高度地区
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高度地区は高さに制限がある地域|内容やメリット・デメリットを解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • 高度地区とは、都市計画法によって自治体が都市計画で定める建物の高さを制限した地域のこと
  • 高度地区は用途地域内において市街地の環境を維持し、土地利用の増進を図る目的で指定される

建物の高さを制限する規制の一つに高度地区があります。
高度地区とは、市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るために建物の高さの最高限度と最低限度を定めた地区のことです。

高度地区はマンション街に指定されることも多いため、住宅を購入する際、不動産会社が行う重要事項説明において高度地区という用語を耳にすることがあるかもしれません。
高度地区とは、どのような規制が設けられた地域なのでしょうか。
この記事では、「高度地区」について解説します。

高度地区は建物の高さ・低さに決まりがある地区

高度地区は建物の高さ・低さに決まりがある地区

高度地区とは、都市計画法によって自治体が都市計画で定める建物の高さを制限した地域のことです。

また、用途地域内において、建物の高さの最高限度と最低限度を定める地域地区でもあります。
用途地域とは、エリアごとに建築可能な建物の用途を定めた規制のことです。
高度地区は、原則として用途地域内に定められる地域地区である点が特徴となります。

そもそも地域地区とは、適正な都市環境を保持するために細かいエリアにおいて土地の使い方を定めた地区のことです。

地域地区は基本的地域地区と補助的地域地区の2種類に大別され、基本的地域地区として用途地域、補助的地域地区には高度地区の他、高度利用地区や景観地区等の地区があります。

高度地区は建築基準法の規制ではなく都市計画法の規制ですが、建物の高さを制限する規制であることから建物の形態に直接影響を与える点が特徴です。

最低限高度地区と最高限高度地区とは

高度地区は、建物の高さの最高限度と最低限度を定める地域地区であるため、最低限度が定められた最低限高度地区と、最高限度が定められた最高限高度地区があります。

最低限高度地区は高層化を促進する意味合いが強く、最高限高度地区は高層化を抑制する意味合いが強い地域です。

国土交通省の資料によると、2022年3月31日時点における全国の高度地区は最低限高度地区が3,500.8ha、最高限高度地区が220,742.9haとなっています。

最低限高度地区と最高限高度地区を合計すると224,243.7haであり、このうち最低限高度地区が占める割合は、わずか約1.6%に過ぎません。

高度地区は建物の高さの最低限度を定めるといっても、最低限度を定めている地域はわずかであり、ほとんどが最高限度のみを定めている地域になります。

また、高度地区は準都市計画区域でも定めることができます。

準都市計画区域とは、乱開発を防止するために定められた都市計画区域とは別に定められる区域のことです。
準都市計画区域の高度地区では、例外的に高さの最低限度は定めることはできず、最高限度のみ定められることになっています。

高度地区が定められるのは原則として用途地域ですが、用途地域は主に都市計画区域内の市街化区域内に定められます。
市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域や概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域のことです。

ざっくりとしたイメージとしては、用途地域は都市部、準都市計画区域はやや田舎の地域に存在します。

用途地域は都市部にあることから、建物の高層化を促進するための最低限高度地区が定められることがあり、逆に抑制するための最高限高度地区も定められることもあります。

それに対して、準都市計画区域は乱開発を防止する必要があるやや田舎にあるため、建物の高層化を抑制する最高限高度地区しか定められないことになっているのです。

出典:都市計画区域、市街化区域、地域地区の決定状況|国土交通省

高度地区の種類

高度地区は自治体が定める内容であるため、ルールや種類は自治体によって異なります。

第1種や第2種のように複数の種類を設けている自治体もあれば、高度地区自体を定めていない地域も存在します。

高度地区を設定する目的

高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、土地利用の増進を図る目的で指定されます。

例えば、住居系の用途地域で高度地区を定めている場合には、日照や通風等を確保し、良好な居住環境を確保するために建築物の高さの最高限度を定めるケースがあります。

高度地区と建築基準法における主な高さ制限とは

高度地区と建築基準法における主な高さ制限とは

高度地区は、都市計画法の規制です。
一方で、建築基準法には建物の形態を制限する規制がいくつか存在します。

建築基準法の形態規制の中には、高さに影響を与える規制も存在し、高度地区とは無関係に建物の高さは建築基準法によって制限されることも多いです。
この章では、建築基準法に見られる建物の高さ制限について解説します。

絶対高さ制限

絶対高さ制限とは、第一種または第二種の低層住居専用地域および田園住居地域に適用される高さ制限のことです。

第一種・第二種の低層住居専用地域および田園住居地域とは、用途地域の一つであり、主に低層の戸建て住宅街に指定されている地域になります。

絶対高さ制限では、建物の高さは10mまたは12mに制限されています。

北側斜線制限

北側斜線制限とは、住居系の用途地域において北側に隣接する土地の日照を確保するために建物の北側の高さを制限した規制です。

第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域、田園住居地域の3つの用途地域では5mの高さを起点に1.25の斜線勾配の制限を受けます。

また、第1種中高層住居専用地域と第2種中高層住居専用地域の2つの用途地域では10mの高さを起点に1.25の斜線勾配の制限を受けることになります。

日影規制

日影規制とは、中高層建築物が近隣の敷地に落とす影の時間を制限し、近隣の日照条件の悪化を防ぐための規制のことです。

日影規制では、敷地境界線から水平距離で5m超10m以内と、10m超の範囲において、影が規制されます。
冬至日の8時から16時(北海道では9時から15時)の8時間に、それぞれの範囲に影がかかる時間を制限する規制です。

道路斜線制限

道路斜線制限とは、道路周辺の日照や衛生、安全性等を確保するため、建築物の高さが一定勾配の斜線の内側に収まるように定められた規制のことです。

道路斜線制限の影響を受けると、道路側に面した部分の建物の上部が斜めに削られる形となります。

隣地斜線制限

隣地斜線制限とは、隣地との境界周辺の日照や採光、通風を確保し、高い建物が建つことで生じる閉塞感を防ぐことが目的に定められた規制のことです。

隣地斜線制限の影響を受けると、隣地側に面した部分の建物の上部が斜めに削られる形となります。

高度地区と高度利用地区の違い

高度地区と高度利用地区の違い

高度利用地区とは、市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新を図るため、容積率の最高限度および最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度、壁面の位置を定める地区のことです。

高度利用地区は、住宅が密集し敷地が細分化されている市街地を一体的に再開発できるように誘導するための地区となります。

高度利用地区は、高度地区と同様に都市計画法上の補助的地域地区の1つです。

ただし高度利用地区で制限される内容は、容積率と建ぺい率、建築面積、壁面の位置であり、建物の高さの最高限度や最低限度は含まれていない点が、高度地区との相違点となります。

容積率とは敷地面積に対する建物の延床面積の割合、建ぺい率とは敷地面積に対する建築面積の割合、建築面積とはおよそ建物を上から見た面積のことです。

高度地区に指定されるメリット・デメリット

高度地区に指定されるメリット・デメリット

高度地区に指定されるメリットとデメリットについて解説します。

メリット

高度地区に指定されている地域は、主に建物の最高高さが制限されていることから、景観が維持され、日照が確保されやすい点がメリットです。

高度地区では、急に規制以上の高い建物が建って景観や日照が害されることはないといえます。

デメリット

高度地区では、高さの最高限度規制により容積率が消化しきれない可能性がある点がデメリットです。

想定していた規模の建物が建てられない可能性があります。

高度地区かどうかの確認方法

高度地区かどうかの確認方法

規模の大きな自治体では、インターネットによる情報公開が進んでいるため、自治体のホームページで高度地区かどうかを確認することができます。

情報公開がなされていない自治体では、窓口に行って直接確認することが可能です。
都市計画課や街づくり課等の名称の課で聞くことができます。
市町村役場に出向いたら、受付に「高度地区の確認をしたい」と申し出れば担当の窓口を教えてもらうことができます。

高度地区を購入するにあたっての注意点

高度地区を購入するにあたっての注意点

高度地区の土地は、建物が容積率を最大限に消化しきれない可能性があります。

そのため、土地を購入する前は、設計会社に必ずボリュームチェックを依頼して、建築可能な建物の規模を確かめることが注意点となります。

ボリュームチェックとは、その土地でどの程度の規模の建物が建てられるかをチェックするために行う設計のことです。
設計者は、高度地区を含む全ての規制を調べたうえで図面を描いてくれます。

そのため、ボリュームチェックを行ったうえで土地を購入すれば、思っていたよりも小さい建物しか建てられなかったという想定外の失敗を防ぐことができます。

まとめ

以上、高度地区について解説してきました。
高度地区とは、建物の高さの最低限度と最高限度を定めることができる地区のことです。
高度地区は都市計画法の規制であり、建築基準法で定められている絶対高さ制限等とは別に存在する規制になります。

高度地区が指定されている地域のメリットは、景観が維持され、日照が確保されやすいという点です。
デメリットは、容積率を完全に消化しきれない可能性があるという点になります。
高度地区は、大きな自治体であればホームページで確認でき、自治体の窓口でも確認することができます。
高度地区を理解するうえで、参考にして頂けると幸いです。

この記事のポイント

高度地区とはどんな地区?

高度地区とは、都市計画法によって自治体が都市計画で定める建物の高さを制限した地域のことです。

また、用途地域内において、建物の高さの最高限度と最低限度を定める地域地区でもあります。

詳しくは「高度地区は建物の高さ・低さに決まりがある地区」をご覧ください。

高度地区と高度利用地区の違いは?

高度利用地区は、高度地区と同様に都市計画法上の補助的地域地区の1つです。

ただし高度利用地区で制限される内容は、容積率と建ぺい率、建築面積、壁面の位置であり、建物の高さの最高限度や最低限度は含まれていない点が、高度地区との相違点となります。

詳しくは「高度地区と高度利用地区の違い」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

高度地区は、マイホームの購入者にとっては影響の少ない規制です。マンションや建売住宅、中古住宅はすでに建っている建物を購入するため、購入者に影響はほとんど与えないといえます。また、注文住宅のための土地購入であっても、最高限度の高さは20m以上の規制が多いことから戸建て住宅の建設には実質的に影響を与えません。
そのため、高度地区は賃貸マンション等の中高層の建物を建設する予定で土地を買う人が意識すべき規制です。中高層の建物による土地活用を検討している人は、高度地区の規制に注意して頂ければと思います。

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