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抵当権抹消とは?抹消が必要になるケースや費用、手続きの方法を解説

不動産の売却を検討している方や相続が発生した方のなかには、抵当権を抹消しなければならないものの、何から手をつければいいかわからない方もいらっしゃるでしょう。

不動産の売却や相続では抵当権を抹消する必要がありますが、必要書類の準備や手続きが複雑であるため、個人で進めるのは難しいです。

そこで本記事では、抵当権を抹消しなければならないケースや費用、手続きの方法について解説します。

本記事を読んでいただければ、抵当権抹消の仕組みがわかり、手続きをスムーズに進められるでしょう。

不動産の売却や相続の手続きをしなければならない方は、ぜひ参考にしてください。

抵当権とは

抵当権とは、住宅ローンを借り入れた際に金融機関から担保として設定される権利です。

抵当権を設定することで、金融機関は住宅ローンの返済が滞った場合に、融資した金額を優先的に回収できるようになります。なぜなら、抵当権によって不動産の差し押さえや、競売が可能になるためです。

このような理由から住宅ローンを組む場合は、必ず不動産に抵当権が設定されます。差し押さえや競売と聞くと不安に感じる方も多いと思いますが、ローンの滞納が発生しない限り問題はありません。

抵当権の抹消とは

抵当権の抹消とは、不動産に設定されている抵当権を外す手続きです。

抵当権は、金融機関が不動産を差し押さえるための権利であるため、不動産の売買や譲渡、相続などで所有者が変わる際には、抵当権を抹消して引き渡す必要があります。

抵当権の抹消は、所有者自ら法務局へ申請をするか、司法書士へ委任して進める、の2つの方法があります。

なお、抵当権は原則として、住宅ローンを完済してからでなければ、抹消できないため注意しましょう。

抵当権の抹消にかかる費用

抵当権の抹消にかかる費用は、「登録免許税」と「書類の取得費用」に分けられます。

「登録免許税」は不動産1つにつき1,000円であるため、土地1筆、建物1軒の一戸建てであれば合計2,000円です。

土地が登記簿上複数の土地に分かれている場合は、土地の数だけ登録免許税がかかるため注意しましょう。

「書類の取得費用」は窓口での請求とオンライン請求で金額が異なります。登記事項証明書の取得費用はオンライン請求であれば480~500円、窓口であれば600円かかるため、オンライン請求のほうが安く利用できます。

抵当権の抹消を司法書士に委任する場合は、地域によるものの15,000~18,000円程度の手数料が発生します。

抵当権の抹消が必要なケース

抵当権の抹消が必要なケースは、以下のとおりです。

  • 不動産を売却する
  • 新しく融資を受ける
  • 住宅ローンを完済した
  • 相続が発生した

それぞれについて解説します。

不動産を売却する

不動産は、抵当権を抹消してからでなければ、所有権を移転できません。

なぜなら、抵当権は不動産を差し押さえる権利であり、抹消してから売却する必要があるためです。抵当権が設定されている状態では、債権者である金融機関によって競売にかけられてしまうおそれがあるため、このようなリスクをなくしたうえで取引する必要があります。

実際の売却では、所有権の移転と同時に抵当権抹消の手続きを行うケースが多いです。しかし住宅ローンが残っている場合は、抵当権は完済してからでなければ抹消できません。

そのため、引き渡し時に買主から受け取る売買代金を利用して、住宅ローンを完済するのが一般的です。住宅ローンを完済する自己資金がない方も、まずは、不動産会社に相談しましょう。

新しく融資を受ける

住宅を担保にしてお金を借りたい場合、ほかの抵当権が設定されていると、審査に通りにくくなるため、抵当権を抹消してから融資へ申し込みをおすすめします。

同じ不動産に2つの抵当権が設定される場合「一番抵当権」「二番抵当権」となり、一番抵当権者の方が優先的に債権を回収できるため、あとから抵当権を設定した方が不利になってしまいます。

すでにローンを完済していながらも、抵当権を抹消していない場合は、一番抵当権を抹消してから新たに融資を申し込みましょう。

住宅ローンを完済した

住宅ローンを完済した場合、いつでも抵当権を抹消できる状態になります。

しかし、抵当権は自動的に抹消される訳ではないため、自分で手続きをする必要があります。住宅ローンを完済したあとに金融機関から抵当権抹消に関する書類を受け取れるため、早めに手続きを行いましょう。

相続が発生した

ローンはすでに完済しているものの、抵当権が抹消されていない不動産を相続した場合、相続人が抵当権抹消の手続きをする必要があります。

相続人が複数人いる場合は、全員で手続きを進めなければならないため、相続が発生した直後など、相続人が集まるタイミングで手続きを行うのがおすすめです。

抵当権抹消を放置するデメリット

抵当権は、不動産取引時や新規の融資を受ける際に抹消する必要がありますが、抹消せずに放置していたとしても、普段の生活に影響はありません。

しかし、抵当権を抹消せずに放置していると、いざ不動産の取引をしようとした際に以下のデメリットがあります。

  • 書類の再取得に手間がかかる
  • 共有者で相続が発生すると権利関係が複雑になる

それぞれについて解説します。

書類の再取得に手間がかかる

抵当権抹消に必要な書類は金融機関から送られてきますが、有効期限を過ぎてしまった場合は再取得する必要があります。

また、金融機関の合併や代表者の変更があると、書類も変更しなければならないため、抵当権抹消に必要な書類が手元に届いた場合はなるべく早く手続きを進めましょう。

共有不動産の相続が発生すると権利関係が複雑になる

抵当権抹消は、共有者全員で手続きを行う必要があるため、共有者が亡くなり相続が発生すると権利関係が複雑になります。

相続放棄が発生すると、面識のない方と一緒に手続きをしなければならないこともあるため、抵当権抹消はあと回しにせずに早い段階で手続きをしましょう。

抵当権の抹消を司法書士に依頼するメリット

抵当権の抹消は自分で申請できますが、司法書士に依頼することで以下のメリットがあります。

  • 手間をかけずに確実に抵当権を抹消できる
  • 抵当権抹消以外の相談にのってもらえる

抵当権の抹消を司法書士に依頼するメリットについて、詳しく解説します。

手間をかけずに確実に抵当権を抹消できる

抵当権の抹消を司法書士に依頼することで、手間をかけずに確実に抵当権を抹消できます。

自分で抵当権抹消の手続きを行うと、手間や時間がかかるうえにミスのおそれもあります。不動産の取引は小さなミスが大きなトラブルにつながることもあるため、司法書士に任せることで安心して取引できるでしょう。

抵当権抹消以外の相談にのってもらえる

抵当権の抹消を依頼した司法書士であれば、別件で抵当権抹消以外の相談にのってもらえるケースが多いです。

具体的には相続の関係者が多く権利関係が複雑な場合や、住所氏名が変更になっている場合などです。

また、司法書士の専門分野だけでなく、税金面の質問に関しても司法書士の横のつながりを活かして、税理士を紹介してもらえることもあるでしょう。

抵当権を抹消する際の注意点

抵当権を抹消する際に知っておくべき注意点は以下のとおりです。

  • 手続きが間に合わないと違約になるケースがある
  • 司法書士への依頼は別途費用がかかる

それぞれについて解説します。

手続きが間に合わないと違約になるケースがある

不動産の取引では、契約書に抵当権を抹消した状態で、引き渡す旨が記載されているのが一般的です。

そのため、手続きが間に合わなかった場合や、ミスがあり抵当権を抹消できなかった場合は、契約が違約となるケースがあります。違約になった場合、高額の違約金を支払わなければならないため、事前に契約書の内容を確認しておきましょう。

このように、不動産取引は小さなミスが大きなトラブルにつながるおそれがあります。そのため、抵当権の抹消は信頼できる司法書士に依頼するのがおすすめです。

司法書士への依頼は別途費用がかかる

抵当権の抹消を司法書士に依頼する場合は、登録免許税以外にも司法書士報酬がかかります。

抵当権抹消を依頼する際の司法書士報酬の平均は15,000から18,000円程度です。自分で申請を行う場合数千円の費用で済みますが、プロに依頼する分費用は高くなってしまいます。

不動産売買では、司法書士に抵当権の抹消を依頼するのが一般的であるため、取引を行う前に見積もりを出してもらい、売却時の手残り資金を試算してみましょう。

抵当権抹消は期日や費用をもとに自分で行うか依頼するかを考えよう

本記事では抵当権を抹消しなければならないケースや費用、手続きの方法について解説しました。

抵当権とは、住宅ローンを借り入れた際に必ず金融機関から担保として設定される権利です。抵当権は金融機関が不動産を差し押さえるための権利であるため、不動産の売買などで所有者が変わる際には、抵当権を抹消してから引き渡す必要があります。

抵当権は住宅ローンを完済したあとはいつでも抹消できますが、抹消せずとも日常生活に影響はありません。

しかし、抹消を先延ばしにしていると書類の取得に手間がかかる、共有であった場合には、共有者が亡くなった際に権利関係が複雑になるといったデメリットがあるため、早い段階で抹消しておきましょう。

抵当権抹消は司法書士に依頼するのが一般的ですが、自分でも手続きを行えます。おすすめは司法書士に依頼することですが、抵当権を抹消しなければならない期日や費用を踏まえて判断しましょう。

この記事のポイント

抵当権を抹消しないと売却できない?

抵当権は金融機関が不動産を差し押さえるための権利であるため、抵当権を抹消してからでなければ売却できません。

詳しくは「不動産を売却する」をご確認ください。

抵当権の抹消は専門家に依頼できる?

抵当権の抹消は「司法書士」に依頼できます。プロに依頼する分費用はかかりますが、取引を安心して進めるためにも司法書士に依頼するのがおすすめです。

詳しくは「抵当権の抹消を司法書士に依頼するメリット」をご確認ください。

この記事の監修

岡﨑 渉
資格情報: 宅地建物取引士

国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はフリーランスのWebライター・Webディレクターとして活動。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとしては主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。

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