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レントロールとは?誰が作る?意味をわかりやすく解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。

ざっくり要約!

  • レントロールは賃貸条件一覧表とも呼ばれ、収益物件の購入を検討する際に活用する
  • アパートや一棟賃貸マンション、マルチテナントビルなど1つの建物に複数の借主が存在する収益物件で作成されることが一般的

複数戸からなる収益物件を購入する際は、売主からレントロールを入手して検討することが望ましいです。
アパートや一棟賃貸マンション、マルチテナントビル等の複数の賃借人がいる物件では、レントロールによって収入の全体像を把握することができます。

レントロールは注視してみることで、物件の良否も把握することができます。
レントロールとは、一体どのようなものなのでしょうか。
この記事では、「レントロール」について解説します。

レントロールとは

まずはレントロールの概要について解説します。

レントロールの意味や役割

レントロールとは「賃貸条件一覧表」のことです。
英語の「rent roll」をカタカナ表記したものとなります。
レント(rent)は賃借料、ロール(roll)は目録という意味があり、「rent roll」は直訳すれば賃料台帳です。

レントロールは、主に収益物件の売買において購入検討者の検討資料となる役割があり、「家賃明細表」とも呼ばれます。
なお、作成するのは売主側です。売主もしくは売主が管理を委託している会社が作成することになります。

通常、普段の賃貸経営をする上ではレントロールはなくても特に不都合はないため、レントロールがないまま賃貸経営をしている人も多いです。
そのため、レントロールは売却活動を行う前に作成することが多いといえます。

また、レントロールは賃貸条件一覧表であることから、アパートや一棟賃貸マンション、マルチテナントビルのような1つの建物に複数の借主が存在する収益物件で作成されることが一般的です。

例えば、戸建て賃貸や区分ワンルームマンション、一棟貸しの店舗等の「1つの建物に1人の借主しかいない物件」であればレントロールを作成する必要はありません。

借主が1人だけであれば、購入検討者に賃貸借契約書を渡せば収入の状況を把握することができるからです。

もちろん、複数の借主が存在する収益物件であっても、購入検討者に全員分の賃貸借契約書を渡せば収入の状況は把握できますが、情報が煩雑でわかりにくくなります。

全員の賃貸借契約書から状況を把握していくのは時間がかかることから、購入検討者に物件を検討しやすくするためにレントロールを用意するのです。

つまりレントロールとは「散逸している複数の賃貸借契約書の中で重要な情報を抜き出して、わかりやすくまとめた一覧表」になります。

不動産投資におけるレントロールの活用方法

レントロールは、収益物件の購入を検討する際に活用されます。

1つの活用方法としては、収入の実態把握です。
収益物件のチラシには、満室想定収入しか掲載されていないものも存在します。
満室想定賃料だけだと、現在の収入状況を把握することができません。
レントロールを入手すれば、どれくらいの収入があり、どの程度の空室が発生しているかがわかります。

また、満室想定賃料も自分で適切に計算し直すこともできます。
収益物件のチラシでは、物件を良く見せるために空室の賃料を高めに設定し、満室想定収入を多めに記載しているケースも見られます。

例えば空室の想定賃料を、レントロールの中で過去に入居が決まった中から1番高い賃料単価を参考に当てはめている場合も見受けられます。

空室の賃料はなるべく直近に成約した部屋の賃料をもとに、保守的に見込んでおくことが望ましいです。

レントロールにおいて、成約時期が新しくなるたびに賃料が下落していることがわかれば、空室に設定すべき賃料は低めに設定した方が良いといえます。

レントロールの記載内容

レントロールの主な記載内容は、以下の通りです。

  • 区画または部屋番号
  • 入居者氏名
  • 用途
  • 契約面積
  • 原契約日
  • 現行の契約期間
  • 賃料
  • 賃料単価
  • 共益費または管理費
  • 共益費または管理費の単価
  • 共込賃料
  • 共込単価
  • 預かり敷金
  • 駐車場代
  • 備考

レントロールは、空室部分は空欄となっていることが通常です。
空欄部分を見ることで、どの部屋に空室が発生しているかがわかります。

備考欄には、レントロールの場合は対象の借主に生じている特有の事象が書かれていることが通常です。
例えば、退去の申込がある場合に「いつ退去予定」といったことが記載されています。

その他、住宅のレントロールには3LDKのような間取りが記載されている場合もあります。
住宅のレントロールで間取りが記載されていない場合には、契約面積からおよその間取りを推測し、売主に確認しましょう。
例えば、契約面積が25平米程度ならワンルーム、40平米程度なら2LDK、65平米程度なら3LDKというイメージです。

レントロールのチェックポイント

レントロールのチェックポイントについて解説します。

入居者の特徴

入居者名から、入居者の属性を把握することができます。
名前からわかる情報は、個人か法人の別や、日本人か外国人の別等です。

例えば、賃貸マンションを法人が借りている場合、事務所として利用している可能性があります。
事務所として貸している場合には、家賃に消費税が課税されますので、税込賃料となっているのか、税別賃料になっているのかを確認することがポイントです。

入居者に外国人がいる場合は、今までトラブルはなかったか、日本語が通じる人なのか等を売主に確認しておくことをおすすめします。

入居時期の違い

アパートや賃貸マンションの住宅のレントロールであれば、原契約日(入居時期)はチェックしておきたいところです。

賃貸住宅では、築年数が新しいほど賃料が高くなる傾向があります。
そのため、古くから入居している借主であれば、他の部屋よりも賃料単価が高くなっていることが多いです。

また、長く住んでいる人が多い物件であれば、貸主に入居者入れ替え費用が発生しにくい物件であるため、優良物件であると判断できます。

賃貸住宅では、借主が退去すると、次の入居者を決めるために仲介手数料やAD(広告宣伝費)が発生します。
ADとは、自分の物件に優先的に借主をあっせんしてもらうために管理会社に支払うインセンティブフィー(動機付け費用)のことです。
加えて、部屋の綺麗にするためにハウスクリーニング費用も生じます。

これらは入居者の入れ替えの度に生じる費用であるため、賃貸物件は借主の入れ替え頻度が低い方が収益性は高くなるのです。

そのため、レントロールを見る際は、長期に借りている入居者がどの程度いるのかも確認ポイントとなります。

周辺の家賃相場との差

賃料に関しては、周辺の家賃相場との差も確認します。

相場と比較すべき賃料単価は「共込賃料単価」です。
共込賃料単価とは、賃料と共益費(または管理費)を合算した賃料を契約面積で割ったものとなります。

共込賃料単価は、店舗や事務所等の事業系の不動産では「坪単価」がスッキリとした数字で形成されていることが一般的です。
例えば、共込賃料単価は店舗なら坪3万円、事務所なら坪1.5万円のような数字で相場が形成されています。
そのため、店舗や事務所であれば、共込賃料単価で高いか安いかがはっきりわかります。

一方で、住宅の賃料は単価ではなく「総額」がスッキリとした数字となるため、単価は綺麗な数字となっていないことが多いです。
それでも単価によって、ある程度相場との高低を比較することはできます。

預かり敷金の額

レントロールでは、預かり敷金の額も記載されていることが多いです。
預かり敷金の額は、非常に重要な情報となります。

収益物件の売買では、購入すると入居中の借主に対する「敷金返還義務」が新しい買主へ移転します。
そのため収益物件の売買では、引渡時に敷金の精算をすることが通常です。売買代金から預かり敷金の額を減額する形で精算を行います。

例えば物件価格が1億円で、預かり敷金の額が100万円だったとすると、売主に対し引渡時に物件価格から預かり敷金の額を差し引いた9,900万円を支払うことで、売主から敷金を承継することになります。

ここで問題となるのが、金額の上では確かに精算したことにはなりますが、買主は今の入居者から実際に100万円は預かっていないという点です。

実際に100万円は預かっていませんが、購入後に今の借主が退去したら買主は100万円の敷金を借主に返還しなければいけないことになります。

借主は、購入後にいつ退去してもおかしくはありません。
そのため、買主は預かり敷金の額を返還できるように用意しておくことが望ましいです。

特に備考欄に解約予定時期が記載してある入居者に関しては、購入後すぐに退去が発生するため、敷金を用意しておく必要があります。

レントロールの記載内容以外で把握しておくべき事項

レントロールの記載内容以外で把握しておくべき事項について解説します。

家賃滞納などのトラブルの有無

家賃滞納の履歴や入居者トラブルに関しては、備考欄に記載されていないことも多いです。
家賃滞納等のトラブル履歴がないかについては、別途確認することが望ましいといえます。
また、トラブルだけでなく、現在家賃減額の交渉がなされている借主がいないかどうかかも確認すべきポイントです。

購入後に現在の管理会社を引き継ぐか否かは、買主の自由です。
現在の管理会社を引き継いでも良いと考えている場合、管理会社に対してADをどの程度支払っているか確認すべきポイントといえます。

ADを賃料の2~3カ月分支払っている場合だと、購入後も2~3カ月分のADを支払わないと借主をなかなか決めてくれない可能性があります。
例えば、ADが3カ月分だと、入居者の入れ替えの度に仲介手数料も併せて賃料のカ月月分を支払うことが必要です。

現在の入居状況も、売主が高いADを支払っていることによって強引に空室を埋めている可能性もあります。
ADが少なく、入居率が高ければ良い物件と判断することができます。

支出の状況

なお、レントロールで把握できるのは、あくまでも収入状況だけです。
レントルールだけでは支出状況はわからないため、売主からは支出状況のわかる資料の提示も求めるべきといえます。

賃貸物件において支出の把握のために確認しておきたい資料は、以下の通りです。

【支出の把握に役立つ資料】

  • 土地と建物の固定資産税および都市計画税の納税通知書
  • 建物の損害保険料(火災保険・地震保険)
  • 管理を委託している場合は管理委託料が分かる資料
  • 過去の修繕履歴

この記事のポイント

レントロールとはどんなもの?

レントロールとは「賃貸条件一覧表」のことです。

レントロールは、主に収益物件の売買において購入検討者の検討資料となる役割があり、「家賃明細表」とも呼ばれます。

なお、作成するのは売主側です。売主もしくは売主が管理を委託している会社が作成することになります。

詳しくは「レントロールとは」をご覧ください。

レントロールのチェックポイントは?

レントロールにはいくつかチェックポイントがありますが、中でも預かり敷金の額は「敷金返還義務」にかかわるため、非常に重要な情報となります。

収益物件の売買では、購入すると入居中の借主に対する「敷金返還義務」が新しい買主へ移転します。

そのため収益物件の売買では、引渡時に敷金の精算をすることが通常です。売買代金から預かり敷金の額を減額する形で精算を行います。

詳しくは「レントロールのチェックポイント」をご覧ください。

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