ざっくり要約!
- 親のマンションを相続したら、まず住宅ローンの残債が残っていないか確認
- マンションを相続する場合、基本的には単独で相続するのがおすすめ
親が住んでいたマンションを相続する場合、するべきことがたくさんあります。相続の手続きをスムーズに進めるためにも、基本的な手順を把握しておきましょう。
今回はマンション相続後の手続きを、一連の流れに沿って紹介します。またマンションを相続せずに放棄する方法や相続時の注意点、マンションを相続した後の選択肢まで詳しく解説します。
マンションの相続について不安がある方や、相続について理解を深めておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
記事サマリー
親が住んでいたマンションの相続で必要な手続き・流れ

親が住んでいたマンションを相続する場合、するべきことがたくさんあります。ここでは、相続後の基本的な流れを紹介します。
- 遺言書の有無・内容の確認
- 法定相続人と遺産内容の調査
- 遺産分割協議の実施
- 名義変更・相続登記
- 相続税の申告
1.遺言書の有無・内容の確認
遺言書があるかどうかで、相続の手順が異なります。まず遺言書があるかどうか確認しましょう。
ある場合
遺言書がある場合は、記載された内容にしたがって遺産分割をします。ただし遺言書の種類によって扱い方が異なるため、遺言書が見つかったとしてもすぐに開封しないように注意しましょう。
遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」があります。
公正証書遺言であればその場で開封して、内容を確認してください。
一方、自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば、偽造や改ざんを防ぐために家裁裁判所で手続きが必要になります。誤って開封しないように注意しましょう。
なお自筆証書遺言であっても、被相続人が自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日より)を利用し、自筆証書遺言と画像データを法務局へ保管している場合は、家庭裁判所での手続きは不要です。
ちなみに相続人全員の合意があれば、遺言書の内容通りにせず、協議して分割することも可能です。
出典:知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方|政府広報オンライン
1 遺言書と遺言書保管制度|法務局
ない場合
遺言書が存在しない、もしくは見つからなかった場合は、相続人全員で遺産について協議し、どのように分割するか決めることになります(遺産分割協議)。
原則は法定相続分にしたがって分割しますが、相続人全員の合意があれば、法定相続分と異なる割合で分割することも可能です。
法定相続分とは、相続人が複数人いる場合の相続割合のことで、民法によって定められています。配偶者は常に相続人になり、一緒に相続する人が誰になるのかによって、法定相続分は異なります。
配偶者と第一順位である子供が相続人になる場合は、配偶者が1/2子供全員で1/2となり、子供は人数に応じて均等に分割します。
| 法定相続人 | 配偶者の法定相続分 | 配偶者以外の法定相続分 |
| 配偶者・子ども | 1/2 | 1/2(子どもで均等に分割) |
| 配偶者・父母(直系尊属) | 2/3 | 1/3(直系尊属で均等に分割) |
| 配偶者・兄弟 | 3/4 | 1/4(兄弟で均等に分割) |
第1順位:被相続人の子ども(子どもが死亡している場合は、その子供)
第2順位:被相続人の父母(父母が死亡しているときは祖父母)
第3順位:被相続人の兄弟
2.法定相続人と遺産内容の調査
遺言書の有無を確認したら、次は法定相続人と遺産内容を調査します。
法定相続人については、被相続人の戸籍謄本を取得して調査をします。
たとえば過去に婚姻歴があるのか、認知した子供がいるのかなどを確認することになります。その中で相続を放棄する人がいれば、法定相続人から外します。
遺産の対象となるのは不動産や現金、株式など財産といえるものだけではありません。借金の債務や滞納している税金など、負の遺産も相続することになります。
もし債務の方が大きい場合は、相続を放棄することも検討してみましょう。
相続の放棄については、後半で詳しく解説します。
3.遺産分割協議の実施
法定相続人の遺産内容が確定したら、遺産分割協議をおこないます。
法定相続人で遺産の分割方法や割合について話し合うことを遺産分割協議といいます。
かならずしも全員が一堂に会する必要はなく、遠方に住んでいる相続人がいる場合は、メールや電話で協議を進めることも可能です。遺産分割について法定相続人全員の同意が得られたらその内容を書面に記載し、全員で署名・実印を押印のうえ、遺産分割協議書を完成させます。
マンションを相続する場合、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法があります。
- 現物分割
相続人のいずれかが、マンションをそのまま相続する方法 - 代償分割
相続人の1人が相続する代わりに、他の相続人が本来相続する金額と同額を、代償金として支払う方法 - 換価分割
マンションを売却し、売却するのにかかった経費を差し引いた後、手元に残った現金を相続人で分割する方法 - 共有分割
マンションを相続人で共有名義にし、持分で相続する方法
4.名義変更・相続登記
遺産分割協議が整ったら、マンションの名義を相続人へ変更します。
不動産の登記簿上の所有者を故人から相続人に変更することを、相続登記といいます。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
所有権を知ったとき、もしくは遺産分割協議が成立したときから3年以内に相続登記をする必要があります。
正当な理由がなく相続登記せずに放置すると、10万円以下の過料が課せられる可能性があるので注意しましょう。
なお相続登記は個人でも法務局へ申請できますが、難しい場合は司法書士へ依頼しましょう。
5.相続税の申告
相続する財産が基礎控除額を超える場合は、相続税が発生します。
相続の開始があったことを知った日(被相続人が亡くなった日)の翌日から10カ月以内に、税務署に相続税について申告・納付する必要があります。
基礎控除額を求める計算式は、以下のとおりです。
遺産に係る基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
たとえば兄弟3人で相続する場合は、基礎控除額は4,800万円です。
相続財産が4,800万円以下であれば、相続税は発生しないため申告は不要です。
親が住んでいたマンションを相続放棄する方法

親が住んでいたマンションを相続したくない場合、拒否することも可能です。
ただしマンションの相続だけを放棄することはできず、すべての財産を放棄しなければなりません。
これを「相続放棄」といい、相続の開始から3カ月以内に、家庭裁判所にて相続放棄の手続きをする必要があります。
なおマンションを相続する人がいない場合は、相続放棄してもマンションを管理する義務は残ります。家庭裁判所に申し立てて、相続財産管理人を選任してもらうまでは、管理費や修繕積立金の支払いは発生するため注意しましょう。
ちなみに財産も債務も引き継ぐことを「単純承認」、相続する財産と同等額を限度として債務を受け継ぐことを「限定承認」といいます。
・「相続手続き」に関する記事はこちら
相続手続きの流れを徹底解説!手続き期限や必要書類なども紹介
参照:相続の放棄の申述|裁判所
親が住んでいたマンションを相続する際の注意点

親が住んでいたマンションを相続する場合において、いくつか注意点があります。予期せぬトラブルを避けるためにも、注意すべきポイントを押さえておきましょう。
1人が相続することが望ましい
マンションを相続する場合、複数の相続人で持分を決めて、共有名義にすることは可能です。しかし基本的には、単独で相続することをおすすめします。
単独で所有するマンションであれば、一存で売却や賃貸することができます。しかし共有名義にしてしまうと何事も全員で相談して決めなくてはならず、一存で賃貸や売却ができません(持分のみ売却は可能)。
さらに相続が発生すれば共有名義者が増えることになり、より売却や賃貸することが難しくなるでしょう。
住宅ローン残債を確認する
親のマンションを相続したら、まず住宅ローンの残債が残っていないか確認してください。
親が団体信用生命保険に加入していれば保険金で完済できますが、加入していない場合は、住宅ローンの返済も引き継ぐことになります。
空き家で放置しない
マンションは空き家のまま放置してしまうと、換気しないことでカビが生えやすくなり、設備は使わないと故障しやすくなります。
またマンションに住んでいなくても、固定資産税や管理費、修繕積立金の支払いが発生します。
なるべく空き家の期間は短くし、資産価値が下がる前に売却するか、賃貸物件として貸し出すなどして活用しましょう。
親が住んでいたマンション相続後のおもな選択肢

親が住んでいたマンションを相続した場合、どのように活用したらよいのでしょうか。
マンション相続後の対処法として3つの選択肢と、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
相続人が住む
現在、賃貸物件に住んでいる場合や、相続したマンションの方が現在の住まいに比べて立地条件がよい場合は、自分が住むことも検討してみましょう。
現在の家賃に比べてマンションの管理費や修繕積立金の方が安ければ、支出を抑えることができます。また親が残してくれたマンションを、手放さずにすむこともメリットといえます。
ただしマンションを所有することで、固定資産税や都市計画税がかかります。またすでに自己所有の住まいがあれば、税負担は二重になります。
管理費や修繕積立金は、築年数とともに値上げすることがあるため、経済的な負担が大きくならないように注意しましょう。
賃貸に出す
もし相続したマンションに住まない場合は、賃貸することも検討してみましょう。愛着のある実家を手放さなくて済み、家賃収入を得ることができます。
ただし賃貸物件として貸し出す前に、ある程度修繕や内装リフォームが必要になり、所有し続けることで維持管理費がかかります。
また入居者を募集したとしても、需要がなければ空き家になるリスクがあります。不動産会社に相談し、どの程度で貸し出せるのか、また需要があるのか事前に相談することをおすすめします。
売却する
相続したマンションに自分が住む可能性がなく、賃貸物件として貸し出すのが難しいようであれば、資産を手放すことにはなりますが、売却することを検討しましょう。
売却することでまとまった資金を得ることができ、固定資産税や管理費、修繕積立金、維持管理にかかる費用を払う必要がなくなります。
マンションを売却する場合、不動産会社へ仲介を依頼して売却する方法と、不動産会社に直接買い取ってもらう方法があります。
条件のよいマンションであれば、より高く売却できる可能性がある、仲介による売却がおすすめです。
もし売却が難しい場合は、仲介よりも安くなる可能性がありますが、スピーディに現金化できる、買取による売却を検討してみましょう。
・「不動産の相続で知っておくべきこと」に関する記事はこちら
不動産の相続で知っておくべきことを解説!トラブル事例や相談できる専門家も紹介
この記事のポイント
- 親が住んでいたマンションの相続の流れは?
親が住んでいたマンションを相続する場合、基本的な流れは以下の通りです。
- 遺言書の有無・内容の確認
- 法定相続人と遺産内容の調査
- 遺産分割協議の実施
- 名義変更・相続登記
- 相続税の申告
詳しくは「親が住んでいたマンションの相続で必要な手続き・流れ」をご覧ください。
- 親が住んでいたマンションを相続放棄したい場合はどうする?
親が住んでいたマンションを相続したくない場合、拒否することも可能です。ただしマンションの相続だけを放棄することはできず、すべての財産を放棄しなければなりません。
これを「相続放棄」といい、相続の開始から3カ月以内に、家庭裁判所にて相続放棄の手続きをする必要があります。詳しくは「親が住んでいたマンションを相続放棄する方法」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
親が住んでいたマンションを相続する際の手続きや注意点、相続後の活用方法について解説してきました。マンションを共有名義で相続してしまうと、思うように賃貸や売却ができなくなります。できれば単独で相続するようにし、将来起こりえるトラブルを未然に防ぎましょう。
不動産会社によっては、相続が発生する前から相続対策について相談できます。また相続税に詳しい税理士と連携していることも多いため、サポート体制が整った不動産会社に、早い段階から相談することをおすすめします。
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