エスクロー
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エスクローとは?メリット・デメリットや日本での普及状況を紹介

執筆者プロフィール

桜木 理恵
資格情報: Webライター、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、管理業務主任者

大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持。
https://x.com/sakuragirie

ざっくり要約!

  • エスクローとは、売主・買主にとって第三者的な立場であるエスクロー事業者が介在することにより、売買取引の安全性や公平性を確保する仲介サービス
  • エスクローのメリットは、第三者が介入することで、代金決済の安全性や公平性、透明性が保証されること

不動産売買など大きな資金が動く取引を安全・確実に行う際の選択肢のひとつとして、エスクロー決済があります。

この記事では、エスクローの概要や一般的な流れ、エスクローのメリット・デメリット、エクスロー決済が活用されている分野、日本の不動産取引でのエスクローの普及状況などをわかりやすく紹介します。

不動産取引を検討中の方や不動産取引に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。

エスクローとは

エスクローとは

はじめにエスクローの概要と、一般的な流れを解説します。

エスクローの概要

そもそもエスクロー(Escrow)という言葉は「預託」を意味し、日本では「第三者寄託」ともいいます。

エスクローとは、売主・買主双方にとって第三者的な立場であるエスクロー事業者が介在することにより、売買取引の安全性や公平性を確保する仲介サービスのことです。

エスクロー事業者が間に入ることで、取引内容の透明性や費用の妥当性、問題となる要因がないかなどをチェックしてもらうことができ、売買代金の受け渡しや権利移転、権利証の交付までが保証されます。

元々エスクローはアメリカの不動産取引分野で発達したサービスで、現地ではごく一般的に利用されています。そのためアメリカでは、不動産詐欺のようなトラブルがほとんどないのが現状です。

エスクローは、日本国内ではあまり普及していないと感じるかもしれません。しかし実はフリマアプリやインターネットオークションなど、匿名性の高い個人間取引ではエスクローがよく使われており、知らない間に利用している方も多いのではないでしょうか。

フリマアプリやインターネットオークションのように、事業者が代金をいったん預かり、買主が商品を問題なく受け取ったことを確認してから売主に代金を支払う手法は、まさにエスクロー決済です。

エスクローの流れ

エスクローの一般的な流れは、以下のようになります。

  1. 売主・買主間で売買契約が成立
  2. 買主が代金をエスクロー事業者に預託する
  3. エスクロー事業者が入金確認後、売主に支払い完了の通知
  4. 売主は商品を発送(権利の移転実行)
  5. 買主が検品確認後、エスクロー事業者から売主に代金を支払う

売主・買主間で売買契約が成立しても、代金の授受は直接行わず、買主はいったん代金をエスクロー事業者に預けます。

売主は代金が預託された旨の連絡通知を事業者から受けた後に、商品を発送します。不動産取引であれば、所有権を移転することになります。

買主は商品を受取り、問題がないことを確認後、代金がエスクロー事業者経由で売主に支払われます。

直接取引に比べて手順は増えますが、エスクロー事業者が介入することで、売主は代金を間違いなく受け取ることができ、買主は契約に定めた商品を安全に手にすることができるのです。

エスクローのメリット・デメリット

エスクローのメリット・デメリット

エスクローを利用することでメリットがありますが、デメリットもあります。ここでは、おもなメリット・デメリットについて解説します。

メリット

エスクローは、第三者が介入することで代金決済の安全性や公平性、透明性が保証されるのがメリットです。

取引内容の調査や価格の妥当性、問題となる要因がないかなどチェックしてもらえるため、売主・買主間のトラブルを未然に防ぐことができます。

代金の受け渡しや権利の移転まで保証してもらえるので、不動産売買など大きな取引も安心して行うことができるでしょう。

デメリット

エスクローのデメリットは、エスクロー事業者の手数料がかかること、また第三者が介入することで手続きの負担が増えるのがデメリットです。

エスクロー事業者へ支払う手数料は、取引額の約1~2%が目安となります。ただし取引内容や規模、サービスの範囲で変動します。

一般的には契約書に「取引額の〇%」などと明示されますが、どこまでがサービスに含まれるのなど、あらかじめ条件やサービス内容を確認しておくことが大切です。

エスクローが活用されている主な分野

エスクローが活用されている主な分野

エスクロー決済は、どのような分野で活用されているのでしょうか。ここでは、代表的な分野を紹介します。

不動産取引

アメリカをはじめ、海外の不動産取引ではエスクローがよく利用されています。アメリカでは1947年からエスクローの歴史が始まっており、今や不動産取引に欠かせないシステムとなっています。

不動産売買契約締結の際は、売主・買主双方がエスクローを設定し、残代金決済および所有権移転を行うため、不動産詐欺などのようなトラブルに発展することはほとんどありません。

しかし日本では不動産取引にエスクローを利用するケースはごくわずかで、一般消費者には浸透していないのが実情です。

M&A(企業買収)

M&A(企業買収)には、巨額の資金が動くことになります。公正かつ安全に取引を遂行するために、譲渡契約の条件が正式に整うまでの間、資金や株式を金融機関やエスクロー事業者に預けることがあります。

ただしM&Aにおいて、すべてがエスクローを活用するわけではありません。早急な売却を予定しており、十分な企業調査や分析を行えないときなどの限定的な活用か、安全性の担保が必要なときに利用されます。

フリマアプリ・オークションサイト

日本国内でエスクローがよく活用されているのは、フリマアプリやオークションサイトなどの電子商取引の場面でしょう。

フリマアプリやオークションサイトでは、見ず知らずの相手と直接会うことなく売買するため、本来はトラブルにつながりやすい取引といえます。

フリマアプリの多くは、事業者に代金をエスクロー(預託)し、商品発送後、双方が取引の評価をした後に売主に入金される流れになっています。

したがって「商品が届かない」「異なる商品が届いた」「代金が支払われない」といったトラブルを防ぐことができます。つまりエスクロー決済を活用することで、取引の安全性を高めることができます。

もしフリマアプリやオークションサイトにエスクロー決済が採用されていなかったら、ここまで多くの方が利用するサービスにはならなかったかもしれません。

日本の不動産売買でのエスクローの普及状況

日本の不動産売買でのエスクローの普及状況

エスクローはアメリカで考案され、アメリカの不動産売買で発展してきました。

エスクローは不動産取引の安全性を高めることができるのにもかかわらず、なぜ日本ではあまり普及していないのでしょうか。

最後に日本での不動産取引の特徴と、エスクローが普及していない理由について解説します。

日本での不動産取引の状況

日本で個人が不動産を売却しようとする場合、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。不動産の購入を検討する場合も同様で、個人と個人の不動産取引の仲介をするのが不動産会社(仲介会社)の役目です。

この場合、不動産会社が担うのは不動産取引のサポートであり、取引価格の公平性や妥当性、取引の完結を保証することはありません。

そもそも不動産取引や不動産に関する知識を十分に有している個人はまれで、多くの場合は不動産会社に売却価格や、購入するか否かの相談をすることになるでしょう。

不動産会社の担当者の実績が豊富で、かつ誠実であれば、物件の価値に対して妥当な金額で売買できる可能性が高くなります。

しかし担当者の経験が不足している、もしくは不誠実であれば、売主もしくは買主のどちらかが損をするおそれがあり、売主や買主ができる対策として不動産会社選びが重要になります。

エスクローが普及しているアメリカでは、不動産取引でトラブルが発生することは少ないといわれていますが、日本における一般的な不動産取引は前述のとおりで、第三者が介入することは基本的にありません。

結果、取引の抜け穴を狙った地面師や手付金詐欺などの事件が少なからず発生しています。

日本でエスクローが普及していない理由

日本の不動産取引において、エスクローが広まらない理由について解説します。

必要な資格・制度が厳しい

日本にはそもそもエスクローを規制する法律や制度がなく、信託法の枠組みを利用してエスクロー取引をしています。

つまり信託業免許を所有し、管理型信託業登録と信託業兼営認可を受けた金融機関のみがエスクローサービスを提供できることになります。

条件を満たす事業者は少なく、エスクロー事業者が足りていないのが実情です。

ちなみにフリマアプリなどのエスクロー決済は、資金移動業者の登録を受けた会社が例外的におこなえる取引です。取引できる金額に制限があるため、不動産取引では利用できません。

仕組みが難しく一般的な知名度が低い

日本国内ではエスクローの知名度が低く、そもそもエスクローの仕組みを知らない方が多いため、利用に至っていないと思われます。

またエスクローの仕組みの分かりづらさや、どこへ依頼したらよいのかわからないといった理由で、エスクローを利用する機会を失っているのでしょう。

まとめ

エスクローとは、売主・買主双方にとって中立的な立場であるエスクロー事業者が介在することで、売買取引の安全性や公平性を高めてくれる仲介サービスです。

エスクローを利用することで、取引内容に問題がないか、価格は妥当かなどをチェックしてもらうことができ、売買代金の受け渡しや権利移転まで保証されるのがメリットです。

ただしエスクロー事業者の手数料がかかり、手続きの負担も増えます。依頼する場合はどこまでがサービスに含まれるのか、確認するようにしましょう。

エスクローが活用されるのは、おもに不動産取引やM&A、フリマアプリやオークションサイトなどですが、日本の不動産取引においてエスクローはあまり普及していません。

普及していない原因としては、日本にはエスクローを規制する法律がなく、条件を満たしたエスクロー事業者が足りていないこと、仕組みが難しいうえ、知名度が低いことが挙げられます。

この記事のポイント

エスクローのメリットは?

エスクローは、第三者が介入することで代金決済の安全性や公平性、透明性が保証されるのがメリットです。

取引内容の調査や価格の妥当性、問題となる要因がないかなどチェックしてもらえるため、売主・買主間のトラブルを未然に防ぐことができます。

詳しくは「エスクローのメリット・デメリット」をご覧ください。

エスクローが活用されている主な分野は?

アメリカをはじめ、海外の不動産取引ではエスクローがよく利用されています。アメリカでは1947年からエスクローの歴史が始まっており、今や不動産取引に欠かせないシステムになっています。

不動産売買契約締結の際は、売主・買主双方がエスクローを設定し、残代金決済および所有権移転を行うため、不動産詐欺などのようなトラブルに発展することはほとんどありません。

詳しくは「エスクローが活用されている主な分野」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

昨今では、地面師や不動産詐欺グループのニュースやドラマが注目されていたこともあり、不動産取引に不安を抱えている方は少なくないでしょう。日本ではエスクローはあまり普及していませんが、不動産会社によってはエスクロー事業者と提携していることがあり、決済代行サービスなどを提供しているケースもあります。
不動産会社に購入や売却の相談をする際は、提供しているサービスについて確認し、比較したうえで依頼先を決めるようにしましょう。

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