リクルートは2025年5月、「2024年『住まいの売却検討者&実践者』調査(首都圏)」の結果を公表しました。それによれば、住まいの売却を検討する人は20%を超え、2020年から大きく増加しています。その背景には、中古住宅価格の上昇や買い替え需要の高まりがあるものと見られます。
- 調査目的:不動産売却検討者&実施者の意識と行動の把握
- 調査対象:【スクリーニング調査】 首都圏(東京都/千葉県/埼玉県/神奈川県)在住の20〜69歳男女【本調査】 過去1年以内に土地や居住用不動産の売却を主体的に検討し、以下いずれかの行動をした方
⚪︎情報収集・仲介会社へ問い合わせ・訪問査定・媒介・代理契約 - 調査方法:インターネットによるアンケート調査
- 調査期間・回答数
⚪︎スクリーニング調査:2024年12月20日~2025年1月8日・有効回答数:20,000人
⚪︎本調査 2024年12月23日~2024年12月25日・有効回答数:1,238人 - 調査機関 株式会社マクロミル
記事サマリー
住まいの売却検討者は2020年から増加傾向に

調査結果によれば、2024年12月の居住用不動産の売却を検討している人の割合は20.2%。前年から2.2ポイント、2020年と比べると7.7ポイント上昇しています。
不動産価格の高騰が売却を後押しか

不動産価格はコロナ禍で一時的に下がりましたが、その後は宅地・戸建て・マンションともにコロナ禍前以上の上昇幅を見せています。
■中古住宅平均価格
| 首都圏 | 近畿圏 | |||
| 中古マンション | 中古戸建て | 中古マンション | 中古戸建て | |
| 2020年 | 55.17万円/㎡ | 3,110万円 | 33.96万円/㎡ | 1,867万円 |
| 2024年 (近畿圏は2024年12月) | 76.88万円/㎡ | 3,948万円 | 46.76万円/㎡ | 2,269万円 |
| 2020年/2024年 | 1.39倍 | 1.27倍 | 1.38倍 | 1.22倍 |
首都圏の中古マンションの価格は、コロナ禍以降、2025年5月まで61ヶ月(5年1ヶ月)連続で上昇しています。2020年から2024年にかけての上昇幅は1.39倍。中古戸建ては中古マンションに及びませんが、大きく上昇しています。近畿圏も同様の上昇率です。
「検討をやめた」人は4年連続で減少

住まいの売却を検討したとしても、必ずしも売れるとは限りません。しかし、同調査によれば、検討してから実際に売却した人は4年連続で上昇、逆に売却を停止した人は4年連続で減少しています。
不動産価格はコロナ禍以降、継続して上昇していますが、2022年頃には成約件数が減少しました。しかし、近年は成約件数も増加傾向にあり、首都圏、近畿圏ともに、2025年に入ってからさらに中古マンション、中古戸建てともに成約件数が大幅に増加しています。売却を検討して売り切ることができるのは、価格の高騰だけでなく、需要の高さがあってこそです。
検討動機は「買い替え」が6割以上

住まいの売却を検討した動機として最も高かったのは、60.3%の「買い替え」です。買い替えを理由に住まいを売却する人の割合は上昇傾向にあります。年代別に見ると、20代、30代がとくに買い替えを動機に住まいを売却した人が多いようです。
売れるのも高いが買うのも高い
■首都圏中古マンション(左)・中古戸建て(右)成約件数・在庫件数の推移

■近畿圏中古マンション(左)・中古戸建て(右)成約件数・在庫件数の推移

不動産価格の高騰は、住まいを売却する大きな理由のひとつとなります。しかし、市況が良い時期は、買い替え先も高額になる可能性があります。また、ここ数ヶ月、成約件数が飛躍的に増加したこともあって在庫数が減っているため、希望する条件の新居が見つかるまで時間がかかることもあります。
タイミングだけでなく売値も重視すべき

売却動機の大半が買い替えが占めているからか、住まいが売れる「価格」以上に「時期(タイミング)」を重視した人が多かったようです。
不動産価格は十数年にわたって上昇傾向にあることから、住宅ローン残債を上回る金額で今の住まいが売れる可能性も高いでしょう。しかし、新居の候補となる物件も同じく上昇している可能性が高いことを認識し、売値に妥協せず、売買の順序を検討したり資金計画を立てたりするなど、入念な下準備をすることが大切です。
・「住まいの買い替え」に関する記事はこちら
家の買い替えで後悔する事例と注意点|買い先行・売り先行についても解説
家の買換えはローン残債があっても可能?方法や注意点を解説

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売却理由は「売れるときに売るため」が最多

売却理由として最も多かった「売れるときに売るため」という回答は、前年からの増加率も最も高くなっています。
金利は上昇局面に
「売れるときに売る」という意向の裏には「いつまで価格が高いのか」「いつまで需要が続くのかわからない」といった先行き不透明さからくる不安な気持ちがうかがえます。人口の減少や空き家の増加、そして最近ではトランプ関税など、国内外の不動産市場や経済を揺るがしかねない不安材料が少なからず見られます。
とくに不動産の需要や価格に直結する住宅ローン金利は、2024年3月に日本銀行がマイナス金利政策を解除して以降、徐々に上昇傾向にあります。住まいの売却の動機として買い替えが最も多かったことからも、金利が低いうちに売却し、新居を取得しておきたいと考える人が多いものと推測されます。
・「2025年不動産市場」に関する記事はこちら
2025年不動産市場を考察! 2025年問題・金利上昇の影響は?
まとめ
不動産価格の上昇や住宅ローン金利の変化を背景に、コロナ禍以降、住まいの売却を検討する人が増加しています。とくに買い替えを動機とするケースが目立ち、価格だけでなく売却のタイミングも重視されている人が多いようです。一方で、国内の住宅需要の先行きや金利動向など不透明な要素も多いことから、売り時や資金計画には慎重な判断が求められます。

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