ざっくり要約!
- 三為契約とは、売主と買主の間に不動産会社(三為業者)が入り、所有権を売主から買主へ直接移転させる不動産取引の契約形態です。
- 買主のメリットは、売主が宅建業者となるため契約不適合責任を2年以上追及できる点や、リフォーム済みの物件を購入しやすい点などが挙げられます。
- 買主のデメリットは、三為業者の利益が上乗せされるため販売価格が相場より高くなる可能性があることや、金融機関によっては融資を受けにくい場合があることです。
不動産取引を検討するなかで、「三為契約」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。一般的な仲介とは異なる契約形態で仕組みが複雑なため、不安を感じる方もいるでしょう。しかし、内容を理解すれば、買主にとってメリットのある取引となる場合もあります。
この記事では、三為契約の基本的な仕組みやお金の流れ、中間省略登記との違いを解説します。また、買主の視点から見たメリット・デメリットや注意点も紹介しますので、安心して不動産取引を進めるための参考にしてください。
記事サマリー
三為契約とは?
三為(さんため)契約とは「第三者の為にする契約」の略称で、民法で定められている契約方法のひとつです。不動産取引においては、売主から物件を購入した不動産会社(三為業者)が、自らは登記を行わず、指定した買主へ直接所有権を移転させる手法を指します。
ここでは、三為契約の基本的な仕組みやお金の流れ、見分け方について見ていきましょう。
第三者のための契約
三為契約は、契約によって当事者の一方が、第三者に対して直接権利を取得させることを約束するものです。
不動産取引において三為契約に関わる人は、元の売主、不動産会社(三為業者)、最終的な買主の3者です。まず、売主と三為業者が売買契約を締結します。次に、三為業者が買主を見つけ、両者の間で売買契約を結びます。
三為契約のお金の流れ
三為契約における代金の支払いや所有権の移転は、通常、同じ日にまとめて行われます。まず、最終的な買主が三為業者に物件の購入代金を支払います。次に、その代金の一部を使って、三為業者が元の売主へ物件の購入代金を支払います。
この2つの決済が完了したことを確認したうえで、所有権の移転登記手続きが行われます。このとき、所有権は三為業者を経由せず、売主から買主へと直接移転されるのが特徴です。
三為業者は、元の売主からの仕入れ価格と、最終的な買主への売却価格の差額を利益として得ることになります。
三為契約の見分け方
自身が結ぼうとしている契約が三為契約かどうかを見分けるには、売買契約書を確認するのが確実です。三為契約の場合、契約書の特約事項に「本契約は第三者のためにする契約である」といった趣旨の文言が必ず記載されています。
また、契約書上の売主は不動産会社(三為業者)ですが、その時点での登記簿上の所有者(登記名義人)は、元の売主のままになっています。そのため、契約内容や登記情報を確認することで、三為契約であるかを判断できます。
三為契約と中間省略登記
三為契約は、かつて行われていた「中間省略登記」と仕組みが似ていますが、法的な位置づけは全く異なります。ここでは、両者の違いについて解説します。
- 中間省略登記は違法
- 三為契約は合法
中間省略登記は違法
中間省略登記とは、不動産が売主から中間者、さらに最終的な買主へと転売された際に、中間者の登記を省略して、売主から買主へ直接所有権移転登記を行うことです。
この方法は、本来であれば納めるべき中間者の登録免許税や不動産取得税の支払いを免れることにつながります。そのため、不動産登記法に違反する脱法的な行為と見なされ、2005年の法改正以降は原則として認められていません。
| ・「不動産取得税」に関する記事はこちら 不動産取得税はいくらかかる?計算方法や軽減措置についても解説! |
三為契約は合法
三為契約は、違法とされた中間省略登記の代替的な手法として活用されるようになりました。
中間省略登記が認められなくなった後も、転売による不動産取引のニーズは存在しました。そこで、民法上の「第三者の為にする契約」という規定を用いることで、合法的に売主から最終買主への直接の所有権移転登記を可能にしたのが三為契約です。契約書にその旨を明記し、関係者全員の合意のもとで行われるため、法的に問題のない取引といえます。
三為契約のメリット

三為契約は、取引に関わる三者それぞれにメリットがあります。ここでは、主に三為業者と買主の視点から見たメリットについて解説します。
- 三為業者(中間業者)は仕入れコストを削減できる
- 買主は2年以上契約不適合責任を追求できる
- リフォーム済みの物件が多い
三為業者(中間業者)は仕入れコストを削減できる
三為契約の大きな特徴は、中間者である三為業者が所有権の登記を行わない点にあります。登記をしないため、通常の不動産取引で発生する登録免許税や不動産取得税といった税金がかかりません。
そのため、三為業者は物件の仕入れにかかるコストを大幅に削減できます。コストを抑えられる分、リフォームに費用をかけたり、利益を確保しやすくなったりするのが業者側のメリットです。
買主は2年以上契約不適合責任を追求できる
買主にとってのメリットのひとつは、契約不適合責任の追及がしやすい点です。契約不適合責任とは、引き渡された物件に契約内容と異なる不具合があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。
三為契約では、売主が宅地建物取引業者(三為業者)となります。宅建業法では、売主が宅建業者の場合、契約不適合責任の期間を「引渡しの日から2年以上」としなければならないと定められています。
通常の個人間売買では責任が免除されるケースも多いため、三為契約により追求できる点は買主にとって安心材料となります。
| ・「契約不適合責任」に関する記事はこちら 契約不適合責任とは?不動産取引で買主ができる4つの請求と売主がとるべき対策を解説 |
リフォーム済みの物件が多い
三為契約で取引される物件は、不動産会社(三為業者)が買い取った後にリフォームやリノベーションを施してから販売されるケースが一般的です。
買主は、内装や設備が新しくなったきれいな状態の物件を購入できるため、入居後すぐに快適な生活を始められます。自分でリフォーム会社を探したり、工事を手配したりする手間がかからない点もメリットといえるでしょう。購入とリフォームの窓口が一本化されるため、手続きもスムーズに進みます。
三為契約のデメリットと注意点
三為契約にはメリットがある一方で、買主にとっては注意すべき点も存在します。契約を結ぶ前に、次のデメリットやリスクを把握しておくことが重要です。
- 相場を上回る可能性がある
- 融資がつきにくい
- 取引の透明性が低い
相場を上回る可能性がある
三為契約で販売される物件の価格は、周辺の相場よりも高くなる傾向があります。これは、三為業者が元の売主から物件を買い取った価格に、リフォーム費用や諸経費、そして自社の利益を上乗せして販売価格を設定するためです。
購入を検討する際は、その価格が妥当であるかを慎重に判断する必要があります。不動産情報サイトで周辺の類似物件の価格を調べたり、国土交通省の「不動産取引価格情報検索」で過去の成約事例を確認したりして、相場観を把握しておきましょう。
融資がつきにくい場合がある
金融機関によっては、三為契約を用いた取引に対して住宅ローンの融資に消極的な場合があります。取引の仕組みが複雑であることや、売買価格が相場より高くなる可能性があることなどが理由として挙げられます。
ただし、融資が全く受けられないわけではありません。三為業者が提携している金融機関を紹介してくれるケースも少なくありません。
融資に不安がある場合は、まず三為業者に相談してみましょう。そのうえで、他の金融機関にも問い合わせて、より良い条件で借り入れができないか検討することも大切です。
取引の透明性が低い
三為契約では、買主は元の売主がいくらで物件を売却したのか、つまり三為業者の「仕入れ値」を知ることができません。そのため、販売価格にどれくらいの利益が上乗せされているのかが不透明になりがちです。
元の売主の情報が開示されないことも多く、取引全体の透明性が低いと感じるかもしれません。価格交渉を行いたい場合も、業者の利益構造が分からないため、交渉の材料を見つけにくい点がデメリットといえます。
まとめ
三為契約は、売主と買主の間に不動産会社が入る、合法的な不動産取引の形態です。買主にとっては、契約不適合責任が2年以上適用されることや、リフォーム済みのきれいな物件を購入しやすいといったメリットがあります。
一方で、販売価格が相場より高くなる可能性や、住宅ローンを利用しにくい場合があるといったデメリットも考慮しなければなりません。三為契約で物件を購入する際は、契約内容を理解し、周辺相場を調べて価格の妥当性を見極めることが重要です。
安心して取引を進めるためには、信頼できる不動産会社に相談することをおすすめします。東急リバブルでは、お客様の状況に合わせ、最適な住まい探しをサポートいたします。お気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 三為契約とはなんですか?
三為(さんため)契約とは「第三者の為にする契約」の略称で、民法で定められている契約方法のひとつです。
詳しくは「三為契約とは?」をご覧ください。
- 三為契約のメリットはなんですか?
三為契約は、取引に関わる三者それぞれにメリットがあります。
「三為契約のメリット」では、主に三為業者と買主の視点から見たメリットについて解説します。
- 三為契約にデメリットはありますか?
三為契約にはメリットがある一方で、買主にとっては注意すべき点も存在します。契約を結ぶ前に、次のデメリットやリスクを把握しておくことが重要です。
詳しくは「三為契約のデメリットと注意点」をご覧ください。
ライターからのワンポイントアドバイス
三為契約の物件を検討する際、価格の妥当性を判断するために、リフォーム費用がどの程度かかっているかを三為業者に確認してみるのもひとつの方法です。
詳細な見積書の開示は難しいかもしれませんが、リフォームした箇所や仕様などの工事概要は確認できるでしょう。キッチンや浴室などの水回りを最新設備に交換した場合と、壁紙を張り替えたのみの場合では、かかる費用が大きく異なります。工事内容を把握できれば、そのリフォームに価値を感じるか、価格に見合っているかを判断しやすくなります。

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