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専門家コラム

2025年上期の新設住宅着工戸数の動向から見る、今後の中古住宅市場の見通し

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吉崎 誠二

COLUMNIST PROFILE

吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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令和7年(2025年)6月30日、国土交通省より令和7年5月分の新設住宅着工戸数が発表されました(この統計は毎月末に前月分が公表されます)。
公表される新設住宅着工戸数は、建築基準法第15条第1項に基づく「建築物を建築しようとする旨の届出」をもとに、着工された建築物のうち住宅に関する着工状況(戸数、延べ床面積の合計)を、構造、建て方、利用関係、資金別などに分類した統計データです。
なお、ここでいう「新設」とは、新築に限らず増築や改築によって住宅戸数が新たに増加する工事も含まれています。
この新設住宅着工戸数のデータを正しく読み解くことは、不動産市場の動向を把握するうえで重要です。さらに本統計は、景気動向指数の「先行指数」にも採用されており、経済全体の先行きを見通す上でも、注目すべき指標の一つといえるでしょう。
本稿では、1月から5月までの新設住宅着工戸数を振り返りながら、今後の中古住宅市場の見通しについて解説していきます。

目次
令和7年(2025年)上期の新設住宅着工戸数
移動平均で見る新設住宅着工戸数
中古住宅市場のこれから

令和7年(2025年)上期の新設住宅着工戸数

下のグラフは、令和7年(2025年)上期における新設住宅着工戸数の「総計」と「分譲マンション」について、前年同月比の推移を示したものです。直近で発表された5月分では総計が43,237戸となり、前年同月比で34.4%減少しました。分譲マンションは4,778戸で、前年同月比では56.5%の大幅減となっています。
このグラフからは、いずれも3月に大きく増加し、4月・5月にかけて急減している傾向が見て取れます。特に総計の増減が激しかった背景には、建築基準法の改正による省エネ基準の義務化などを受けた「駆け込み需要」があったと考えられます。
省エネ基準とは、新築住宅において一定の断熱性能や冷暖房エネルギー消費量の抑制といった、省エネルギー性能を満たすことが求められる基準です。今回の法改正では、建築確認審査の期間が従来の「7日以内」から「35日以内」へ延長されることも盛り込まれており、これらの変更が2025年4月から義務化されたため、3月中に着工を済ませようとする動きが活発化したと見られます。
また、分譲マンションなどの分譲住宅は、持家などに比べて大量供給やコスト管理がより重視される傾向があるため、今回のような省エネ対応によるコスト増の影響が相対的に大きかったと推察されます。
ただし、新設住宅着工戸数には、大型マンションの建設などによる影響で、月ごとの数値が大きく変動する傾向があります。そのため、より全体的な傾向を把握するには、12か月移動平均を用いて長期的な動きもあわせて確認することが有効です。

令和7年(2025年)上期の新設住宅着工戸数 前年同月比
令和7年(2025年)上期の新設住宅着工戸数 前年同月比
(国土交通省「住宅着工統計」より作成)

移動平均で見る新設住宅着工戸数

移動平均とは、時系列データ(たとえば株価、気温、売上など、時間の経過とともに変化するデータ)の変動を滑らかにし、全体の傾向を把握しやすくするための手法です。一定期間のデータを平均し、その期間を少しずつずらしながら計算することで、短期的な変動に左右されずに、データの流れやトレンドを把握することができます。
この移動平均の手法を用いて、「分譲マンション」の新設住宅着工戸数を振り返ってみましょう。グラフを見ると、分譲マンションの着工戸数は多少の波はあるものの、全体としては下降傾向にあることが分かります。
この背景には、地価や建築コストの上昇、さらには都市部におけるマンション用地の不足といった複合的な要因があると考えられます。これらの要因は、今後も分譲マンション供給の制約として引き続き注視すべき項目です。また、人口減少も供給縮小を促す要因の一つであり、今後の動向を見極めるうえで無視できない要素となっています。

分譲マンション新設着工戸数(12ヶ月移動平均)
移動平均で見る新設住宅着工戸数
(国土交通省「住宅着工統計」より作成)

中古住宅市場のこれから

ここまで、新設住宅着工戸数の動向について述べてきました。確かに、着工戸数は減少傾向にあり、伸び悩みの兆しが見られるとも捉えられます。しかしながら、「新設住宅着工戸数の減少=不動産業界の落ち込み」とは一概に言えません。
新設住宅着工戸数が減少しているということは、相対的に中古物件への注目が高まっているとも考えられます。実際、中古マンションの成約件数や1平方メートルあたりの単価は上昇傾向にあり、引き続き高い需要が見られます。
したがって、不動産投資や住宅購入を検討している方にとっては、新設住宅着工戸数の動向を正しく読み解き、中古物件を戦略的な投資対象として再評価することが重要になってくるかもしれません。

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