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外国人の不動産登記で必要な宣誓供述書とは?手続き・必要書類・注意点を解説

執筆者プロフィール

辻本 剛士
辻本剛士
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランナー1級

1984年8月3日生まれ、神戸・辻本FP合同会社代表。大学卒業後、医薬品・医療機器会社に就職し、在職中にFP1級、CFP、宅地建物取引士に独学で合格。会社を退職後、未経験から神戸で数少ない独立型FPとして起業。現在は相談業務、執筆業務を中心に活動している。
https://kobe-okanesoudan.com/

ざっくり要約!

  • 外国人でも日本の不動産を購入することは可能だが、購入後には国籍や居住地にかかわらず、法務局で不動産登記の申請を行うことが必須
  • 外国人個人が不動産を所有して登記する場合、氏名をカタカナや漢字で表記するだけでなく、ローマ字での氏名併記が義務付けられている

日本国内で不動産を購入したいと考える外国人の方の中には、登記方法が分からず不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
「そもそも外国籍では不動産の取得が難しいのでは」と感じる方も少なくありません。

実際には、外国人であっても国内不動産の購入や登記は可能です。しかし、その際には宣誓供述書をはじめとする特有の書類が必要となります。

この記事では、外国人が日本で不動産を取得する際に求められる書類や、登記の流れをみていきます。登記の際に生じる費用や税金といった実務的なポイント、さらには税制改正に伴う変更点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

外国人でも国内の不動産を購入・登記することは可能

外国人でも国内の不動産を購入・登記することは可能

「外国人は日本の不動産を買えないのでは」と心配される方もいますが、外国人でも日本の不動産を購入することは可能です。

確かに日本には「外国人土地法」という、外国人や外国法人による土地取得に制限をかけられる法律が存在します。

しかし、この法律は戦後80年間一度も適用されたことがなく、実際には外国人が日本の不動産を所有するうえで大きな制限は設けられていません。そのため、外国人であっても日本人と同様に不動産を購入することができます。

ただし、購入後には国籍や居住地にかかわらず、法務局で不動産登記の申請を行うことが必須です。

不動産登記に必要となる書類や手続きの詳細は、購入者の居住地の状況や在留資格などによって異なるため、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。

外国人が不動産登記する際の必要書類

外国人が不動産登記する際の必要書類

外国人が日本で不動産売買や登記を行う際、注意が必要となるのが住民票や印鑑登録証明書の取り扱いです。これらは日本人の登記申請でも基本となる書類ですが、外国人の場合は居住状況や在留資格によって求められる書類が異なります。

ここでは日本国内に居住している外国人(中長期在留者や永住者など)と、海外に居住している外国人や外国法人のケースに分けて、登記申請に必要となる書類を確認していきます。

外国人の不動産登記で必要な書類|中長期在留者や永住者など

中長期在留者や永住者など、日本に継続して住んでいる外国人が不動産を登記する場合には、以下のような書類が必要となります。

  • ローマ字氏名の表記がある住民票
  • 印鑑
  • 印鑑登録証明書

中長期在留者や永住者は住民基本台帳に登録されているため、日本人と同様に住民票を発行することができます。この住民票にはローマ字での氏名表記も記載され、登記簿への氏名記載に用いられます。

【外国人住民票サンプル】|鹿沼市

出典: 【外国人住民票サンプル】|鹿沼市

さらに住民票があれば実印を登録でき、印鑑登録証明書の発行も可能です。

一方で、印鑑や印鑑登録証明書を準備できない場合には、在日大使館や領事館、あるいは自国や居住国の公証人が発行した署名入りの宣誓供述書を提出して代替することになります。

外国人の不動産登記で必要な書類|海外居住者や外国法人

海外に居住している外国人や外国法人が不動産を登記する場合、日本国内では住民票の登録ができないため、印鑑登録証明書の発行もできません。

したがって、登記申請の際には、住民票や印鑑登録証明書に代わる以下のような書類を求められます。

【住民票の代わりとなる書類】

  • 駐日領事館、本国または居住国の行政機関、公証役場等で作成された宣誓供述書およびローマ字氏名の表記がある旅券(パスポート)のコピー
  • 本国または居住国で発行される住民票に相当する書類

なお、住民票に相当する書類については国や地域ごとに異なり、韓国であれば住民登録証明書、台湾であれば戸籍謄本、中国であれば公証書などが該当します。

【印鑑登録証明書の代わりとなる書類】

  • 宣誓供述書
  • 印鑑登録証明書制度がある国の場合は、自国で発行された証明書

このように海外居住者や外国法人の場合には、日本人や中長期在留者とは異なり、自国や居住国で取得できる証明書類を用意する必要があります。国や地域によって発行可能な書類が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

出典:外国居住の外国人や外国法人が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合の住所証明情報について|法務省

外国人が不動産登記する主な流れ

外国人が不動産登記する主な流れ

必要な書類がそろったら、いよいよ不動産登記の手続きに進みます。ここでは、特に海外に在住している外国人が日本国内の不動産を購入する場合を想定し、その手続き全体を確認していきます。

大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 売買契約・残代金決済の代理人を定める 
  2. 売買契約を交わす 
  3. 不動産登記の申請手続きする
  4. 納税管理人を選任する
  5. 財務大臣に報告書を提出する

それぞれの流れについて順にみていきます。

1.売買契約・残代金決済の代理人を定める

海外に居住する外国人が日本で不動産を購入する場合、現地で契約や決済を直接行うことは容易ではありません。そのため、多くの場合は代理人を立て、売買契約から残代金の支払いまでの手続きを進めていきます。

契約や決済、さらには税務関連の対応を確実に行うためにも、信頼できる代理人を選任しておくことが重要です。

一般的に、売買契約は不動産会社が、残代金の決済については司法書士が代理人を務めることが多いです。

特に決済は取引の中でも重要な場面であるため、海外送金や外国人取引の経験が豊富な代理人を選ぶことが大切です。

2.売買契約を交わす

購入物件が見つかれば売買契約を交わすことになります。その際に代理人を定めていれば、代わりに契約手続きを進めてもらうことができます。

外国人購入者の場合、日本語版と併せて自国語版の契約書を作成してもらうとトラブル防止にもなり安心です。また、不動産会社を通じて契約する際には、日本の不動産会社が重要事項説明の義務を負い、必要に応じて通訳を介した説明が行われます。

売買契約にあたって必要となる主な書類は以下のとおりです。

  • 代理人の委任状
  • 住民票または住民票に相当する書類
  • 印鑑
  • 印鑑登録証明書または代わりとなる書類
  • 収入印紙

一般的な流れとしては、契約時に手付金を支払い、物件引き渡しの際に残代金を支払う形となります。スムーズに取引を進めるためには、あらかじめ外国人購入者が代理人へ代金を送金し、決済当日に代理人が売主へ振り込むという方法が用いられます。

3.不動産登記の申請手続きする

不動産の所有権移転登記は、売主と買主が共同で申請する形で行われます。登記申請の際には、次のような書類を準備する必要があります。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報(売買契約書など)
  • 住民票
  • 印鑑登録証明書

前述のとおり、海外に居住している外国人の場合、日本国内で住民票や印鑑登録証明書を発行することができません。そのため、代わりに宣誓供述書や自国の公的機関が発行する証明書など、適切な書類を揃えて登記申請を進めます。

こうした手続きは専門知識が必要であり、手間もかかるため、通常は司法書士に代行してもらうのが一般的です。

4.納税管理人を選任する

不動産を売買する際には、納税管理人を定める必要があります。

納税管理人とは、海外に居住している所有者に代わり、日本国内で発生する税金の納付や税務手続きを行う人のことです。

不動産を購入した場合には、不動産取得税、所得税、固定資産税などの税金を支払う義務が生じます。海外在住の外国人は日本で直接納税を行うことが難しいため、納税管理人を通じて手続きを進めることになります。

なお、納税管理人は日本国内に住所があれば基本的に誰でも選定することが可能です。一般的には専門家である税理士のほか、不動産会社の担当者や信頼できる知人が選ばれるケースが多いです。

5.財務大臣に報告書を提出する

海外在住の外国人が日本国内で不動産を取得した場合には、外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づき、取得の日から20日以内に日本銀行を経由して財務大臣に報告を行う必要があります。

報告書には、取得者の氏名・住所・国籍、取得した不動産の内容、取得の対価といった情報を記載しなければなりません。

ただし、以下のケースに該当する場合には報告は不要です。

  • 居住用を目的として取得する場合
  • 非営利目的の業務用や事務所用として取得する場合
  • ほかの非居住者から不動産を取得する場合

このように、居住用や非営利目的など一部のケースでは報告が不要ですが、投資や営利目的で不動産を取得する場合には報告義務が生じます。

出典:非居住者による本邦の不動産等取得に係る報告|財務省
外為法に基づく「本邦にある不動産又はこれに 関する権利の取得に関する報告書」の提出|財務省

外国人が不動産登記するときに必要な費用・税金

外国人が不動産登記するときに必要な費用・税金

不動産を購入して登記を行う際には、購入代金とは別に、税金や各種手続きに伴う費用が発生します。これらは登記を進めるうえで必要になる出費のため、事前に把握しておくことが大切です。

以下が不動産登記をする際の主な費用になります。

項目概要
登録免許税所有権移転登記を行う際に課される国税。購入価格や固定資産評価額に基づき算出される
不動産取得税不動産を取得した際に都道府県から課される地方税
印紙税売買契約書などの文書作成に必要な税金。契約金額に応じて印紙を貼付する
司法書士報酬登記手続きを司法書士に依頼する際の報酬
翻訳報酬(必要な場合)契約書や登記関連書類を翻訳する際の費用
代理人費用契約や決済を代理人に依頼する場合に発生する費用

不動産の購入費用に加えて、これらの税金や諸費用もあらかじめ予算に組み込んでおくと安心です。費用はおおむね物件価格の3~10%程度が目安となるでしょう。

外国人が不動産登記する際に買主に発生する源泉徴収義務

外国人が不動産登記する際に買主に発生する源泉徴収義務

外国人や海外居住者が日本国内の不動産を売却する場合、買主には源泉徴収義務が発生します。

これは「源泉徴収制度」と呼ばれる仕組みで、支払い者である買主が売却代金をそのまま支払うのではなく、あらかじめ10.21%の税金を差し引き、その金額を税務署へ直接納付する制度です。

売却した非居住者は、その後確定申告を行うことで源泉徴収された金額が精算され、納めすぎた分があれば還付を受けることができます。

例えば、アメリカ在住のAさん(非居住者)が、日本に住むBさんに5,000万円で土地を売却したケースを考えてみましょう。

Bさんは代金を支払う際、5,000万円から10.21%にあたる510万5千円を差し引き、残りの4489万5千円をAさんに支払います。差し引いた510万5千円は、Bさんが国に納める流れとなります。

出典:No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき|国税庁

外国人の不動産登記における重要な変更点

外国人の不動産登記における重要な変更点

外国人による不動産登記については、2024年4月の法改正により新たな取り扱いが導入されました。これまで必要とされなかった情報の記載が必要になるなど、実務面での対応が変わっています。

ここでは実際の変更点3つを取り上げ、それぞれ詳しく解説していきます。

ローマ字の併記

外国人個人が不動産を所有して登記する場合には、氏名をカタカナや漢字で表記するだけでなく、ローマ字での氏名併記が義務付けられています。

中国人や韓国人など氏名を漢字で表記するケースにおいても、必ずローマ字で記載しなければなりません。

記載にあたっては、主に次のルールが定められています。

  • ローマ字はすべて大文字で表記する
  • ローマ字は「性→名」の順にし、間にスペースを入れる
  • カタカナ氏名の場合、氏と名の間にスペースは入れず、「・」や「、」で区切る

以下は登記サンプルです。

不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて|法務省

出典:不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて|法務省

なお、このローマ字併記は所有権の登記に限定されており、地上権・賃借権・抵当権などの権利には適用されません。また、外国法人が所有者となる場合もローマ字併記の対象外となっています。

日本国内の連絡先の登記

日本に住所を持たない外国人個人や外国法人が国内の不動産を所有する場合には、日本国内での連絡先を登記することが求められます。個人の場合は、国内で連絡先となる人物の氏名と住所が必要となり、次のような証明書類を提出する必要があります。

  • 印鑑登録証明書
  • 住民票の写し
  • 戸籍の附票の写し

法人の場合は、連絡先となる会社の名称および住所・所在地を求められ、会社法人等番号がある場合にはその番号も記録されます。

もし国内に連絡先となる人物や法人を確保できない場合には、「国内に連絡先がいない」旨を記載したうえ、申請書を作成して署名・押印を行って対応します。

指定できる連絡先と用意する書類

日本国内の連絡先としては、親族や友人といった個人のほか、不動産会社や弁護士、司法書士などの法律家、さらには税理士などを指定することができます。

特に税務対応も含めて手続きを円滑に進められることから、納税管理人を兼ねて指定する方法が推奨されます。

連絡先として指定する際には、その人物や法人の承諾が必要となり、併せて承諾書や印鑑証明書を用意しなければなりません。これらの必要書類を揃えることで、その人物や法人を登記上の正式な連絡先として登録することができます。

会社法人等番号等がない外国法人は設立準拠国を登記する

不動産所有者となる法人については、登記の際に会社法人等番号を記録することが求められます。その際に日本国内で法人登記を行っている会社であれば問題なく登記できますが、番号を持たない外国法人の場合には、設立された国(設立準拠国)を登記する必要があります。

このとき、設立準拠国を証明するためには、次のような書類が必要です。

項目概要
設立準拠法国政府の住所証明書設立準拠法国政府の住所証明書
外国法人がどの国で設立され、どこに所在するかを証明する書面
設立準拠法国政府の書面等の写し外国法人がその国の法律に基づき設立されたことを確認できる公的文書の写し

これらの書類を通じて、当該外国法人の設立が適法であることを確認します。

出典:令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について|法務省

まとめ

外国人であっても、日本国内で不動産を購入し登記することは可能です。ただし、その際にはローマ字氏名の表記がある住民票や印鑑、印鑑登録証明書などの書類を準備する必要があります。

また、2024年4月の法改正により、外国人個人が不動産登記をする場合にはローマ字での氏名併記が義務付けられ、日本国内での連絡先を登記することも求められるようになりました。

外国人の不動産購入や登記には、専門的な知識や複雑な手続きが伴います。安心して不動産購入を進めるためにも、事前に制度や必要書類をしっかり確認しておきましょう。

この記事のポイント

外国人が不動産登記する際の必要書類は?

中長期在留者や永住者など、日本に継続して住んでいる外国人が不動産を登記する場合には、ローマ字氏名の表記がある住民票、印鑑、印鑑登録証明書といった書類が必要になります。

詳しくは「外国人が不動産登記する際の必要書類」をご覧ください。

外国人はどのように不動産登記する?

海外に在住している外国人が日本国内の不動産を購入する場合、大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 売買契約・残代金決済の代理人を定める
  2. 売買契約を交わす
  3. 不動産登記の申請手続きする
  4. 納税管理人を選任する
  5. 財務大臣に報告書を提出する

詳しくは「外国人が不動産登記する主な流れ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

辻本 剛士

海外在住の方の場合、送金や残代金の決済に関して予期せぬトラブルが発生しやすく、手続きが滞ることもあります。こうしたリスクを避けるためにも、司法書士や税理士などの専門家に相談し、併せて信頼できる代理人を選定しておきましょう。代理人を通じて資金管理や決済を行うことで、現地に赴くことが難しい場合でも取引を安心して進められます。

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