専門家コラム
レジデンス系JREIT銘柄で見る東京23区の賃料状況
COLUMNIST PROFILE
吉崎 誠二
不動産エコノミスト
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長
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単身者向け賃貸住宅の賃料上昇が、より鮮明になってきています。
特に東京23区では、新築・中古を問わず分譲マンション価格が非常に高騰しているため、「価格が落ち着くまで様子を見たい」と考える人が増えており、その結果、賃貸需要が旺盛となり、賃料の上昇につながっています。
首都圏の主要エリアでは、住宅賃料は2013年ごろから緩やかに上昇を続けていましたが、マンション価格の上昇幅と比べると控えめでした。実際、国土交通省が公表している区分マンション価格指数によれば、2024年後半以降は2011年比で200を超えており、価格の高騰が顕著です。
都心部の賃料動向を見ると、ファミリー向け物件では2021年後半から上昇傾向が見られ、主に単身者が住むワンルームやコンパクトタイプの物件では、やや遅れて2022年以降に賃料の上昇が明確になってきました。そして現在、単身向け物件の賃料上昇はさらに加速している状況です。
住宅賃料データの重要性
区分マンション投資において、賃料の動向は非常に重要な要素です。区分マンションを含む、賃料収入を目的とした収益不動産の価値(=価格)は、一般的に「(収入−経費)÷ 還元利回り」という式で算出されます。ここでいう収入の主な構成要素(※一時的なものではなく、継続的に得られるもの)は賃料です。賃料は、物価動向、賃金水準、住宅価格の変化などの要因により変動します。近年は、これら三つの指標すべてが上昇傾向にあり、それに伴って「貸す側=オーナー」が強気の賃料設定を行う傾向が見られます。
この傾向は今後もしばらく続くと見られており、金利や投資物件価格が上昇している状況下においても、賃貸住宅投資は引き続き活況を呈しています。
賃料の動向と将来性の判断
先に太字で示した式では、現時点の賃料や経費をもとに計算しますが、区分マンション投資は一般的に5年以上の長期保有を前提とするケースが多いため、「いま」の金額だけでなく「将来」の金額を見通す必要があります。この「将来の見通し」は、上記の式の中では還元利回りに織り込まれているものと考えるのが一般的です。ここ2年ほど、全国主要都市における賃貸住宅のキャップレート(期待利回り)は史上最低水準となっています。特に、長期国債金利が上昇傾向にあるにもかかわらず、キャップレートが横ばいで推移している背景には、「将来的にNOI(純営業収益)が上昇する可能性」が織り込まれているためと考えられます。とはいえ、賃料は実際の収入に直結するため、その見通しは非常に重要な関心事と言えるでしょう。
レジデンス系JREIT銘柄の決算資料
賃貸住宅の賃料に関する公的なデータは数が少なく、全体的な傾向を把握しにくいのが実情です。また、多くの賃貸住宅を管理しているPM(プロパティマネジメント)会社も、管理物件の賃料動向を原則として公開していません。
一方で、上場している不動産ファンドであるJ-REITのレジデンス系銘柄のIR資料は、透明性が高く、一定のボリュームがあるため参考資料として有用です。2025年5月現在、J-REITは全体で57銘柄あり、そのうち「レジデンスREIT」と呼ばれるほぼ100%を賃貸住宅で構成するポートフォリオを持つ銘柄は4つあります。上場企業であるため、各銘柄の決算資料や資産運用報告書などから運用状況を誰でも入手することができ、次のような詳細な賃料情報を確認できます。
都心の住宅賃料動向をJREIT銘柄の資料から読み解く
そのうちの1つであるコンフォリア・レジデンシャル投資法人(証券コード:3282)について見てみましょう(決算期は1月および7月)。このREITは、東急不動産グループの東急不動産リート・マネジメント株式会社が運用しており、以下のデータは2025年4月11日時点の最新情報に基づいています。
このREITの保有物件はすべて賃貸住宅で構成されており(うち10.5%は運営型賃貸住宅)、東京23区内の物件が全体の86.6%(2025年1月期)を占めています。部屋のタイプは、主にワンルームやコンパクトタイプとなっています。
2025年1月期における入れ替え時賃料の変動率は9.3%の上昇となっており、繁忙期・閑散期による差はあるものの、年単位で見ると賃料の上昇幅が大きくなっていることがわかります。
一方、更新時の賃料変動率は1.4%の上昇で、こちらも上昇傾向が強まっています。さらに、更新時の賃料改定率は35.1%と過去最高を記録しました。このように、コンフォリア・レジデンシャル投資法人が保有する賃貸住宅では、賃料の上昇傾向が明確に表れています。
26年も賃料は上昇確実か?
首都圏に限らず、全国の大都市圏においてもファミリータイプ・コンパクトタイプ・ワンルームタイプのいずれにおいても賃料の上昇が続いています。また、地方都市でも徐々に上昇基調が見られるようになってきました。
特に単身者向け物件では、入れ替えの平均年数が概ね3年程度であることから、2022年に始まった物価上昇の影響がちょうど3年を経た2026年初頭の繁忙期に強く反映される可能性があります。このため、賃料の上昇幅はさらに大きくなると予想されます。
消費者物価指数(コア指数)も引き続き前年比2%を超える伸びを示しており、今後も賃料の上昇傾向が続く可能性は高いと考えられます。
- ご留意事項
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