閉鎖登記簿
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閉鎖登記簿はどのようなときに使う?取得方法や記載内容について解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 閉鎖登記簿には売買や合併などの理由で現在の登記簿から抹消された不動産の情報が記録されている
  • 閉鎖登記簿を確認することで、不動産の過去の所有者や権利関係の移り変わりを把握することができる

不動産に関する情報は、登記簿を通じて所在地や面積、所有者、抵当権などの権利関係を確認できます。ただし、すでに合筆や滅失などによって登記が閉鎖された土地や建物については、通常の登記簿では情報を確認することができません。こうした場合に役立つのが「閉鎖登記簿」です。

この記事では、閉鎖登記簿の基本的な仕組みや、確認が必要となる場面、活用のポイント、そして取得方法について詳しく解説します。

不動産の閉鎖登記簿の概要と閉鎖される理由

不動産の閉鎖登記簿の概要と閉鎖される理由

不動産の登記簿は、その土地や建物の権利関係や所有者の履歴を記録した重要な公的書類です。しかし、すべての不動産の情報が常に現行の登記簿に記載されているわけではありません。

特に、過去に売買や合併などの理由で現在の登記簿から抹消された不動産の情報は「閉鎖登記簿」に記録されており、これを調べることで古い所有者や取引履歴を確認できます。

ここでは、閉鎖登記簿の概要や、関連する謄本や閉鎖事項全部証明書について詳しく解説するとともに、登記簿が閉鎖される理由や保存期間についても説明します。

閉鎖登記簿・謄本・閉鎖事項証明書とは

「閉鎖登記簿」とは、登記が閉鎖された不動産の記録を保管するための帳簿や、データ化された磁気ディスクのことをいいます。これらを閲覧することで、過去の所有権や権利関係の履歴を把握できます。

「閉鎖登記簿謄本」は、紙の登記簿として管理されていた時代の閉鎖記録を写したものです。「謄(とう)」という字には、「原本をそのまま写す」という意味があります。

一方、「閉鎖事項証明書」は、磁気ディスクに保存されたデータ形式の閉鎖登記簿の内容を証明する書類です。

つまり「閉鎖登記簿謄本」と「閉鎖事項証明書」は、どちらも内容は同じですが、保管されている形式(紙かデータか)が異なるという違いがあります。

以下に、それぞれの概要を比較表にまとめています。

【閉鎖登記簿・謄本・閉鎖事項証明書の比較】

概要
閉鎖登記簿登記が閉鎖された土地や建物の過去の登記記録そのもの
閉鎖登記簿謄本紙の閉鎖登記簿をそのまま写したもの。紙の登記簿時代の記録に対応
閉鎖事項証明書データ化された閉鎖登記簿の内容を証明するもの。磁気ディスクに保存された記録に対応

登記簿が閉鎖される理由と保存期間

登記情報が閉鎖され、閉鎖登記簿として保存される理由には、主に次のようなケースがあります。

  • 土地が合筆された場合(複数の筆※をまとめて1筆にする手続き)
  • 建物が滅失した場合(取り壊されて存在しなくなった場合)
  • 紙の登記簿をデータ化して、磁気ディスクに保存する場合

※土地登記簿にて1個の土地を数える単位

これらの理由により、現行の登記簿から情報が抹消され、閉鎖登記簿として記録が保管されます。

閉鎖登記簿の保存期間は、不動産の種類や閉鎖された時期によって異なります。

保存期間       
土地の登記簿50年間
建物の登記簿30年間
1988年7月1日以前に閉鎖された土地・建物20年間

なお、保存期間を経過した閉鎖登記簿やデータは、法務局長の許可を受けたうえで廃棄または削除されることがあります。そのため、過去の不動産情報を調査する場合は、早めの対応が重要です。

閉鎖登記簿が必要になるシーン

閉鎖登記簿が必要になるシーン

閉鎖登記簿には、土地や建物の過去の情報が記録されています。では、どのような場面でこの登記簿が必要とされるのでしょうか。以下では、閉鎖登記簿が活用される具体的なシーンをご紹介します。

土地や建物の過去の使用歴を確かめたい

閉鎖登記簿は、土地や建物が過去にどのように使われていたかを調べたいときに活用されます。

土地を購入してこれから建物を建てようと考えている場合、その土地が以前どのような用途で使われていたかを知ることで、安心して計画を進めることができます。

たとえば、過去にガソリンスタンドや自動車整備工場などがあった場合には、油分や重金属による土壌汚染のリスクを想定しなければなりません。

また、過去にお墓や火葬場があった場所など、地域の方にとってマイナスの印象が残る土地であった場合、購入後に気持ちの面で不安を感じる可能性もあるでしょう。

不動産会社が過去の使用歴を調べてくれることもありますが、義務ではないため対応しないケースも多くあります。そのため、自身で閉鎖登記簿を活用し、土地の履歴を確認できるようにしておくと安心です。

過去の所有者や利権関係を確かめたい

閉鎖登記簿を確認することで、不動産の過去の所有者や権利関係の移り変わりを把握できます。

こうした情報をあらかじめ調べておくことで、その物件にトラブルやリスクが潜んでいないかを見極める手がかりになります。

特に売買の際には、過去の所有者が頻繁に入れ替わっているような物件は注意が必要です。

たとえば、短期間に何度も転売されている土地や建物は、不自然な値動きや問題を抱えていた可能性も考えられます。

建築上の瑕疵がある物件や、近隣トラブルの影響で手放されたケースなどもあり得るため、表面上の情報だけでは判断がつかないこともあります。

閉鎖登記簿に記載されている内容

閉鎖登記簿に記載されている内容

ここからは、閉鎖登記簿にどのような情報が記載されているのかについて解説します。

閉鎖登記簿は「表題部」と「権利部」の2つで構成されています。それぞれにどのような情報が含まれているのか、次の項目で詳しくみていきましょう。

表題部

表題部には、土地や建物の物理的な状況が詳細に記載されています。

現時点での所有者や権利関係ではなく、不動産そのものの「形」や「性質」に関する情報を把握できます。

記載内容は土地と建物で異なり、それぞれ以下のような情報が記載されています。

記載項目内容
土地所在市町村名・字名まで記載
(例:〇〇市△△町)
地番登記上の土地番号
地目宅地・田・畑・山林など、土地の用途区分
地積登記簿上の面積
登記の日付と理由登記が行われた年月日とその理由
(例:分筆、新築など)
建物所在市町村名・字名・家屋番号まで記載
(例:〇〇市△△町××番)
種類居宅、共同住宅、店舗、倉庫など建物の用途
構造木造、鉄筋コンクリート造など、構造の種別
床面積各階ごとの床面積が㎡で記載される
登記の日付と理由登記がされた日と、理由
(例:新築、など)

このように、表題部を確認することで、土地や建物の基本的な性質や規模、登記の経緯などを知ることができます。

権利部

権利部には、その不動産にどのような権利が設定されているかが記載されています。
権利部は大きく「甲区」と「乙区」に分類されており、それぞれ記載されている内容が異なります。

甲区には、不動産に設定された権利の中でも所有権に関する登記が記録されています。
その土地や建物がこれまでに誰の所有だったのかを確認したい場合は、この甲区の記載を見ることで、所有者の履歴をたどることが可能です。

甲区の主な記載項目は以下のとおりです。

記載内容
順位番号登記の記録順に付された番号
登記の目的所有権の保存・移転・相続など
登記の日付・受付番号登記を行った日と受付番号
権利者その他の事項所有者の氏名・住所など

一方の乙区には、所有権以外の権利関係が記載されます。

たとえば、抵当権、地上権、賃借権などの用益・担保権が対象です。

金融機関の担保に入っているかどうかや、第三者との使用契約が設定されているかといった情報を知る際には、この欄を確認します。

乙区の主な記載項目は以下のとおりです。

記載内容
順位番号登記の記録順に付された番号
登記の目的抵当権の設定・変更・抹消、賃借権の設定など
登記の日付・受付番号登記を行った日と受付番号
権利者その他の事項権利者の氏名・住所、債権額、契約内容など

チェックしたいポイント

閉鎖登記簿を調べる際、特に注目したいのが「表題部の地目」と「権利部の記載内容」です。

これらは、不動産の安全性や権利関係に関わる重要な情報であり、購入や活用を検討するうえで必ず確認しておきたいポイントです。

まず、表題部に記載されている「地目」は、その土地の用途(宅地・田・畑・山林など)を示しており、地盤の強度や地質の安全性の判断材料になります。たとえば、以前まで田や畑だった土地では地盤が軟弱な場合もあり、建築予定がある場合には注意が必要です。

また、権利部では、過去に設定されていた所有権やその他の利権関係の履歴を確認できます。たとえば、所有者が頻繁に変わっていたり、過去に複数の抵当権が設定されていたりする場合は、何らかのトラブルを抱えていた可能性も考えられるでしょう。

閉鎖登記簿謄本の取得方法

閉鎖登記簿謄本の取得方法

閉鎖登記簿謄本や閉鎖事項証明書が必要な場合は、所定の手続きを行うことで誰でも取得することが可能です。

ここでは、閉鎖登記簿の取得方法として「法務局での取得」と「郵送での取得」の2つの方法について詳しく解説します。

管轄法務局での取得手続き

郵送での取得手続き

データ化されていない閉鎖登記簿の写し(閉鎖登記簿謄本)を取得したい場合は、登記記録が閉鎖された当時の管轄法務局での手続きが必要です。

申請時には「登記事項証明書・登記簿謄本抄本交付申請書」に必要事項を記入し、窓口に提出します。

管轄の法務局は、不動産の所在地番や家屋番号によって異なります。所在地番や家屋番号の調べ方としては、以下のような方法があります。

  • 法務局に電話で問い合わせる
  • 市町村役場で確認する
  • 登記所備え付けの地図(ブルーマップ)で調べる

取得申請書に記入する主な内容は以下のとおりです。

項目内容
取得者の住所・氏名申請者本人の情報
謄本が必要な不動産の所在地土地や建物の所在地番または家屋番号
所要事項の選択「合筆・滅失などによる閉鎖登記記録」または「コンピューター化に伴う閉鎖登記記録」のいずれかにチェックを入れる

下記は、登記簿謄本交付申請書の記入例です。

登記事項証明書
出典:不動産登記事項証明書等の交付請求書|法務局

申請が完了すれば手数料を支払い、閉鎖登記簿謄本を受け取ることができます。なお、混雑状況や処理のタイミングによっては、受け取りに時間がかかることもあるため、余裕をもって手続きすることをおすすめします。

郵送での取得手続き

閉鎖登記簿謄本や閉鎖事項証明書は、郵送でも取得可能です。郵送の場合も、手続きは該当不動産を管轄する法務局あてに申請する形になります。

申請に使用する「登記事項証明書・登記簿謄本抄本交付申請書」は、最寄りの法務局で入手するか、法務省のホームページからダウンロードして印刷することが可能です。

申請書には、窓口申請と同様に「合筆、滅失などによる閉鎖登記簿・記録」の欄にチェックを付け、取得者の氏名・住所、不動産の所在地など必要事項を正確に記入します。

申請の際は、以下の2点を封筒に入れて郵送します。

  • 記入済みの申請書
  • 切手を貼付した返信用封筒(返信先の住所・氏名を明記)

申請が受理されると、法務局から閉鎖登記簿謄本が郵送で届きます。

閉鎖事項証明書の取得方法

閉鎖事項証明書の取得方法

続いては、データ化された閉鎖登記簿の写しである「閉鎖事項証明書」の取得手続きについて解説します。

取得方法は「法務局の窓口」と「オンライン申請」の2つです。それぞれの手順について詳しくみていきましょう。

法務局での取得手続き

閉鎖登記簿謄本の場合は、該当不動産の管轄法務局でしか取得できませんでしたが、閉鎖事項証明書は全国どの法務局でも取得可能です。

近くの法務局で手続きを済ませたい場合は、事前に法務省のホームページで所在地や連絡先を確認しておくと安心でしょう。

窓口での申請方法は、基本的に閉鎖登記簿謄本のときと同様です。
「登記事項証明書・登記簿謄本抄本交付申請書」に必要事項を記入し、申請するだけで手続きが行えます。

その際、証明書の種類として「コンピュータ化に伴う閉鎖登記簿」の欄にチェックを入れるのがポイントです。

オンライン申請での取得手続き

閉鎖事項証明書は、法務局の窓口だけでなくオンラインからも申請できます。
オンライン申請を行うと、最寄りの法務局窓口での受け取りか、郵送での受け取りかを選択することになります。

申請は、法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」から行います。

まずは利用者アカウントを登録し、ログイン後、ホーム画面にある「かんたん証明書請求」を選択します。画面の案内に従って操作を進めていき「閉鎖事項証明書の請求」を選びましょう。

インターネット環境があれば自宅から申請できるため、忙しい方や遠方の方に利用しやすい方法です。

・「登記簿謄本の取得方法」に関する記事はこちら
登記簿謄本の取得方法 オンラインでの方法についても解説

まとめ

閉鎖登記簿は、すでに登記が抹消された土地や建物に関する過去の情報を確認できる重要な資料です。現行の登記簿には記録されていない所有者や権利関係、使用履歴などをたどることができます。

記載内容は「表題部」と「権利部」に分かれており、それぞれに不動産の物理的な情報や権利関係の履歴がまとめられています。特に「地目」や「所有権の履歴」「抵当権の有無」といった点は、事前に確認しておきたい重要なポイントです。

不動産の過去を知ることは、安心して取引するための第一歩です。目的に応じて閉鎖登記簿を有効に活用しましょう

この記事のポイント

閉鎖登記簿が必要になるシーンはいつ?

閉鎖登記簿は、土地や建物が過去にどのように使われていたかを調べたいときに活用されます。
土地を購入してこれから建物を建てようと考えている場合、その土地が以前どのような用途で使われていたかを知ることで、安心して計画を進めることができます。

詳しくは「閉鎖登記簿が必要になるシーン」をご覧ください。

閉鎖登記簿に記載されている内容は?

閉鎖登記簿は「表題部」と「権利部」の2つで構成されています。
表題部には土地や建物の物理的な状況が詳細に記載されており、権利部にはその不動産にどのような権利が設定されているかが記載されています。

詳しくは「閉鎖登記簿に記載されている内容」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

今回は閉鎖登記簿について解説しました。
閉鎖登記簿は過去の情報ですが、不動産の背景を知るうえで現況を読み解く重要なヒントになります。現行の登記簿だけでは見えない、権利関係の変遷や使用履歴を補完する資料として、購入や相続の場面で活用価値が高いです。資産価値の把握や将来的なリスク回避のためにも、必要に応じて閉鎖登記簿の確認をおすすめします。

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