専門家コラム
2026年上半期の新規住宅着工戸数
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
ダウンロードDOWNLOAD
不動産投資を考えるうえで、「これから住宅がどれだけ供給されるのか」は重要な指標の一つです。特に賃貸住宅については、新規供給が増えれば競争が激しくなる一方、着工が減少すれば既存物件の需給が引き締まり、賃料の上昇につながる可能性があります。その先行指標として参考になるのが、国土交通省が毎月公表する「新設住宅着工戸数」です。「新設住宅着工戸数」は将来の賃貸市場における供給量や物件の競争環境などを読み解いていくうえで役立つ、公的なデータとして知られています。2026年上半期(1~6月)は、住宅市場に少し気になる変化が見られました。上半期全体では前年同期とほぼ同水準だったものの、4月以降では増加傾向がみられます。
今回は、この2026年上半期の「新設住宅着工戸数」を、特に不動産投資家が注目したい「貸家」を中心に解説していきます。
「新設住宅着工戸数」とは?
新設住宅着工戸数とは、国土交通省が実施する「住宅着工統計」において、住宅の着工状況を戸数や床面積などで把握したデータです。建築基準法第15条第1項に基づく建築工事の届出をもとに集計され、構造、建て方、利用関係、資金などの項目に分類されています。月次の速報性も高く、原則として調査対象月の翌月末に公表されます。ちなみに、ここでいう「新設」とは、新築だけではなく、増築や改築によって住宅戸数が新たに増える工事も含まれています。今回着目する「貸家」の着工戸数が増えているということは、将来的に賃貸市場へ新しい住宅が供給されることを意味します。もちろん、着工した住宅がすぐに入居可能になるわけではありませんが、数カ月から1~2年程度先の賃貸住宅の供給動向を考える際の材料になります。
例えば、人口や世帯数が増えているエリアで貸家の着工が増えているのであれば、需要の拡大に対応した供給と考えることができます。一方、人口が減少しているにもかかわらず住宅の供給が増え続けている地域では、将来的な空室増加や賃料下落のリスクに注意する必要があります。
つまり、新設住宅着工戸数は、それ単体で投資判断をするためのデータではありません。人口・世帯数、賃料、空室率などのデータと組み合わせることで、その地域の住宅需給を読み解くための重要な材料になるのです。
では、実際に2026年上半期の住宅着工はどうだったのでしょうか。
2026年上半期の新設住宅着工戸数と前年同月比(貸家)
2026年上半期の新設住宅着工戸数と前年同月比(貸家)
上のグラフは、2026年上半期の新設住宅着工戸数(貸家)と前年同月比の動向です。1月は2万4032戸、2月は2万5042戸、3月は2万7678戸となり、年初から3か月連続で前年を下回る状態が続きました。ところが、4月に入ると状況が変わります。4月の貸家着工戸数は2万9265戸、前年同月比17.3%増と、前年を大きく上回りました。さらに5月は2万5175戸で33.3%増、6月は3万253戸で24.6%増となり、4月以降は2桁の増加となっています。
このグラフでまず注目したいのは、年初と4月以降で明確に動きが変わっていることです。1~3月は前年割れが続いていたのに対し、4月からは一転して大幅なプラス。特に5月は前年同月比33.3%増と、上半期の中でも突出した伸びとなりました。この前年同月比の増加には、昨年4月からの省エネ基準の義務化と建築基準法の改正による駆け込み需要の可能性があると考えられます。
まとめ
省エネ基準とは、新築の住宅を建てる際に、断熱性能や冷暖房等の消費量を一定の省エネルギー性能を持たせるという基準です。また、建築基準法の改正は、「確認審査期間が7日から35日以内に延びる」という内容であり、これらが2025年4月から法律で義務化されることを受け、これらの制度変更を前に、2025年3月には住宅着工が大きく増加しており、その反動で2025年4月以降の着工戸数が低い水準となった側面があります。また、新設住宅着工戸数の特性として、大型マンションの建設等の要因で月ごとの数値に大きく変動がある傾向にあります。全体の動向を追うとともに、都道府県別等も公表されているのでご自身に即したデータを確認し分析していくとよいでしょう。
- ご留意事項
- 不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
- 本マーケットレポート に掲載されている指標(例:利回り、賃料、不動産価格、REIT指数、金利など)は、
不動産市場や金融市場の影響を受ける変動リスクを含むものであり、これらの変動が原因で損失が生じる恐れがあります。
投資をする際はお客様ご自身でご判断ください。当社は一切の責任を負いません。 - 本マーケットレポートに掲載されている情報は、2026年9⽉16⽇時点公表分です。
各指標は今後更新される予定があります。 - 本マーケットレポートに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。
