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民間の賃貸住宅の家賃補助制度とは?種類や補助の条件・注意点を解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 賃補助制度とは、企業や国、自治体が民間の賃貸物件(アパートやマンション)に住む入居者に対して家賃の一部を補助する制度のこと
  • 地方自治体の中には独自の家賃補助制度を設けているところもある

生活するうえで「少しでも住居費を抑えたい」と考える方は多いのではないでしょうか。特に近年は物価の高騰が続いており、家賃の負担を重く感じている方も少なくありません。
そのような際に、一定の条件を満たすことで利用できるのが、民間の賃貸住宅における「家賃補助制度」です。

家賃補助制度は、企業や自治体、国などが行っており、家賃の一部を補助してくれる仕組みです。活用することで、毎月の住居費の負担を軽減できる可能性があります。

この記事では、家賃補助制度の基本的な仕組みから、民間企業・自治体・国が実施している具体的な制度内容まで詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。

民間住宅の家賃補助制度とは

民間住宅の家賃補助制度とは

家賃補助制度とは、民間の賃貸物件(アパートやマンション)に住む入居者に対して、家賃の一部を補助する制度のことです。補助の具体的な金額は制度によって異なり、支給される額や期間、対象条件などはケースバイケースとなっています。

家賃補助を受けられる主な提供元は、以下のとおりです。

  • 企業(勤務先)
  • 自治体

企業が実施する家賃補助は、福利厚生の一環として導入されていることが多く、従業員の住居費をサポートする目的があります。

一方、自治体や国による補助制度は、地域活性化や生活支援を目的として設けられていることが多いです。それぞれの自治体が独自に設定しているものや、国の支援策として実施されている制度もあり、その内容はさまざまです。

ただし、いずれの制度も利用には一定の条件が設けられています。

特に自治体や国の家賃補助制度では、所得制限や年齢、子育て世帯であることなど、細かな要件を満たさなければ補助を受けられません。

勤務先による民間賃貸住宅家賃補助制度

勤務先による民間賃貸住宅家賃補助制度

企業の中には福利厚生の一環として、従業員の家賃を補助しているところもあります。
具体的には「住宅手当」として支給されるケースや、企業が借り上げた住宅を格安で貸し出す「借上社宅」などがあります。

ただし、これらの制度を利用するには「正社員であること」や「世帯主であること」など、企業ごとに異なる条件が設けられているケースが一般的です。

また、近年ではリモートワークの普及により、通勤を前提としていた家賃補助制度が見直され、廃止される事例も出てきています。以下では、代表的な制度である「住宅手当」と「借上社宅」について詳しくみていきましょう。

住宅手当

企業の住宅手当とは、毎月の給料に上乗せする形で支給される家賃補助のことです。

従業員の住居費負担を軽減することを目的とした福利厚生の一つとして、多くの企業で導入されています。

支給条件や金額は企業によって異なり、「一律で2万円支給」や「家賃の50%を補助」といった形で設定されているのが一般的です。

たとえば「家賃の50%を補助」とする企業で、家賃月10万円の物件に住んでいる場合は、月5万円が住宅手当として支給されることになります。

特に、都市部など賃貸相場の高い地域にお住まいの方にとっては、この住宅手当が家計に与える効果は大きいといえるでしょう。

借上社宅

企業の借上社宅とは、会社が民間の賃貸物件を借り上げ、賃料や初期費用を補助したうえで、従業員に貸し出す制度のことです。

従業員は実際の家賃よりも安価な負担で入居できるため、割安で快適な住まいを得られるのが特徴です。

特に、収入が安定していない新卒の社員にとっては、借上社宅を利用することで家賃を大幅に抑えられ、生活費の負担を軽減できます。

また、企業によっては引っ越し費用を負担してくれる「引っ越し手当」などの制度を併用できる場合もあるため、合わせて活用したいところです。

地方自治体による民間賃貸住宅家賃補助制度

地方自治体による民間賃貸住宅家賃補助制度

地方自治体の中には、独自の家賃補助制度を設けているところもあります。こうした制度は地域の実情に合わせて設計されており、新婚世帯、子育て世帯、高齢者世帯などを対象にしているケースが多いのが特徴です。

また、補助を受けるには「世帯の総所得が〇〇万円以下」といった所得制限が設けられていることもあり、対象となる条件は自治体ごとで異なります。

以下では、地方自治体が独自に実施している代表的な家賃補助制度について紹介します。

東京都新宿区「民間賃貸住宅家賃助成」

東京都新宿区では区内の民間賃貸住宅に居住する子育て世帯を対象に、家賃の一部を補助する「民間賃貸住宅家賃助成」制度を実施しています。

助成額と助成期間は以下のとおりです。

内容
助成額月額3万円
助成期間最長5年間

この制度を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な要件は以下のとおりです。

【対象となる主な要件】

  • 助成申請の基準日(10月1日)の前日までに、新宿区内の民間賃貸住宅に住み、住民登録を済ませていること
  • 賃貸契約の名義人が申請者本人またはその配偶者であること
  • 義務教育を修了していない子どもと同居し、扶養していること
  • 家賃が月額22万円以下であること
  • 世帯全体の前年の総所得合計が520万円以下であること
  • 家賃の滞納がないこと
  • 住民税の滞納がないこと
  • 経済的に自立していること

所得や家族構成などによっては利用できないケースもあるため、必ず新宿区の公式サイトや窓口で詳細を確認したうえで申請準備を進めていきましょう。

出典:民間賃貸住宅家賃助成|新宿区

東京都豊島区「子育てファミリー世帯家賃助成制度」

東京都豊島区では、子育て世帯が安心して暮らせる住環境を確保できるよう、独自の家賃助成制度を設けています。

この制度は子育て世帯が区内の良質な民間賃貸住宅へ住み替える際に、一定の条件を満たす場合、転居後の家賃と区が定める基準家賃との差額の一部を助成するものです。

助成額と助成期間は以下のとおりです。

内容
助成額月額3万円
助成期間最長5年間

主な対象要件は以下のとおりです。

  • 15歳以下の児童を1人以上扶養しており、かつ同居していること
  • 前年の世帯月額所得が33万8000円以下であること
  • 家賃および住民税の滞納がないこと
  • 生活保護など、他の公的住宅補助を受けていないこと
  • 賃貸借契約において、申込者またはその配偶者が借主になっていること
  • 住み替え後の家賃が月額17万円以下であること

そのほかにも、最低住居面積などの追加条件が設けられているため、詳細は豊島区の公式サイトで確認しておくことをおすすめします。

なお、募集枠を超える応募があった場合は抽選となるため、条件を満たしていても必ず利用できるとは限りません。

出典:子育てファミリー世帯家賃助成制度(令和7年4月以降)|豊島区

福岡県住宅供給公社「新婚・子育て世帯向け入居支援制度」

福岡県住宅供給公社では、新婚世帯や子育て世帯が安心して住まいを確保できるよう、家賃の一部を減額する「新婚・子育て世帯向け入居支援制度」を実施しています。

助成額と助成期間は以下のとおりです。

内容
助成額月額1万円の家賃減額(※月額家賃4万円以下の住宅は、割引後家賃が一律3万円)
助成期間最長10年間

【新婚世帯の要件】

  • 申込者とその配偶者の年齢合計が80歳以下
  • 婚姻済の方は婚姻日から5年以内であること
  • 事実婚・パートナーシップの方は同居開始から5年以内であること
  • 婚約中の方は、1年以内に婚姻する予定であること

【子育て世帯の要件】

  • 18歳未満の子ども(その年度末時点で18歳以下を含む)を扶養し、同居していること
     ※対象となる子どもには、孫、甥、姪などの親族も含まれます

このように、対象者の家族構成や関係性によって申請条件が細かく分かれているため、自身が制度の要件を満たしているかどうかを事前に確認しておきましょう。

出典:新婚子育て・近居世帯入居支援制度|福岡県住宅供給公社

国による民間賃貸住宅家賃補助制度

国による民間賃貸住宅家賃補助制度

国による家賃補助制度もいくつか用意されています。自治体が独自に行う助成制度に加えて、国が関与する制度を知っておくことで、より幅広い選択肢から支援を受けることが可能になります。

主な制度は以下のとおりです。

  • 住居確保給付金
  • 住宅セーフティネット住宅情報提供システム
  • 移住支援金(地方創生企業支援事業・地方創生移住支援事業)
  • 特定優良賃貸住宅

それぞれの制度について順にみていきましょう。

住居確保給付金

住居確保給付金は、生活困窮者自立支援法に基づいて実施されている家賃補助制度です。

主に、離職や廃業などにより収入が大きく減少した方を対象としており、就労に向けた支援と合わせて、住まいを安定させる目的で支給されます。

この制度の主な概要は、以下のとおりです。

内容
制度の目的離職や廃業などで収入が減った方への住居支援
対象者主に離職・廃業などにより生活が困窮している方
支給額家賃相当額(自治体が定める上限あり)
支給期間原則3か月(条件を満たせば2回まで延長可能、最長9か月)

支給は本人ではなく、直接賃貸住宅のオーナーや管理会社に振り込まれる仕組みとなっており、家賃滞納の防止にもつながります。

なお、本制度は2025年4月の改正により、「家賃の低廉な住宅への転居費用支援」も加わりました。

この制度は、家計改善支援などのサポートを受けつつ、より安価な住まいへ転居することで生活の再建が見込まれる場合に、一定の収入条件のもとで転居費用が補助される仕組みです。

出典:住居確保給付金 制度概要|厚生労働省

住宅セーフティネット住宅情報提供システム

住宅セーフティネット制度は、住宅の確保が難しい「住宅確保要配慮者」が安心して賃貸住宅に住めるよう、国が推進する支援制度です。

対象となるのは、低所得者や高齢者、障害者、子育て世帯など、住まいに特別な配慮が必要な方々です。

この制度は、以下の3つの主要な取り組みから成り立っています。

  • 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度
  • 専用住宅とするための改修費補助や入居に関する経済的支援
  • 入居希望者と登録住宅のマッチングと支援体制

住宅確保要配慮者は、登録された賃貸住宅の情報をインターネットなどで簡単に検索でき、希望する物件が見つかれば、その住宅に対して入居申請を行うことができます。この制度により、住宅確保要配慮者も安心して住まいを見つけられる環境が整えられます。

出典:住宅セーフティネット制度|国土交通省

移住支援金(地方創生企業支援事業・地方創生移住支援事業)

移住支援金とは、国の予算を活用し、地方自治体が実施する家賃補助制度のひとつです。

主に、東京23区に在住または近郊に住み23区へ通勤していた人が、東京圏外または条件不利地域(※過疎地域など)に移住し、起業や就業等を行う場合に支給される制度です。

【移住支援金の概要】

  • 支給額:最大100万円(単身の場合は最大60万円)
  • 対象者:東京23区に住んでいた人、または東京圏から23区へ通勤していた人
  • 申請方法:移住後、移住先自治体に申請し、審査を経て支給

支援金は移住後に就業や起業を開始し、その事実が確認された後に支給されます。
地方でテレワークを継続したい方や、起業を目指す方にとっても活用しやすい制度といえるでしょう。

ただし、移住支援金には返還規定がある点に注意が必要です。たとえば、申請後5年以内に移住先の地域から転出した場合などには、支給された金額の返還を求められることがあります。

詳細については、移住希望先の市町村へお問い合わせください。

出典:移住支援金|内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局 内閣府地方創生推進事務局

特定優良賃貸住宅

特定優良賃貸住宅(特優賃)とは、民間の土地所有者や事業者が中堅所得者層向けに建設した良質な賃貸住宅で、都道府県知事または政令指定都市の長の認定を受けた住宅です。

公的な支援のもと整備されているため、一般の民間賃貸住宅と比べて家賃が抑えられており、礼金・仲介手数料・更新料が不要なケースもあるのが特徴です。入居の可否には所得制限があり、その基準は自治体によって異なります。

たとえば大阪市の場合は、月額所得が20万円(12万3,000円)以上60万1,000円以下の世帯が対象とされています。

なお、特優賃では入居時に設定される家賃補助が、年数の経過とともに段階的に減額されていく仕組みとなっており、将来的には補助が終了し、当初より家賃負担が増える可能性もあります。

そのため制度の内容をよく理解したうえで、長期的な家計計画を立てることが大切です。

出典:特定優良賃貸住宅 公社すまいりんぐ|大阪市住まい公社

民間賃貸住宅家賃補助制度を受けるときの注意点

民間賃貸住宅家賃補助制度を受けるときの注意点

家賃補助制度を活用すれば、毎月の家賃負担を軽減できるなどのメリットがありますが、一方で注意すべき点もあります。ここでは、家賃補助を受ける際に押さえておきたいポイントを紹介します。

企業の家賃補助は課税対象になることがある

企業が従業員向けに実施する家賃補助制度のうち、住宅手当として支給されるものは給与の一部とみなされるため、所得税や住民税の課税対象になります。

そのため、たとえ家賃の負担が軽減されても、税金や社会保険料の負担が増える可能性がある点に注意が必要です。

一方で、社宅制度を利用している場合は、一定条件を満たせば課税対象外となるケースもあります。

たとえば社宅の賃料相当額に対して、従業員が50%以上を自己負担していれば、会社からの補助分は非課税として扱われます。

申請条件や期間をしっかり確認しておく

賃貸住宅の家賃補助制度を利用するには、あらかじめ定められた条件を満たす必要があります。

特に自治体や国が実施している制度では、収入・世帯構成・居住地などの要件が細かく設定されており、自身で内容を確認して申請する必要があります。

さらに、申請には期限が設けられている場合が多く、締切を過ぎると制度自体を利用できなくなる可能性があります。制度を確実に活用するためには、早めに情報を集め、必要な書類をそろえて余裕を持って準備することが大切です。

まとめ

民間住宅の家賃補助制度とは、民間の賃貸物件に住んでいる入居者に対して、家賃の一部を補助する制度のことを指します。この補助制度は、主に以下の3つの主体によって提供されています。

  • 企業(勤務先)
  • 地方自治体

企業の場合は「住宅手当」や「借上社宅」などがあり、そのうち住宅手当は、支給額が課税対象となるケースがあります。一方で、社宅制度を利用している場合には、一定の条件を満たすことで非課税扱いとなる可能性があります。

また、自治体や国の家賃補助制度を利用するには、定められた申請条件を満たす必要があり、自ら申請手続きを行わなければなりません。

家賃補助制度をうまく活用すれば、年間で数十万円単位の家賃軽減につながる可能性もあります。そのため、対象となる制度がある場合は内容をしっかり確認し、必要な書類を揃えたうえで忘れずに申請しましょう。

この記事のポイント

地方自治体による民間賃貸住宅家賃補助制度にはどんなものがある?

一例として、東京都豊島区では子育て世帯が安心して暮らせる住環境を確保できるよう、独自の家賃助成制度を設けています。

この制度は子育て世帯が区内の良質な民間賃貸住宅へ住み替える際に、一定の条件を満たす場合、転居後の家賃と区が定める基準家賃との差額の一部を助成するものです。

詳しくは「地方自治体による民間賃貸住宅家賃補助制度」をご覧ください。

国による民間賃貸住宅家賃補助制度にはどんなものがある?

一例として、住居確保給付金があります。住居確保給付金は生活困窮者自立支援法に基づいて実施されている家賃補助制度です。

主に、離職や廃業などにより収入が大きく減少した方を対象としており、就労に向けた支援と合わせて、住まいを安定させる目的で支給されます。

詳しくは「国による民間賃貸住宅家賃補助制度」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

今回紹介した制度以外にも、国や自治体では、社会情勢の変化や地域ごとの課題に応じて、新たな家賃補助制度が設けられることがあります。たとえば、物価高騰への対策や、若年層・子育て世帯・高齢者世帯の定住支援など、目的に応じてさまざまな制度が登場しています。こうした情報は、必ずしも広く告知されるとは限らないため、積極的に情報を取りに行くことが重要です。制度をうまく活用して、日々の生活費の負担を少しでも軽くしていきましょう。

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