないよう注意することです。

もし、融資実行前にクレジットカードで高額な買い物をした場合は、一括払いを選択したうえで、金融機関の担当者に報告しておきましょう。

まとめ

金消契約とは、金銭を借りる際に、金融機関と個人や消費者が結ぶ契約のことです。契約書には借入金額や返済期日、利息、担保、保証に関する条件など、融資に関する重要な内容が明記されています。

この契約を一度締結してしまうと、原則として内容を変更することはできません。そのため、契約書に記載された内容を一つひとつ丁寧に確認することが大事です。もし不明な点があればそのままにせず、必ず担当者に確認し、納得したうえで契約に臨むようにしましょう。

この記事のポイント

住宅ローンの金消契約で記載される項目にはどんなものがある?

住宅ローンにおける金消契約では、契約内容に関するさまざまな項目が契約書に明記されます。

たとえば、借入金額や利息、返済期日・返済方法などです。

詳しくは「住宅ローンの金消契約で記載される項目」をご覧ください。

金消契約締結時の注意点は?

不動産などの金消契約は、一度締結すると内容を変更することは原則認められません。そのため、契約書に記載された内容は事前にきちんと確認しておくことが重要です。

契約書には専門用語が使われていることもあり、十分に理解せずに署名・捺印してしまう方も少なくありません。

しかし、内容をよく確認せずに契約してしまうと、後になって不利な条件に気づき、トラブルにつながる恐れがあります。

詳しくは「金消契約締結時の注意点」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

住宅ローンの本審査通過後の融資実行前にクレジットカードを作成・利用すること自体は、基本的に問題になることは少ないとされています。ただし、万が一の影響が出る可能性もゼロではありません。
とくに家具や家電、車の買い替えなどの費用は高額になりがちです。マイホーム取得という大きな目的を確実に達成するためにも、住宅ローンの手続きがすべて完了するまでは、高額な買い物や新たな借入はできるだけ控えることをおすすめします。

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