ノンリコースローン
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不動産のノンリコースローンとは?意味やメリットをわかりやすく解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 「ノンリコースローン」とは、ローン返済ができなくなった場合でも担保となる物件のみが返済責任を負う仕組みのローン
  • ノンリコースローンの契約が成立しやすいのは、将来的な値上がりが期待できるマンションや安定した賃料収入が見込める賃貸物件など

住宅ローンなどの融資について調べている際、「ノンリコースローン」という存在を知る方もいるかもしれません。

ノンリコースローンは、主に法人や不動産投資を行う方向けの融資であり、一般的な住宅ローンとは異なる性質を持っています。

本記事では、ノンリコースローンの概要や利用するメリット・デメリットを詳しく解説します。ノンリコースローンが活用できるケースや、どのような方に向いているのかも紹介するので、ぜひ最後まで御覧ください。

ノンリコースローンとは

ノンリコースローンとは

ノンリコースローンという言葉を聞いても、具体的にどのような仕組みなのかピンとこない方も多いかもしれません。

ここでは、ノンリコースローンの基本的な仕組みを解説するとともに、一般的に多く利用されるリコースローンとの違いについて詳しく説明していきます。

ノンリコースローンの概要

「ノンリコースローン」とは、ローン返済ができなくなった場合でも、担保となる物件のみが返済責任を負う仕組みのローンです。

一般的に用いられるローンとは異なり、債務者個人に対する追加請求は発生しません。

例えば、不動産を担保に3,000万円のノンリコースローンを組んだとしましょう。その後、何らかの理由でローン返済が難しくなり、ローン残高が2,700万円の時点で担保物件が売却されたとします。

仮に、担保不動産の売却価格が2,500万円だった場合、ノンリコースローンでは、担保不動産の売却によって債務が完済扱いとなるため、200万円の不足分については追加の返済義務は負いません。

このように、ノンリコースローンを利用すると、万が一ローン返済が滞っても担保物件の売却によって借金が整理されるため、それ以後の返済は不要になります。

リコースローンとの違い

ここからは、リコースローンとノンリコースローンの違いについて解説します。

リコースローンとノンリコースローンでは、借り手の返済義務の範囲において大きな違いがあります。

リコースローンは、ローン返済ができなくなった場合、担保物件の売却だけではなく、借り手のその他の資産や収入からも返済を追求できる仕組みです。

つまり、担保物件を売却しても残債がある場合、その不足分についても借り手は返済義務を負います。

そのため、返済が滞ると車や給与といった資産の差し押さえリスクが生じ、最悪の場合、自己破産に陥る可能性があります。

日本の住宅ローンの大半はこのリコースローンを採用しており、借り手の信用力や収入に基づいて融資が行われます。

一方、先ほど紹介したノンリコースローンであれば、担保となる物件の売却によって債務が完済扱いとなり、たとえ残債が発生しても追加の返済義務を負う必要はありません。

リコースローンノンリコースローン
担保物件売却後の返済義務残債の返済義務は残る残債の返済義務は残らない

ノンリコースローンのメリット3つ

ノンリコースローンのメリット3つの画像

ノンリコースを利用するメリットは主に次の3つが挙げられます。

  • ローン返済の責任範囲が限定される
  • 担保物件以外の資産に影響が及ばない
  • リコースローンに落ちたケースでも通る可能性がある

以下で詳しくみていきましょう。

1.ローン返済の責任範囲が限定される

ノンリコースローンの大きなメリットは、ローン返済の責任を担保物件に限定できる点です。

万が一、返済が滞った場合でも、担保物件を売却すればそれ以上の返済義務を負う必要はありません。

そのため、たとえ残債が発生しても借金を背負い続けることなく、自己破産に陥るリスクを避けられます。また、基本的に連帯保証人を求められることもないため、家族や知人に負担をかける心配も少ないでしょう。

2.担保物件以外の資産に影響が及ばない

ノンリコースローンは、返済の責任範囲が担保物件に限られるため、万が一返済ができなくなっても他の資産に影響が及ぶことはありません。

例えば、会社経営者が事業資金を調達する際、リコースローンを利用すると、万が一返済が困難になった場合、会社の資産(設備や商品、社用車など)にも影響が及ぶリスクがあります。

しかし、ノンリコースローンであれば、資金調達の責任が特定の担保資産に限定されるため、他の事業運営に支障をきたす心配はありません。

個人の場合も同様に、リコースローンで返済が滞った場合、車や定期預金、さらには給与を差し押さえられるリスクがあります。しかし、ノンリコースローンであれば、担保物件の売却のみで返済責任を果たせるため、自己破産するリスクはほとんどありません。

3.リコースローンに落ちたケースでも通る可能性がある

リコースローンの審査に落ちた場合でも、ノンリコースローンなら融資を受けられる可能性があります。

これは、リコースローンが借り手の収入や返済能力を重視するのに対し、ノンリコースローンは担保物件の価値や収益性を重視するためです。

例えば、業績が不安定な会社経営者が事業拡大のために資金調達を行う場合、リコースローンでは会社の財務状況や信用力が厳しく審査され、融資が難しくなることがあります。

しかし、安定した賃料収入が見込めるオフィスビルや商業施設を担保に提供できれば、物件の収益性が評価され、ノンリコースローンの審査に通るケースもあります。

ノンリコースローンのデメリット3つ

ノンリコースローンのデメリット3つの画像

ノンリコースローンには多くのメリットがある一方で、次の点については十分理解しておく必要があります。

  • 審査基準が厳しい
  • 融資条件が厳しい
  • 取り扱いのある金融機関が少ない

以下で詳しくみていきましょう。

1.審査基準が厳しい

ノンリコースローンは、借り手の責任範囲が担保物件に限定されるため、金融機関にとってリスクの高い融資といえます。そのため、審査は厳しく行われ、特に担保となる不動産の収益性について慎重に評価されるのが特徴です。

審査の可否は、対象物件が安定した収益を生み出せるかどうかに大きく左右されるため、収益性が低い物件では審査を通過するのが難しいでしょう。

2.融資条件が厳しい

ノンリコースローンは審査が厳しいだけでなく、融資条件もリコースローンに比べて厳しく設定されています。

まず、金利はリコースローンよりも高く設定され、借り手の返済負担は大きくなります。

そのうえノンリコースローンの返済期間は3~5年と、比較的短期間に設定されることが一般的です。これは、返済期間が長くなると、物件の収益性や市場環境の変化によるリスクが高まるためです。

また、ノンリコースローンは金融機関にとってリスクの高い融資であることから、融資後も担保物件の状況は継続的に監視されることになります。

項目リコースローンノンリコース
金利比較的低いリコースローンよりも高い
返済期間長期間(住宅ローンであれば35年程度)3~5年と短い
融資後の管理監視されることは少ない監視されやすい

このように、ノンリコースローンは借り手の個人資産を守るメリットがある一方で、金利の高さや短期間の返済、融資後の制約など、厳しい条件が伴う点に注意が必要です。

3.取り扱いのある金融機関が少ない

ノンリコースローンを取り扱っている金融機関が限られている点もデメリットの1つです。ノンリコースローンを提供している金融機関は存在しますが、その多くは法人向けの融資が中心であり、個人が利用できるケースは少ないのが現状です。

また、ノンリコースローンを提供している金融機関でも、融資条件や融資情報を一般に公開していないケースも多く、具体的な融資条件を確認するには個別に問い合わせる必要があるでしょう。

とはいえ、近年ではノンリコースローンの存在が少しずつ認知されつつあり、今後は市場のニーズに応じて取り扱い金融機関が増え、個人でも利用しやすくなるかもしれません。

ノンリコースローン契約時に理解しておきたい用語

ノンリコースローン契約時に理解しておきたい用語の画像

ノンリコースローンを契約する際には、事前に理解しておきたい用語がいくつかあります。ここでは、ノンリコースローンにおいて特に重要な2つの項目について解説します。

責任財産限定特約

責任財産限定特約とは、債権者(金融機関)と債務者(借り手)の間で、ローンの返済責任がどこまで及ぶのかを明確にするための契約条項です。

具体的には、以下のような規定が設けられることが一般的です。

  • 債権者は、担保となる物件以外の資産に対して強制執行を行わない
  • 返済に充てられる資金は、担保物件の売却益など責任財産の範囲内に限る
  • 担保物件を売却しても返済しきれない残債が発生した場合、債権者はその債務を放棄する

この特約があることで、ローン返済の責任範囲が担保物件に限定され、借り手のその他の資産や収入には影響が及ばなくなります。

つまり、ローン契約にこの特約が含まれているかどうかが、ノンリコースローンかどうかを決定する重要なポイントとなるのです。

コベナンツ

コベナンツとは、「制約条項」とも呼ばれ、融資を受ける際に債務者(借り手)が守るべき義務や条件を定めた契約の取り決めのことを指します。ノンリコースローンにおいては、このコベナンツを設定するケースが一般的です。

具体的には、以下のような内容が含まれることが多いです。

  • 該当物件を他の融資の担保として提供しない
  • 一定以上のキャッシュフローを維持すること

これらの条項に違反した場合、金融機関はローンの一括返済を求める権利を持つため、借り手にとっては大きなリスクとなります。

そのため、契約前にはコベナンツの内容をしっかりと確認し、遵守できるか慎重に判断する必要があるでしょう。

ノンリコースローンが活用できるケース

ノンリコースローンが活用できるケースの画像

ノンリコースローンは誰でも利用できるわけではなく、一定の条件を満たした場合にのみ契約が可能です。以下で、ノンリコースの契約ができるケースについて解説していきます。

契約が成立する物件は限定的

ノンリコースローンは、金融機関が担保物件の売却によって融資額を回収できると判断した場合にのみ成立します。

そのため、資産価値が不安定な物件や、収益性の見込みが低い物件では、融資を受けることが難しくなります。

比較的契約が成立しやすいのは、将来的な値上がりが期待できるマンションや、安定した賃料収入が見込める賃貸物件などです。

契約が成立しやすい物件・値上がりが期待できるマンション・アパート
・商業店舗
・宿泊施設
・ヘルスケア施設
・駐車場

なお、物件によっては竣工前の段階でも、将来的な収益性や資産価値が評価されることで、ノンリコースローンを活用できる場合があります。

ノンリコースローンを選択してもよい人

ノンリコースローンの選択が適しているのは、主に以下のような方です。

  • 収益性の高い不動産を所有している人
  • 不動産投資を行う人

ノンリコースローンは、収益性の高い物件を担保とすることを前提とした融資であるため、すでに安定した家賃収入がある物件や、将来的に資産価値が向上する見込みのある不動産を所有している方に適しています。

また、これから不動産投資を始める方にとっても、借り手の信用力ではなく、担保物件の収益性が重視されるため、物件の条件によってはリコースローンよりも融資を受けやすくなるケースもあります。

ただし、築年数が古い中古物件などを改修して不動産投資を行う場合は、流動性や資産価値が低いと判断されやすく、ノンリコースローンの審査を通過するのは難しいでしょう。

この記事のポイント

リコースローンとノンリコースローンの違いは?

リコースローンとノンリコースローンでは、借り手の返済義務の範囲において大きな違いがあります。

リコースローンは、ローン返済ができなくなった場合、担保物件の売却だけではなく、借り手のその他の資産や収入からも返済を追求できる仕組みです。

一方、ノンリコースローンであれば、担保となる物件の売却によって債務が完済扱いとなり、たとえ残債が発生しても追加の返済義務を負う必要はありません。

詳しくは「ノンリコースローンとは」をご覧ください。

ノンリコースローンのメリットは?

ノンリコースローンの大きなメリットは、ローン返済の責任を担保物件に限定できる点です。

万が一、返済が滞った場合でも、担保物件を売却すればそれ以上の返済義務を負う必要はありません。

詳しくは「ノンリコースローンのメリット3つ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

ノンリコースローンとは、ローン返済ができなくなった場合でも、担保となる物件のみが返済責任を負う仕組みのローンです。そのため、万が一返済が滞った場合でも、担保物件を売却すればそれ以上の返済義務を負うことはありません。ただし、審査基準や融資条件が厳しいことに加え、取り扱い金融機関も限られるため、事前に利用できる金融機関を確認しておくことが大事です。
個人の方でも、これから不動産投資を検討する場合はノンリコースローンを活用する機会があるかもしれません。そのため、物件の収益性や市場動向を見極める力を養い、リスクを最小限に抑えながら資金計画を立てることが大切です。

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