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金利が上がっても不動産投資が積極的である理由

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吉崎 誠二

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吉崎 誠二

不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

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不動産投資の現状を把握するうえでの指標のひとつが、キャップレートの動向です。キャップレートとは、不動産投資家が期待する(求める)利回りを指し、一般的にこの値が低下している場合は、不動産市場が好調であると解釈されます。最新の調査では、賃貸住宅のキャップレートが最も低いとされる東京・城南地域で、4期ぶりに再び低下し、過去最低を更新しました。

ご承知のとおり、金利はじわじわと上昇していますが、それにもかかわらず不動産投資が依然として堅調である理由について解説します。

目次
キャップレートの動向と見通し
マンション投資のキャップレート
賃貸住宅ファミリータイプのキャップレート
取引利回りはもっと低い
政策金利と実質金利の動向
長期国債金利の上昇一服が、さらに投資意欲を高める

キャップレートの動向と見通し

一般財団法人日本不動産研究所が5月28日に公表した「第52回不動産投資家調査」(調査期間:2025年4月)によれば、現時点の期待利回り(キャップレート)は、本調査の対象となるすべてのアセットクラスで、調査開始(1999年)以来の最低値を記録しました。これは、マンション投資に限らず、あらゆる不動産への投資が引き続き活況を呈していることを示しています。

この傾向は、よほど大きなショックがない限り、今後もしばらく継続する可能性があります。実際、本調査に含まれる「今後1年間の不動産投資に対する考え方」に関する質問でも、「新規投資を積極的に行う」と回答した割合は94%(前回と同水準)に達しており、ほとんどの投資家が引き続き積極的な投資姿勢を示しています。金利上昇への懸念はあるものの、不動産投資に対する強い意欲が続いていることがわかります。

マンション投資のキャップレート

本調査における賃貸住宅は、ワンルームタイプとファミリータイプに分類され、いずれも1棟あたり約30戸のマンションを想定しています。
賃貸住宅のキャップレートは、全国の主要都市で引き続き史上最低水準が続いています。中でも、東京(城南地域)のキャップレートは全国で最も低く、ワンルームタイプにおいては3.7%となりました。前回調査(2024年10月実施、11月公表)を含む過去3回は3.8%でしたが、今回、4期(2年)ぶりに過去最低値を更新しました。

主要10都市におけるワンルームタイプの期待利回りを見てみると、最も低いのは東京都区部の城南エリア(渋谷や恵比寿から電車で約15分圏内の目黒区・世田谷区想定)で3.7%。
これに続くのが東京・城東エリアの3.8%、次いで横浜市と大阪市がともに4.3%(いずれも前回と同値)、名古屋市と福岡市が4.5%(同じく前回と同値)、京都市が4.6%、神戸市が4.7%、そして札幌市・仙台市・広島市がいずれも5.0%(いずれも前回と同値)となっています。

このように、主要都市におけるキャップレートはすべて5%以下となっており、不動産投資への高い需要と価格の堅調さを示しています。

賃貸住宅ファミリータイプのキャップレート

次に、ファミリータイプの物件に目を向けると、ワンルームタイプと同様に、全国の主要都市でキャップレートは引き続き史上最低水準にあります。なかでも、地方都市で期待利回りの低下が見られます。

東京の城南エリアでは3.8%(前回と同値)、城東エリアでは4.0%(前回と同値)と、引き続き非常に低い水準を維持しています。一方、地方都市では以下のように利回りがやや低下しています。
・横浜市:4.3%(前回比 −0.1ポイント)
・京都市:4.6%(前回比 −0.1ポイント)
・神戸市:4.7%(前回比 −0.1ポイント)
・広島市:5.1%(前回比 −0.1ポイント)

このように、地方都市においてもキャップレートがわずかに低下しており、不動産投資への関心の高さが全国的に広がっている様子がうかがえます。

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取引利回りはもっと低い

しかし、実際の取引における物件の利回りは、「期待利回り(=キャップレート)」よりも低くなっている傾向にあります。
本調査によると、東京・城南エリアにおけるワンルームタイプの平均的な取引利回りは3.4%で、前回調査と同水準でした。
また、東京・城東エリアでは、期待利回りが3.9%(4回連続で同じ値)、実際の取引利回りが3.6%(同じく4回連続)と、いずれも史上最低水準が続いています。
このように、キャップレート・実際の取引利回りともに非常に低い水準が続いており、先に述べたとおり、投資家の投資意欲が依然として旺盛であることを踏まえると、今後さらに利回りが下がる可能性も十分にあると考えられます。

政策金利と実質金利の動向

投資意欲が旺盛な状況が続いている背景には、「金融緩和が継続している」、あるいは「以前より緩和された状態にある」ことが一因と考えられます。

日銀は、6月16〜17日に開催された金融政策決定会合において、政策金利を現行の0.5%に据え置くことを決定しました。2024年には2回、2025年1月に1回の利上げが実施され、名目金利(借入時の表面金利)はやや上昇しています。しかし、インフレ率を考慮した「実質金利」で見ると、依然として低水準であり、マイナス圏内にある状況が続いています。
実質金利とは、名目金利から予想インフレ率(物価変動の影響)を差し引いた金利のことです。例えば、2021年当時のインフレ率は0~0.5%程度で、借入金利が1%であれば、実質金利は0.5~1%となります。一方、現在のインフレ率は2%台前半であるため、仮に借入金利が1.5%であっても、実質金利はマイナス0.5%程度となり、実質的には「より緩和された金融環境」と言えます。

政策金利とは、日銀が物価の安定を目的として操作する基準金利です。2025年1月末に0.5%へ引き上げられて以降、横ばいの状態が続いています。足元でも物価上昇率は2%台前半が続いており、今年4月頃までは「年内にさらに0.25~0.5%(1~2回程度)の利上げがある」との見方が主流でした。
しかし現在では、米国の経済動向や中東情勢の不透明感が強まっており、世界経済への影響が懸念されています。そのため、「利上げがあるとしても年内に1回=0.25%にとどまるのではないか」という慎重な見方が増えています。

長期国債金利の上昇一服が、さらに投資意欲を高める

投資意欲が旺盛な状況が続いているもう一つの理由として、長期国債金利の上昇が一服していることが挙げられます。

10年物国債の金利は、不動産投資における利回りの基準となる「リスクフリーレート」として位置づけられています。これまで、同金利は2024年3月末にかけてじわじわと上昇していましたが、4月に大きく低下。その後やや戻したものの、6月の金融政策決定会合で国債買い入れの減額ペースが調整されることが決定されたこともあり、現在(6月19日時点)では横ばいの状況が続いています。

理論的にキャップレートは、「リスクフリーレート+不動産投資に伴うリスクプレミアム」に分解されます。そのため、リスクフリーレートが上昇すれば、キャップレート(=期待利回り)も押し上げられる要因となります(いわば「下駄を履かせる」ような効果です)。

逆に言えば、リスクフリーレートが急激に上昇することは、不動産投資にとっては抑制的に働く可能性があります。しかし、現時点ではそのリスクが後退しており、結果として投資家の意欲がさらに高まっていると考えられます。

ご留意事項
不動産投資はリスク(不確実性)を含む商品であり、投資元本が保証されているものではなく、元本を上回る損失が発生する可能性がございます。
本マーケットレポート に掲載されている指標(例:利回り、賃料、不動産価格、REIT指数、金利など)は、
不動産市場や金融市場の影響を受ける変動リスクを含むものであり、これらの変動が原因で損失が生じる恐れがあります。
投資をする際はお客様ご自身でご判断ください。当社は一切の責任を負いません。
本マーケットレポートに掲載されている情報は、2025年7⽉16⽇時点公表分です。
各指標は今後更新される予定があります。
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