ざっくり要約!
- 住宅ローンの借り換えによって金利が下がれば、毎月の返済額や総返済額を軽減できる可能性がある
- 借り換えによるメリットを得るためには、最低でも10年以上の返済期間が残っていることが目安となる
住宅ローンの借り換えを検討している方のなかには「本当に効果があるのだろうか」「損をしてしまわないか」と不安に感じている方もいるでしょう。
借り換えは返済負担を抑える有効な手段となりますが、進め方を誤ると「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースもあります。
この記事では、住宅ローンの借り換えでよくある失敗例から、借り換えのメリット・デメリット、利用する際の注意点を解説します。これから借り換えを検討する方の参考になるでしょう。
記事サマリー
住宅ローン借り換えでよくある失敗例

住宅ローンの借り換えは、条件が整えば返済額の軽減につながりますが、思わぬ落とし穴にはまってしまうケースもあります。
ここでは、住宅ローン借り換えで見られる代表的な失敗例をいくつかご紹介していきます。借り換えの可否を判断する際の判断材料としてご活用ください。
審査に通らず借り換えできなかった
住宅ローンの借り換えには、金融機関の審査を受ける必要がありますが、その審査は新規借入時よりも厳しくなる傾向にあります。
これは、借り換えを検討する頃には初回の借入時より年齢が上がり、健康状態も変化している可能性があるからです。
実際、以下のような事情がある方は、審査に通らず借り換えが実現しないこともあります。
- 収入が下がっている
- 転職や独立をして間もない
- 健康状態に不安がある
- 過去に返済延滞の履歴がある
- 自動車ローンや教育資金ローンなど、他の借り入れが多い
まずは、自身の収入や健康状態、他の借り入れ状況を正確に把握し、借り換えの可否を冷静に見極めることが重要です。
金利が想定より高くなった
金利を下げる目的で住宅ローンの借り換えを実施したものの、結果的に「想定より高い金利での借り入れになってしまった」というケースもあります。
これは、住宅ローンの金利が申し込み時や契約時ではなく「融資実行時の金利」で決まる仕組みによるものです。契約から実行までに月をまたぐと、金利改定により想定より高くなることがあります。
例えば、変動金利の場合は半年ごとに金利が見直される仕組みです。一方、固定金利型は契約時に定められた期間中は金利が固定されますが、適用される金利水準が金融機関によって毎月見直されています。
そのため、借り換えの検討から融資実行までに時間が空くと、当初予定していた金利よりも高くなる可能性があるのです。
とくに金利の上昇局面では、想定よりも高い金利が適用されるリスクが高まるため、借り換えを検討する際には慎重な判断が求められます。
諸費用の額が想定以上だった
住宅ローンの借り換えにはさまざまな費用が発生します。これらの費用を正しく把握し、最終的にどれだけ返済額を軽減できるかを冷静に見極めることが重要です。
実際に発生する主な費用と相場は以下のとおりです。
| 費用 | 内容 | 費用の相場 |
|---|---|---|
| 融資事務手数料 | 借り換え先へ支払う手数料 |
|
| 繰上返済手数料 | 現在の借入先に対して、残債を一括返済する際に発生する手数料。 |
|
| 保証料 | 保証会社を利用する場合に必要となる費用。金融機関によっては不要なケースもある |
|
| 印紙税 | 借り換え時に締結する「金銭消費貸借契約書」に課される税金。 |
|
| 登録免許税 | 新たな抵当権の設定にかかる税金 |
|
| 抵当権抹消 | これまでのローンの抵当権を抹消するための登録費用 |
|
借り換えの効果を正しく判断するには、これらの費用の総額を把握し、金利差による返済軽減効果と比較することが大切です。
費用の負担がメリットを上回る場合は、借り換えを再検討する必要があるでしょう。
団体信用生命保険の保障内容が手薄になった
住宅ローンの借り換えを行う際は、借り換え先の団体信用生命保険(団信)に変更することが一般的です。
団信の保障内容は金融機関ごとに異なるため、内容をよく確認せずに借り換えると、思わぬ保障の差が生じる可能性があります。
たとえば、死亡や高度障害に加え「がん診断時」から保障が開始されるタイプの団信に加入していたとしましょう。しかし、借り換えによって基本的な保障のみの団信に切り替わってしまうと、万が一に備えが不十分になるおそれがあります。
こうした違いを見落とさないためにも、借り換えを検討する段階で、現在加入している団信の保障内容を把握し、借り換え先との比較を行うことが大切です。
| ・「団信」に関する記事はこちら 団信とは?住宅ローンとの関係や仕組みをわかりやすく解説 |
住宅ローン控除が受けられなくなった
住宅ローンの借り換えを行う際、条件によっては住宅ローン控除の対象外となり、節税効果を失ってしまう可能性があります。
住宅ローン控除とは、一定の条件を満たす住宅ローンを利用して住宅を取得した際に、年末時点のローン残高の0.7%を所得税や住民税から控除できる制度です。
この控除を受けるには次のような要件を満たす必要あります。
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
- 自ら居住している住宅であること
- 床面積が原則50m2以上ある
- 合計所得金額が2,000万円以下
たとえば、借り換えによって返済期間を10年未満にした場合や、住宅購入とは無関係の借入をまとめた場合には、控除の対象外となる可能性があります。
借り換えを検討する際は、住宅ローン控除が引き続き維持されるかどうかを確認することもポイントのひとつです。
| ・「住宅ローン控除」に関する記事はこちら 【2024年度版】住宅ローンの控除の条件は?申請方法や注意点まとめ |
住宅ローン借り換えのメリット・注意点

住宅ローンの借り換えには、返済負担を軽減できるといったメリットがある一方で、いくつかの注意点も存在します。
借り換えを検討している場合は、メリットだけでなくリスクもあわせて理解しておくことが重要です。ここでは、借り換えのメリットと注意点をそれぞれ解説します。
住宅ローン借り換えのメリット
まずはメリットから見ていきましょう。
住宅ローン借り換えによる主なメリットは次の3つです。
- 返済額が軽減できる
- 返済期間を変更できる
- 団信や保険の保障内容を見直せる
それぞれのメリットについて順に解説します。
返済額が軽減できる
住宅ローンの借り換えによって金利が下がれば、毎月の返済額や総返済額を軽減できる可能性があります。
手続きには一定の手間がかかるものの、一度借り換えてしまえば、それ以降は毎月の返済負担を抑えられ、家計にプラスとなるはずです。
ただし、借り換えには諸費用がかかるため、それらを含めて総合的に判断する必要があります。
以下は、実際の借り換えシミュレーションの一例です。
| 借り換え前 | 借り換え後 | |
|---|---|---|
| 残債 | 2,500万円 | 2,500万円 |
| 返済期間 | 20年 | 20年 |
| 金利 | 2% | 1% |
| 毎月の返済額 | 12万6,470円 | 11万4,973円 |
| 総返済額 | 3,035万2,800円 | 2,759万3,520円 |
このケースでは、月々の返済額が約1万1,000円軽減し、総返済額については約276万円抑えることができます。
仮に借り換えによる諸費用が50万円だったとしても、差し引いてなお200万円以上のメリットが得られる計算です。
返済期間を変更できる
借り換えを行うことで、返済期間を変更することも可能です。
返済期間を短縮すれば、利息の支払いを抑えることができ、総返済額の軽減につながります。一方、返済期間を延長すれば、月々の返済額を抑えることができるため、当面の家計負担を軽くしたい場合に有効です。
以下は、前述で紹介したシミュレーションをもとに、返済期間を延ばした場合の比較表です。
| 借り換え前 | 借り換え後 | 借り換え後 | |
|---|---|---|---|
| 残債 | 2,500万円 | 2,500万円 | 2,500万円 |
| 返済期間 | 20年 | 20年 | 25年 |
| 金利 | 2% | 1% | 1% |
| 毎月の返済額 | 12万6,470円 | 11万4,973円 | 9万4,218円 |
| 総返済額 | 3,035万2,800円 | 2,759万3,520円 | 2,826万5,400円 |
このように、返済期間を25年に延ばすことで、毎月の返済額は約9万4,000円まで抑えられます。
ただし、毎月の返済負担を抑えられる反面、総返済額は20年返済と比べて約67万円増加します。返済期間の設定は、将来の収入や支出計画を見据えながら慎重に判断しましょう。
団信や保険の保障内容を見直せる
借り換えを機に、団体信用生命保険(団信)や保険の保障内容を見直すことができます。
金融機関によって団信の保障内容が異なるため、がん団信や三大疾病保障付き団信など、より手厚い保障が付帯したプランを選ぶことも可能です。
たとえば、がん団信が利用できる金融機関で借り換えを行えば、がんと診断された時点で住宅ローンの残債が全額免除されるような保障が受けられる場合があります。
このような保障が付帯していれば、現在加入しているがん保険を見直し、保険料の軽減や一部解約を検討することも可能です。
住宅ローン借り換えの注意点
一方で住宅ローンの借り換えには次のような注意点があります。
- 煩雑な手続きをすべて自分でする必要がある
- 諸費用が発生する
こうした注意点を踏まえたうえで、借り換えによる効果が総合的に見てプラスになるかを判断することが大切です。ここでは、それぞれの注意点について詳しく解説します。
煩雑な手続きをすべて自分でする必要がある
住宅ローンを新たに組む際には、不動産会社が金融機関とのやり取りや手続きをサポートしてくれることが一般的です。一方で借り換えの場合は、すべての手続きを原則自身で進める必要があり、想像以上に手間がかかることもあります。
借り換え先の金融機関で審査を受けて、契約手続きを行うだけでなく、現在契約しているローンの完済手続きや抵当権の抹消、必要書類の準備なども自身で対応しなければなりません。
そのため、日常的に仕事や家庭の用事で時間が取りにくい方にとっては、借り換えの手続きは大きな負担となる可能性があるでしょう。
諸費用が発生する
前述のとおり、住宅ローンの借り換えを行う際には、事務手数料や保証料、団信保険料、印紙税、登録免許税など、さまざまな諸費用が発生します。
これらを合計すると、一般的に数十万円程度のコストになることも多く、借り換えの効果に大きく影響を与えます。
多くの手間や時間をかけて借り換えを行ったにもかかわらず、諸費用を差し引いた結果「期待していたほどの効果が得られなかった」という状況はなるべく避けたいところです。
そのため、借り換え前には諸費用を含めたシミュレーションを行い、最終的にプラスとなるかどうかを確認することが重要です。
| ・「住宅ローンの借り換えのタイミング」に関する記事はこちら 住宅ローン借り換えのタイミングとメリット・デメリットについて |
住宅ローンの借り換えがメリットになりやすい条件

住宅ローンの借り換えは、すべての方にとって効果が期待できるわけではありません。しかし、とりわけ次の条件に当てはまる場合は借り換えによる効果が出やすくなります。
- 返済期間が10年以上残っている
- ローン残高が1,000万円以上ある
- 現在の金利より1%以上低い金利で借り換えができる
今のローンで返済期間が長く残っていればいるほど、借り換えによって金利を下げた際の効果が大きくなります。
借り換えによるメリットを得るためには、最低でも10年以上の返済期間が残っていることが目安となります。
また、ローン残高が1,000万円を超えていれば、元金が大きいため金利を下げた際の効果も大きく、借り換えによるメリットを実感しやすくなります。
加えて、金利が1%以上低くなるかどうかも重要な判断基準です。
1%未満の差では返済額の軽減効果が限定的となり、借り換えにかかる諸費用のほうが上回る場合もあるためです。
これらの条件に当てはまる数が少ない場合は、借り換えの効果が薄くなる可能性があるため、再検討することをおすすめします。
住宅ローン借り換えで失敗しないための対策

住宅ローンの借り換えは、手続きの手間や諸費用がかかるため、できる限り失敗は避けたいものです。
ここでは、住宅ローンの借り換えで失敗しないために押さえておきたい3つの対策を紹介します。
借り換えによるメリットをよく確認する
住宅ローンの借り換えを検討する際は、実際にどれほどのメリットや効果があるのかを事前に確認しておくことが重要です。
まずは、Web上の無料シミュレーターを活用し、毎月の返済額や総返済額がどの程度軽減できるかを試算しましょう。この段階で、借り換えによる大まかな効果を把握できます。
あわせて、次のようなポイントも確認しておくと安心です。
- 借り換えにかかる諸費用の見積もり
- 借り換え先での団信の保障内容の違い
これらのポイントも確認しておくことで、単なる金利の差だけでなく、トータルコストを考慮した判断ができるようになるでしょう。
専門家に相談する
住宅ローンの借り換えは大きな金額が動くため、不安や迷いを感じるのは当然のことです。その際は専門家に相談することで、客観的かつ冷静なアドバイスを受けられます。
金融機関の担当者はもちろん、Web上の住宅ローン相談サービスや利害関係がなくフラットなアドバイスをしてくれるファイナンシャルプランナー(FP)などに相談すれば、自身では気づきにくいリスクや判断材料を確認することができます。
住宅ローン控除対象ならタイミングをずらす
繰り返しになりますが、住宅ローン控除を受けている場合、借り換えによって返済期間が10年未満になると控除の対象外になるおそれがあります。
返済期間を短縮して利息を減らしたいと考える方も、控除期間が残っているのであれば、借り換えの時期を調整することも選択肢のひとつです。
たとえば、借り換えを年内ではなく翌年に行うだけでも、節税効果に差が出るケースもあります。
借り換えによる利息の削減効果と、住宅ローン控除による節税効果の双方を比較し、シミュレーションを通じて適切なタイミングを見極めましょう。
まとめ
住宅ローンの借り換えは、毎月の返済負担を軽減できる可能性がある一方で「思ったほど金利が下がらなかった」「諸費用がかさんだ」といった失敗例も見られます。そのため、メリットだけでなく、デメリットやリスクなどをきちんと把握し、総合的な判断が求められます。
とりわけ以下の条件に該当する方は、借り換えによる効果が期待できるため、前向きに検討してみると良いでしょう。
- 返済期間が10年以上ある
- 残高が1,000万円を超えている
- 今より1%以上低い金利で借り換えができる
事前に無料のシミュレーターなどで効果を試算し、必要に応じて金融機関やファイナンシャルプランナーに相談することです。金利や返済期間、諸費用などを総合的に判断し、家計にとって有益な選択をしましょう。
この記事のポイント
- 住宅ローン借り換えでよくある失敗例にはどんなものがある?
金利を下げる目的で住宅ローンの借り換えを実施したものの、結果的に「想定より高い金利での借り入れになってしまった」というケースがあります。
これは、住宅ローンの金利が申し込み時や契約時ではなく「融資実行時の金利」で決まる仕組みによるものです。契約から実行までに月をまたぐと、金利改定により想定より高くなることがあります。
詳しくは「住宅ローン借り換えでよくある失敗例」をご覧ください。
- 住宅ローンの借り換えがメリットになりやすい条件は?
次の条件に当てはまる場合は借り換えによる効果が出やすくなります。
- 返済期間が10年以上残っている
- ローン残高が1,000万円以上ある
- 現在の金利より1%以上低い金利で借り換えができる
詳しくは「住宅ローンの借り換えがメリットになりやすい条件」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
月々の返済負担を軽減するために借り換えを検討する場合、固定金利から変動金利に変更するケースが多いです。変動金利に変更することで、一時的に金利が下がり返済負担も軽減できる可能性があります。しかし一方で今後、変動金利が上昇していくことになれば、かえって負担が増えてしまうリスクもあります。
その際の対策としては繰り上げ返済などが有効になるため、日頃からもしもに備えて資産形成を進めておくようにしましょう。

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