定期借家とは
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定期借家契約とは何?普通借家契約との違いをわかりやすく解説

執筆者プロフィール

竹内 英二
不動産鑑定士

不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、住宅ローンアドバイザー、中小企業診断士の資格を保有。
https://grow-profit.net/

ざっくり要約!

  • 借家契約には定期借家契約と普通借家契約の2種類がある
  • 定期借家契約とは更新の概念がない賃貸借契約で、主に店舗やシェアハウスの賃貸借契約で用いられている

賃貸借契約には、定期借家契約と普通借家契約の2種類があります。
定期借家契約は更新の概念がなく、契約満了時に再契約できないと退去しなければならない契約です。

普通借家契約のように安心していつまでも住める契約ではないため、定期借家契約の物件を選ぶときは制度を十分に理解する必要があります。

借主の視点から見た定期借家契約とは、どのような契約なのでしょうか。
この記事では「定期借家契約」について解説します。

定期借家契約・普通借家契約とは?

借家(しゃっか)とは、アパートや賃貸マンション、オフィスビル、貸し店舗等の建物を借りることです。
土地を借りる借地(しゃくち)とは異なります。

借家契約には、定期借家契約と普通借家契約の2種類があります。
土地を借りる借地契約にも定期借地契約と普通借地契約の2種類がありますが、これから解説する内容はあくまでも借家契約であり、借地契約とは異なります。

定期借家契約の概要

定期借家契約とは、更新の概念がない賃貸借契約のことです。

主に店舗やシェアハウスの賃貸借契約で用いられています。

更新の概念がないため、定期借家契約では「契約期間満了時に確定的に賃貸借契約が終了」します。

そのため、定期借家契約では、契約期間が満了すると借主は原則として退去しなければなりません。

ただし、例外的に契約満了時に新たな賃貸借契約を再契約すれば、そのまま物件を借り続けることはできます。

再契約は更新とは異なり、全く新規に契約を締結することです。

新しい契約には相手方(貸主)の合意が必要であるため、貸主の合意が得られなければ再契約をすることはできません。

契約満了時に再契約をできる保証はないため、定期借家契約では基本的には契約満了時に退去しなければいけないと理解したうえで契約することが必要です。

普通借家契約の概要

普通借家契約とは、更新の概念がある賃貸借契約のことです。

賃貸借契約書の名称に関わらず、契約書の中に「更新」に関する規定が含まれていれば普通借家契約となります。

定期借家契約は2000年にできた比較的新しい借家契約ですが、普通借家契約は昔から存在する借家契約です。

普通借家契約では、契約満了時に借主が更新したいと申し出れば、基本的に更新をすることができます。

理由としては、普通借家契約では貸主が更新拒絶することは極めて困難となっているからです。

貸主が更新拒絶するには、「正当事由」と「立ち退き料」の2つが必要です。
正当事由とは借主を退去させるに相当する正当な理由のことであり、立ち退き料とは弱い正当事由を補完するために支払われる金銭のことを指します。

通常、貸主は更新拒絶のために立ち退き料を支払いたくないため、普通借家契約では借主が更新したいと申し出れば拒まれることはなく、そのまま更新ができるのです。

定期借家契約では貸主の合意がないと再契約できませんでしたが、普通借家契約では貸主は更新の拒絶が困難であるため、借主が申し出れば基本的に更新ができます。

長く住めるかどうかを判断基準とした場合、借主にとって定期借家契約は不利な契約、普通借家契約は有利な契約というところが相違点です。

定期借家契約と普通借家契約の違い

定期借家契約と普通借家契約の違い

定期借家契約と普通借家契約には、いくつかの点で違いがあります。
契約で損をしないためには、違いを把握しておくことが大事です。
ここでは、定期借家契約と普通借家契約の主な違いについて解説します。

契約更新が可能かどうか

定期借家契約にはそもそも更新という概念がないため、更新はできません。
類似の概念として再契約がありますが、再契約するには貸主との合意が必要であることから、再契約できるとは限らないといえます。

一方で普通借家契約では、借主から更新をしたいという申し出をすれば基本的に更新ができます。

理由としては、普通借家契約は貸主から更新拒絶をすることが極めて困難だからです。

そのため、普通借家契約は貸主が更新を拒絶しない(できない)ことが通常となっており、実質的には借主側の一方的な意思表示のみによって更新ができます。

建物賃料の増減額請求権があるかどうか

定期借家契約も普通借家契約も、基本的には借主と貸主の双方に家賃の増減額請求権があります。

家賃の増減額請求権とは、家賃が周辺の相場と乖離したとき等に借主側からは家賃を下げたい、貸主側からは家賃を上げたいといった請求ができる権利のことです。

増減額請求権に関しては、定期借家契約と普通借家契約で特約の有効性に違いがあります。

定期借家契約では、特約の中で家賃の増減額請求権を排除することが可能です。
つまり、「借主から家賃の減額を請求できない」といった特約も有効であり、特約があれば借主からは家賃の減額を請求できないことになります。

一方で、普通借家契約では、家賃の不増特約は有効ですが、不減特約は無効です。
不増特約とは「貸主から家賃を増額請求できない」とする特約で、不減特約とは「借主から家賃を減額請求できない」という特約になります。

そのため、普通借家契約では契約書の中に仮に不減特約が含まれていても、その特約は無効であり、借主からは家賃を減額できます。

契約は口頭でも可能か書面が必要か

定期借家契約は書面による契約が必要であり、普通借家契約は口頭の契約でも有効です。

定期借家契約は、公正証書等の書面により契約することが要件となっています。

公正証書「等」となっているため、公正証書はあくまでも例示として挙げられているだけです。
定期借家契約は公正証書によらなくても、市販の契約書で締結しても書面で契約すれば有効となります。

また、定期借家契約では、契約締結前に借主に対して定期借家契約であることを書面で交付し、説明しなければならない点も要件となっています。

契約期間の終了通知義務があるかどうか

定期借家契約では、原則として貸主が借主に対して契約期間の終了前に契約終了の通知義務があります。

それに対して、普通借家契約では、貸主に契約終了の通知義務はありません。

定期借家契約の終了通知は、契約期間が1年以上の場合には、期間満了の1年前から6カ月前までの間に行うことが必要です。
一方で、契約期間が1年未満の場合には、貸主に定期借家契約の終了通知の義務はありません。

中途解約が可能かどうか

定期借家契約も普通借家契約も、賃貸借契約書に借主からの中途解約条項が定められていれば、借主から中途解約をすることは可能です。

一般的に定期借家契約や普通借家契約の契約書では、借主からの中途解約条項は定められているため、借主から問題なく中途解約できるケースは多いといえます。

一方で、借主からの中途解約条項が定められていない場合、期間の定めのある賃貸借契約では定期借家契約も普通借家契約も原則として借主から解約することはできません。

ただし、定期借家契約では床面積が200平米未満の居住用建物に限り、転勤や療養、介護等のやむを得ない事情がある場合、中途解約条項がなくても借主から解約はできます。

定期借家契約の借主からみた主なメリット3つ

定期借家契約の借主からみた主なメリット

一般的に、借主から見ると定期借家契約は普通借家契約に比べて不利な契約です。
ただし、借主から見て有利な部分もあるため、この章では借主から見た定期借家契約のメリットについて解説します。

1.相場より安い家賃で住める場合がある

アパートや賃貸マンションで定期借家契約が採用されている場合、家賃は相場よりも安くなっていることが多いです。

アパートや賃貸マンションでは普通借家契約が主流であることから、借主に不利な定期借家契約は家賃が低めに設定されていることが多くなっています。

2.物件の選択肢が広がる

定期借家の物件まで含めて検討すると、物件の選択肢が増える点がメリットです。

特に、店舗は定期借家契約が主流となっているため、定期借家物件も含めて検討すると物件の幅を広げることができます。

3.良好な物件に住める可能性がある

アパートや賃貸マンションの定期借家物件は、リロケーションで使われることがよくあります。

リロケーションとは、転勤時等に一時的に貸し出す賃貸のことです。

リロケーションでは、海外転勤をするような個人が有している分譲マンションが賃貸に出されることがよくあります。

いわゆる「分譲賃貸」と呼ばれる物件で、全戸が賃貸に供されている賃貸マンションよりも仕様が高い物件が多いです。

そのため、定期借家物件では良好な物件に住める可能性があります。

定期借家契約の借主からみた主なデメリット2つ

定期借家契約の借主からみた主なデメリット

定期借家にはデメリットも存在し、住んでから後悔しないようにするにはデメリットも把握しておくことが適切です。
この章では、借主から見た定期借家契約のデメリットについて解説します。

1年未満の契約もある

定期借家契約では、契約期間を1年未満とすることも可能です。

定期借家物件の中には、1年未満の契約となっている物件もあり、短期間で退去しなければいけないケースもある点がデメリットとなります。

定期借家契約が主流となっているシェアハウスでは、契約期間が1カ月といった物件も存在します。

トラブルを発生させた場合は再契約できず、すぐに退去ということもあるため、長く住みたい場合にはルールを守り問題を起こさないことが必要です。

再契約できない場合がある

定期借家契約は、再契約できない場合がある点もデメリットです。

例えば、定期借家契約のリロケーション物件では、契約終了時は貸主が転勤から戻ってくるときに設定されていることがよくあるため、再契約できないことが多いです。

また、建て替えを予定している古いアパートが定期借家契約を採用している場合、数年後に建て替えるため、再契約できないことが多いといえます。

この記事のポイント

定期借家契約と普通借家契約の違いは?

定期借家契約にはそもそも更新という概念がないため、更新はできません。類似の概念として再契約がありますが、再契約するには貸主との合意が必要であることから、再契約できるとは限らないといえます。
一方で普通借家契約では、借主から更新をしたいという申し出をすれば基本的に更新ができます。

詳しくは「定期借家契約と普通借家契約の違い」をご覧ください。

借主にとって定期借家契約のメリットは?

アパートや賃貸マンションで定期借家契約が採用されている場合、家賃は相場よりも安くなっていることが多いです。
アパートや賃貸マンションでは普通借家契約が主流であることから、借主に不利な定期借家契約は家賃が低めに設定されていることが多くなっています。

詳しくは「定期借家契約の借主からみた主なメリット3つ」をご覧ください。

ライターからのワンポイントアドバイス

シェアハウスでは、短期間の定期借家契約が採用されていることが一般的となっています。理由としては、シェアハウスは住民間でトラブルが発生する場合もあり、問題を生じさせた人を速やかに退去させる必要があるからです。一方で、アパートや賃貸マンションでは、普通借家契約が主流となっています。アパート等で定期借家契約が採用されている場合には、なぜ定期借家契約なのか、理由を貸主に問い合わせることが適切です。理由次第では再契約できない可能性が十分にあることを理解しておきましょう。

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