2025年 基準地価
更新日:  

2025年基準地価4年連続の上昇! バブル以降最大の上昇率

執筆者プロフィール

亀梨奈美

株式会社realwave代表取締役。大手不動産会社退社後、不動産ジャーナリストとして独立。
2020年には「わかりにくい不動産を初心者にもわかりやすく」をモットーに、不動産を“伝える”ことに特化した株式会社realwaveを設立。
住宅専門全国紙の記者として活動しながら、不動産会社や銀行、出版社メディアへ多数寄稿。不動産ジャンル書籍の執筆協力なども行う。

国土交通省や各都道府県は9月16日、2025年の都道府県地価調査(基準地価)を公表しました。全用途の全国平均は前年比+1.5%で、上昇は4年連続です。上昇幅は前年の+1.4%を上回り、バブル以降最大の上昇率となりました。

とくに、インバウンド需要が高いエリアや再開発エリアなどの躍進が目立つ一方で、一部の大都市圏や地方圏では前年より上昇幅が縮小しており、一都三県など都市部の中でも地価が下落しているエリアも見られます。

基準地価とは?

基準地価とは、各都道府県が7月1日時点における基準地の1㎡あたりの価格を調査し、公表するものです。基準地価は、価格の査定や地方公共団体などによる買収価格の算定規準となります。1月1日時点の地価が評価され、3月に公表される「公示地価」と比較することで、半年間ごとの評価の動向を見ることもできます。

公示地価基準地価
調査主体国土交通省土地鑑定委員会都道府県
調査地点都市計画区域内の標準地都市計画区域外も含まれる基準地
鑑定方法2人以上の鑑定士が鑑定1人以上の鑑定士が鑑定
評価時期1月1日7月1日
発表時期3月中旬〜下旬9月中旬〜下旬

大都市圏・地方圏ともに全用途が上昇

2025年の基準地価は、大都市圏・地方圏ともに、全用途平均・住宅地・商業地のすべてで維持・上昇しています。ただし、名古屋圏や地方四市では前年と比べて上昇幅がやや縮小しています。

2025年基準地価 全国の地価動向

全用途平均


2021年2022年2023年2024年2025年
全国▲ 0.40.31.01.41.5
三大都市圏0.11.42.73.94.3

東京圏0.21.53.14.65.3

大阪圏▲ 0.30.71.82.93.4

名古屋圏0.51.82.62.92.1
地方圏▲ 0.6▲ 0.20.30.40.4

地方四市4.46.78.16.85.3

その他▲ 0.8▲ 0.40.00.20.2
(単位:%)

住宅地


2021年2022年2023年2024年2025年
全国▲ 0.50.10.70.91.0
三大都市圏0.01.02.23.03.2

東京圏0.11.22.63.63.9

大阪圏▲ 0.30.41.11.72.2

名古屋圏0.31.62.22.51.7
地方圏▲ 0.7▲ 0.20.10.10.1

地方四市4.26.67.55.64.1

その他▲ 0.8▲ 0.5▲ 0.2▲ 0.10.0
(単位:%)

商業地


2021年2022年2023年2024年2025年
全国▲ 0.50.51.52.42.8
三大都市圏0.11.94.06.27.2

東京圏0.12.04.37.08.7

大阪圏▲ 0.61.53.66.06.4

名古屋圏1.02.33.43.82.8
地方圏▲ 0.7▲ 0.10.50.91.0

地方四市4.66.99.08.77.3

その他▲ 1.0▲ 0.50.10.50.6
(単位:%)

全国平均は、全用途平均・住宅地・商業地ともに4年連続の上昇で、上昇率が拡大しています。ただし、上昇率の上がり幅は2022年以降で最も小さく、名古屋圏や地方圏の鈍化が影響したものと見られます。一方、地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)を除く地方圏では29年連続で住宅地の下落が続いていましたが、2025年は横ばいに転じています。

昨年に続き、全国的に商業地の上昇が目立ちます。緩やかな景気回復に加え、インバウンド需要の拡大も相まって、ホテルや店舗などの需要が堅調で、オフィスの空室率も低下していることで収益性が向上しています。住宅地も堅調な伸び率を維持しており、とくに再開発事業が進むエリアでは、商業地と併せて今後も一定の地価上昇が見込まれます。

・「再開発」に関する記事はこちら
日本各地で進む再開発。東京・大阪の注目エリア

変動率上位は観光地・半導体誘致エリア・都心部

2025年 基準地価 富良野

住宅地の変動率上位10の地点のほとんどが北海道や沖縄県で、観光地が多く見られます。商業地も観光地の上昇が目立つ一方で、半導体企業が進出した北海道千歳市や東京都心部も躍進しました。

2025年基準地価 変動率上位ランキング(全国)

住宅地

順位標準地番号都道府県基準地の所在地2025年基準地価格/㎡変動率(%) ※かっこ内は2024年の変動率
1富良野-3北海道富良野市北の峰町1981番62 51,60027.1(20.1)
2千歳-1 北海道千歳市東雲町5丁目52番117,00023.2(23.4)
3千歳-3北海道千歳市栄町5丁目3番外内 149,00023.1(23.5)
4真狩-1北海道虻田郡真狩村字真狩44番17  7,90019.7(17.9)
5つくば-36茨城県つくば市みどりの東39番975,60019.6(19.2)
6真狩-2北海道虻田郡真狩村字真狩4番27 6,90019.0(18.4)
7宮古島-11 沖縄県宮古島市下地字上地ツーガ家502番6 24,00018.8(20.2)
8恩納-1 沖縄県国頭郡恩納村字真栄田真栄田原36番 外37,50018.7(29.0)
9宮古島-15 沖縄県宮古島市伊良部字池間添下桃山219番17,20018.6(26.1)
10流山-4 千葉県流山市東初石3丁目103番82  171,00017.9(13.3)

北海道富良野市や沖縄県の宮古島、恩納村など、国内外で人気が高い観光地が目立ちます。北海道、沖縄以外でランクインしている茨城県つくば市や千葉県流山市の地点は、近年飛躍的に人気が高まっているつくばエクスプレス線沿線エリアです。

商業地

順位標準地番号都道府県基準地の所在地2025年基準地価格/㎡変動率(%) ※かっこ内は2024年の変動率
1千歳5-2 北海道千歳市末広2丁目122番2外内 『末広2-6-3』 155,00031.4(24.2)
2千歳5-3 北海道千歳市北栄2丁目1345番27165,00029.9(24.5)
3千歳5-1北海道千歳市東雲町1丁目6番4  127,00029.6(21.7)
4白馬5-2 長野県北安曇郡白馬村大字北城字新田3020番 837外 67,50029.3(30.2)
5高山5-4岐阜県高山市上三之町51番 493,00028.1(27.1)
6台東5-1東京都台東区浅草1丁目17番93,860,00027.4(19.3)
7台東5-17東京都台東区西浅草2丁目66番22,880,00025.2(25.0)
8中央5-23東京都中央区湊1丁目16番21,850,00025.0(11.3)
8渋谷5-10 東京都渋谷区円山町86番2外2,250,00025.0(20.8)
10中央5-27東京都中央区銀座7丁目205番144,560,00024.9(14.8)

商業地の上昇率トップ3を占めている北海道千歳市は、半導体企業ラピタスが進出しているエリアです。昨年のトップ3は、こちらも半導体企業のTSMCが進出している熊本県の大津町や菊陽町が独占していました。半導体は、スマートフォンやパソコン、自動車などありとあらゆるものに使われるため、世界的に需要が高まっています。

4位の長野県白馬村、5位の岐阜県高山市は、国内外から人気を集める観光地です。6位以降は東京都が独占していますが、ここで示しているのは「上昇率」のランキング。ランクインしている浅草や渋谷、銀座などはもともと地価が高いため「上昇額」は極めて大きくなります。

【関東圏】2025年住宅地・商業地 基準地価変動率

住宅地


2021年2022年2023年2024年2025年
全国▲ 0.50.10.70.91.0
東京都0.21.53.04.65.6
神奈川県▲ 0.20.82.13.23.3
千葉県0.01.02.53.23.3
埼玉県▲ 0.10.81.51.61.5
茨城県▲ 0.50.00.30.71.2
栃木県▲ 0.9▲ 0.7▲ 0.5▲ 0.4▲0.3
群馬県▲ 1.2▲ 1.1▲ 0.9▲ 0.5▲0.4
(単位:%)

商業地


2021年2022年2023年2024年2025年
全国▲ 0.50.51.52.42.8
東京都▲ 0.32.04.58.411.2
神奈川県0.81.94.36.27.0
千葉県0.42.03.75.04.8
埼玉県▲ 0.31.02.02.73.0
茨城県▲ 0.20.30.61.41.8
栃木県▲ 1.0▲ 0.8▲ 0.6▲ 0.4▲0.3
群馬県▲ 0.9▲ 0.8▲ 0.40.20.6
(単位:%)

一都三県および茨城県は、住宅地・商業地ともに上昇し、上昇率も拡大していますが、群馬県は商業地のみ上昇、栃木県はいずれも下落しました。栃木県の地価下落は30年以上連続ですが、JR宇都宮線や次世代型路面電車LRT(ライトライン)沿線エリアなどの需要は堅調で、宇都宮市や南部の下野市、小山市では、住宅地・商業地ともに地価が上昇しています。

北関東の中で唯一、住宅地・商業地ともに上昇している茨城県は、つくばエクスプレス沿線エリアが地価の上昇を牽引しており、県南地域のJR常磐線沿線エリアにも影響が波及しています。群馬県の商業地は、昨年32年ぶりに地価が上昇し、2025年は上昇率が拡大しています。2年連続で観光客が過去最高を記録した草津町、再開発が進む高崎市や太田市、前橋市などが上昇を牽引しています。

【首都圏 】2025年住宅地・商業地 基準地価変動率

首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)は、すべての都道府県で住宅地・商業地ともに地価が上昇しました。

東京都


住宅地商業地
2024年2025年2024年2025年
区部6.78.39.713.2
多摩地区3.03.54.45.3
(単位:%)

東京都の基準地価は、区部・多摩地区ともに上昇し、2024年と比べて上昇幅は拡大しています。景気回復に加え、インバウンド需要の拡大が地価上昇に大きく影響しています。商業地の上昇率トップは、全国6位にもランキングした台東区浅草の27.4%です。住宅地のトップは、新宿区市谷船河原町で15.9%でした。

総じて都心5区の上昇率の高さが目立ち、住宅地の上昇率は12.9%と10%を超えています。多摩地区は、立川市の商業地が上昇率10%を超えており、国立市や調布市など再開発が進むエリアでは住宅地の地価も大きく上昇しています。

都心5区はオフィス市場も堅調で、オフィスビル(基準階面積100㎡以上)空室率は、2025年6月までの1年間で5%から3%台に大幅に低下しました。東京都は人口流入も継続しており、都心一極集中が加速している状況です。

神奈川県


住宅地商業地
2024年2025年2024年2025年
横浜市3.43.47.48.1
川崎市4.44.48.49.2
相模原市3.23.35.76.4
その他の市3.03.14.45.4
(単位:%)

神奈川県は、すべての市部で住宅地・商業地ともに地価が維持・上昇しました。横浜市はすべての区で住宅地・商業地ともに上昇し、とくに横浜駅周辺や2023年3月に開業した相鉄・東急直通線沿線エリアなどの地価上昇が目立ち、その影響はバス圏にも波及しています。市内の関内駅周辺の商業地の上昇率は20.0%で、県内トップ。駅周辺では再開発事業が推進されており、駅前には2025年12月に「BASEGATE横浜関内」が竣工予定です。

川崎市は、都心部の価格高騰の影響などから需要が堅調で、交通利便性が高い駅の徒歩圏内を中心に地価が上昇しています。相模原市は、リニア中央新幹線事業の期待感から、橋本駅周辺などを中心に地価の上昇が目立ちます。

千葉県


住宅地商業地
2024年2025年2024年2025年
東京圏4.64.86.86.5
地方圏▲ 0.5▲ 0.40.00.1
※東京圏:千葉市中央区、千葉市花見川区、千葉市稲毛区、千葉市若葉区、千葉市緑区、 千葉市美浜区、市川市、船橋市、木更津市、松戸市、野田市、成田市、佐倉市、習志野市、柏市、市原市、流山市、八千代市、我孫子市、鎌ケ谷市、君津市、 富津市、浦安市、四街道市、袖ケ浦市、印西市、白井市、富里市、酒々井町、栄町
※地方圏:銚子市、館山市、茂原市、東金市、旭市、勝浦市、鴨川市、八街市、南房総市、 匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市、大網白里市、神崎町、多古町、東庄町、 九十九里町、芝山町、横芝光町、一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、 長南町、大多喜町、御宿町、鋸南町

千葉県では、東京に近い東京圏と県南部の地方圏の格差が目立ちます。東京圏では、昨年に続き栄町と富津市を除くすべての市区町で住宅地・商業地の地価が上昇しました。一方、地方圏で上昇が見られるのは一宮町や大網白里市、東金市などごく一部です。

住宅地の上昇率トップは、全国ランキングでも10位にランクインした流山市の地点です。流山市にはつくばエクスプレス線の駅が3つあり、子育て支援も充実していることから、若年層を中心に人口の増加が続いています。松戸市や船橋市、千葉市など、都内に出やすいエリアも総じて上昇率が高くなっています。

埼玉県


住宅地商業地
2024年2025年2024年2025年
さいたま市2.32.24.54.9
川口市4.94.46.99.9
戸田市5.25.58.39.8

2025年の埼玉県内平均の基準地価は、住宅地・商業地ともに一都三県の中で最も上昇率が小さく、主要市の昨年からの上昇幅も他県と比べると大きくありません。

県内で最も上昇率が高かった地点は、住宅地が所沢市、商業地がさいたま市大宮区です。いずれも都心部に出やすく、再開発が進むエリアであり、同様に県南部の川口駅周辺や草加駅周辺なども大きく地価が上昇しています。

一方で、県北部の行田市や加須市、西部の皆野町や小鹿野町では、住宅地・商業地ともに地価が下落しており、千葉県同様、東京都に隣接する南部との格差が目立ちます。

・「2025年公示地価」に関する記事はこちら
2025年公示地価、バブル後最大の伸び率! 上昇率が高いエリアは?

まとめ

2025年の基準地価は全国平均で4年連続の上昇となり、バブル期以降で最大の伸びを示しました。とくに商業地の上昇が目立ち、インバウンド需要を取り込んだ観光地や再開発エリア、半導体関連の企業が進出したエリアが高い上昇率を見せました。また、元来地価の高い浅草や渋谷、銀座などの都心部も大きく上昇しています。

インフレを伴う国内景気の回復により、今後も堅調な推移が見込まれる一方、地価が上昇している地点ばかりではなく、一都三県の中でも地価が下落し続けているエリアも見られます。地価が上昇し続けるエリアとの格差が一層広がっていく可能性があるため、売り時・買い時の判断や物件選びの際には、地域の動向を慎重に見極めることが大切です。

物件探しや売却がもっと便利に。

無料登録で最新物件情報をお届けいたします。

Myリバブルのサービス詳細はこちら

logo不動産のプロに
無料で相談してみませんか

初めての不動産購入から売却・賃貸まで、トータルサポート致します。法務・税務関係の難しい内容についてもお気軽にご相談ください。