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専門家コラム

「持ち家か賃貸か」定量的な分析と定性的な分析

専門家コラムVol.49|イメージ
吉崎 誠二

COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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「持ち家か、賃貸か」。この論争は各種メディアで繰り返し取り上げられてきました。もちろん、最適解は年齢・家族構成・ライフスタイルなどによって異なります。本稿では、近年の住宅選択の傾向を踏まえ、定性・定量の両側面から住宅の所有(持ち家)の現状と展望を解説します。

目次
「令和5年度土地問題に関する国民の意識調査」から見る定性的な住宅所有意向
「持ち家率」から見る定量的な住宅所有実態
持ち家率低下の考えられる要因
まとめ

「令和5年度土地問題に関する国民の意識調査」から見る定性的な住宅所有意向

2025年3月、国土交通省は「令和5年度 土地問題に関する国民の意識調査」(調査期間:令和5年11月22日~令和6年2月5日)を公表しました。本調査は毎年実施され、身近な土地問題のほか、住宅や土地の所有・形態・立地などについて、全国の市区町村に居住する満18歳以上の3,000人を対象に集計した結果をまとめたものです。以下のグラフは、「自身が住むための住宅の所有・貸借についてどのように考えるか」という設問への回答を、過去10年分で比較したものです。

「土地・建物の双方を所有したい」は65.0%で最も多い回答でした。傾向自体は従来と変わりませんが、平成26年の79.2%から今回は65.0%へと漸減しており、持ち家志向の低下がうかがえます。また、「建物を所有していれば土地は借地でもよい(望ましい)」は3.0%で平成26年度比1.6ポイント減、「借家(賃貸住宅)で構わない(望ましい)」は17.5%で同4.4ポイント増となり、従来の持ち家志向から賃貸志向へのシフトが示唆されます。
さらに注目すべきは「分からない」の増加です。平成26年度から7.8ポイント上昇しており、比較的大きな変化といえます。近年の環境変化や住まい観の多様化を背景に、将来の住まいを決めかねる層が増えている可能性があり、この動向は引き続き追う必要があります。

住宅の所有に関する意識の変化
住宅の所有に関する意識の変化
(国土交通省「土地問題に関する国民の意識調査」より作成)

「持ち家率」から見る定量的な住宅所有実態

続いて、住宅を所有している「持ち家率」を見ていきます。総務省統計局が令和7年3月26日に公表した「令和5年 住宅・土地統計調査(確報)」は、世帯の居住状況や土地等の保有実態の現況と推移を把握するための調査で、昭和23年から5年ごとに実施され、今回で16回目です。
今回の調査では、住宅全体に占める持ち家は3,387万6千戸(33,876,000戸)、持ち家率は60.9%でした。前回(2018年)からは0.3ポイント低下していますが、1993年以降の30年間は概ね60%前後で推移しており、持ち家が多数派という状況に大きな変化は見られません。

持ち家率の推移
持ち家率の推移
(「令和5年 住宅・土地統計調査」より作成)

年齢別の持ち家率を見ると、持ち家志向の低下がうかがえます。下記のグラフは、家計の主たる担い手の年齢を6区分に分け、1988年・2018年(前回調査)・2023年(今回調査)の持ち家率を比較したものです。

家計主年齢層別持ち家率推移
家計主年齢層別持ち家率推移
(「令和5年 住宅・土地統計調査」より作成)

前回調査(2018年)との比較では、増加したのは25歳未満(+0.5ポイント)と40代(+0.1ポイント)。一方、25~29歳(-0.3ポイント)、30代(-0.3ポイント)、50代(-2.4ポイント)、60歳以上(-0.4ポイント)は低下しました。全体としては前回比で小幅な減少傾向にありますが、1988年と比べると、60歳以上を除く各年代で持ち家率は大きく低下しています。
60歳以上はおおむね80%前後で推移しており大きな変動は見られず、これ以上の上昇余地は限定的と考えられます。他方で、この年代の持ち家に関しては「利用されない相続住宅」や「空き家」などの課題への対応が今後の論点となるでしょう。

持ち家率低下の考えられる要因

持ち家率の低下要因として、第一に住宅価格の著しい上昇が挙げられます。土地価格や建築費の高騰により、持ち家取得のハードルは一段と高まりました。さらに、近年の金利動向が不透明な中で、将来の返済リスクを回避したいという心理も強まっています。
加えて、価値観・ライフスタイルの変化に伴う所有意欲の低下も影響しています。賃貸は身軽で住み替えやすいという志向が広がる一方、婚姻率の低下や単身世帯の増加が続く見通しです。一般に単身世帯は賃貸を選択する傾向が強く、単身世帯の増加は賃貸需要の拡大と結びつくと考えられます。

将来単独世帯数の推移(2020年を100とする)
将来単独世帯数の推移(2020年を100とする)
(国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(2019年推計)」より作成)

まとめ

本稿では、定性・定量の両面から住宅所有の現状を分析しました。人生100年時代において、住まいは長く寄り添う重要なパートナーであり、人々は人生設計や価値観に即して選択を重ねていきます。持ち家にこだわらない賃貸住宅は一段と存在感を高めており、今後も堅調な需要が見込まれます。

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